第七話:友情度中の関係
第七話
秋口紅葉さんと友達になって一週間程度たった。
「でさぁ、この前の…お、秋口さんが来てるぜ」
「え、あ…本当だ」
「最近よく来るよな。付き合ってるのか?」
「いや単なる友達だ」
友人Aは席を外してくれたので俺も秋口さんの元へと向かう。友達と話していると割り込んでくるわけじゃあないが、こうやって来る事が多々あった。迷惑と言うわけではない物の、誤解を招いているのは確かだろう。
「やっほ」
「こんにちは。暇だったので来ちゃった」
「本は読まないんだね」
「やっぱりこうして友達のところに来て話したほうが楽しいから」
それは何よりである。そして、話していた俺達を見て和也もよってきた。
「やー、この前は悪かったよ。一緒に遊びに行くとか言いながら先生に連行されちゃってさ」
「ああ、出会った日の事か…」
盛り上げ隊長(自称)がいなかった為、俺は初めて会った少女と一緒に二人でカラオケに行くことになった。そりゃもう、緊張しっぱなしだったわけだ…しかし、見た目とは裏腹に秋口さんは超アグレッシブだった。
「楽しかった。冬治君と一緒に歌うまでは行かなかったけど、カラオケにはいけたから」
「そっかーそりゃよかったよ」
うんうん頷いている二人に俺は何だか違和感を覚えた。
まぁ、ちょっとしたものだったのでどうでもいい事なのだろう。
「あのさ、今度また何処かに行こう?」
「そりゃいいけど今度はどこに行くんだ」
秋口さんと出会ってほぼ毎日何処かに行っている。そのせいか、初日こそ名字で呼ばれていたものの今では『冬治君』と下の名前で呼んでくれている。俺はまだちょっと抵抗があるから苗字のままだ…寂しそうな顔をされるので名前で呼んだ方がいいのかもしれない。
「えーっと…商店街?」
何で疑問形なんだ…そして、何故、商店街なんだ。
「何故に商店街」
「えーと、それは…」
「ふっふっふ、実は冬治に黙っておれが考えついた計画があるのさ」
「四季君!」
「いいのいいの、ちょっとした事しか喋らないから…秋口さんが家に招待しようって思ってるんだってさ」
完全にあうあう状態になった秋口さん(どうも興奮しすぎるとこうなるらしい)の方を見て首をかしげる。
「で、何で秋口さんはこんなに混乱しているんだ」
「そりゃああれじゃない?部屋が汚いとか?」
「き、汚くない汚くない…だ、駄目かな」
友達とはいえ、女の子だ。そんなに上目遣いに言われたらノーとは言えない…と言うよりもノーと言う必要はないな。
「別にいいんじゃない。友達の家に行くなんて普通だろう」
「そ、そうだよね、うん」
何だかよくわからないものの、彼女は大いに力をもらったらしい。暗くて地味で、気付いたらそこに居るような人なのに変なところはアグレッシブ。
あれ、これってやっぱり忍者じゃね。
「秋口さん、実は出会った時から思ってた事があるんだ」
「何?」
「もしかして秋口さんって…忍者?」
俺の一言で時がとまったような気がした。
「えーと、にんにん?」
「違うよ、紅葉ちゃん。こういうときは語尾に『おじゃる』ってつけるんだよ」
「それは麻呂の語尾だ…っと、まぁ、いいや。とりあえず忍者じゃないのね」
忍者の末裔と言う線は消えたか…じゃあ、秋口さんは特殊部隊にでも入っているのかもしれない。




