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第四十二話:幼馴染の妹彼女 終わり

第四十二話

 千波に先生の話をすると感動していた。

「…先生達は本当の、兄妹なんですね」

「むっ、俺たちだって本当の兄妹だ」

「張り合う兄さんも可愛いです…ぐすっ、クリスマス会でどんなふうに告白するって言ってたんですか?」

 其処までは聞いてなかった。

「…勢いで何とかするつもりなんじゃないか。正直、俺らが何かをする必要は感じられねぇよ」

 勝手にあの先生が突っ走って終わらせそうだ。

 問題は簡単だって先生も言っていたし、俺らが出来るのは背中を押す程度だろう。

「先生に会いに行きましょう」

「…わかったよ」

 既に手を引っ張られている為、つきあわないわけにはいかない。

 千波に引っ張られて職員室へとやってくる。

「やぁ、夢川君に夏八木君」

 こちらが呼ぶより先に、あいてのほうが近寄ってきた。

 屋上へ場所を変え、どうするのか聞いてみる。

「職員室に呼び出して、先生はトナカイの格好をする…それで、『おれのサンタクロースになってくれ!』と言うつもりだよ。君らには告白相手の由良の道案内をしてほしいんだ」

「…道案内はともかく、それは失敗しそうですよ」

「え、嘘…」

 真剣に考えていたのかよ。

 背中を押す程度じゃ、問題は解決してくれないのかもしれないな。

「告白がいけないのか…参考までに君達のを教えてくれないか?」

「ヴぇっ」

「いいですよ」

 千波が何やら機械を取り出す。

「何だそれ」

「ボイスレコーダーです…再生っと」

『……俺さ、千波の事が好きだ。前まで…詳しく言うと一年ぐらい前まではそうでもなかった。血なんて繋がって無いけど、俺は兄貴で、千波は妹だったよ。ちょっと怖くて、お茶目なところがあるお前が、好きだ。どこが好きかなんてわかんない、多分、全部が好きなんだと思う』

 変な声だ。でも、その言葉は間違いなく、俺が千波に対して言ったものである。改めて考えると恥ずかしいな…

「いつの間に…」

「毎日、寝る前に聞いてますよ…悶えてます」

 頬を朱に染める千波は可愛い。いちゃつきたいけど、先生の前だ。

「なるほど…さすがにこれは青臭いな。こんな恥ずかしいのは無理だよ」

「ひでぇ…」

 結局、話はまとまらずに由良さんへの告白対策は明日になった。どうしたら成功するか…いや、どうしたら素晴らしい告白を出来るか考えてきてほしいと先生は俺達にいったのだった。

 千波と一緒に校門を出ると一人の女性が立っていた。

 みた事のある人だ。

「…君達、ちょっといいかな」

「はい?」

「天導時先生って知ってるかな」

 それは俺達が屋上で話していた先生の事だった。

 ええ、知ってますよと言おうとすると千波が俺の前に出る。

「…あなた、由良さんですか」

「そうだけど…?」

 千波はまだ写真を見ていないはずだ。

 何でわかったんだと千波を見ると女の勘ですと返された。

「天導時先生の事、好きですか?」

 千波は率直に初対面の相手に尋ねていた。

「お、おい、千波っ」

「…好きよ。でもね、兄妹なの。血は、繋がって無いけど…それでも世間体があってね」

 天導時先生も言っていたけど、世間体が…問題なのか。

 珍しく俺が難しい顔をしていると、千波に腕を掴まれる。

 千波は俺の事を前に出したのだった。

「千波自慢の兄です。でも、彼氏です」

 厳密にはお隣なのだが…説明するのはやめておいた。ややこしくなる。

「…そう、羨ましいわね。わたしたちがそうなるには…どうすればいいのかしら」

「天導時先生は…駆け落ちするつもりです」

 千波は相手にそう告げた。

 相手は特に驚いていないようだ。多分、考えていたのだろう。

「今すぐ、会いに行ってあげてください…言わなくても今日は天導時先生と駆け落ちするつもりだったんでしょうけど」

「…凄いわね」

 どうやら、当たったらしい。

「女の勘です」

「すげぇな、おい」

 これも女の勘で済ませていいのだろうか。

「…わたしも覚悟を決めたわ」

「頑張ってください」

 千波は由良さんに手を振り、彼女もそれに答えていた。

「…千波、とんとん拍子で話をすすませて凄いな」

 駆け落ちなんて易々と出来るものじゃないはずだ。

 だとしても、あの二人なら多分やってのけるだろう。

「違いますよ。誰だって誰かに背中を押してもらいたいんです…」

「そういえば、そうだな。あの人だってわざわざ会いに来てたぐらいだし…俺もそうだったよ。背中を押してもらって、千波に告白した」

 ぽんと、千波の頭に手を載せる。

 あの時、千波が俺の背中に居なかったら…告白していなかったのかもしれない。

「一体誰に背中を押してもらったんですか。女の子ですか」

「そうそう、女の子だよ。とびっきり可愛い…」

「えっと、鞄の中にたしかのこぎりが…」

「待った、嘘だよ、嘘。あひるちゃんだ」

「あひる…ちゃん?」

「あー…いや、何でもない」

 この後、俺はあひるちゃんの秘密を千波に知らせてしまうのだった。頬を染めながら『今度は…千波で遊んでくださいね』なんて言われるからある意味、地獄を味わった。

 その晩、あひるちゃんで遊んでいるといきなり浴室の扉が開いた。

「兄さん、お邪魔します」

「ち、ちなっ…みっ」

 慌ててあひるちゃんを後ろに隠す。

「兄さん、あひるを隠すよりおっとせいを隠したほうがいいんじゃないですか?」

 じっくりと眺めている千波の視線に気づき、慌てて隠す。頬も染めずに研究対象でも見るような目が嫌だった。

 こういうときって嬉しはずかしな『キャー!○○さんのえっち!』があるんじゃないのか?あれ、でもそうなったら俺が悪者になる…のか?

「おっとせいとか言うな…って、何で、入ってきたんだよ」

 よりにもよってあひるちゃんと遊んでいる日に来るとはな…。

「だって、千波は兄さんの彼女ですから…悪女から兄さんを取り返しに来たんです。そのあひるをこっちによこしてください」

 あひるちゃんに嫉妬しているのか…。

「……駄目だ、千波のお願いだとしても…こればっかりはな」

「そう言うと思いました。だから、実力行使です」

 奪いに来たので両手で後ろに隠す。俺を間に挟んで、あひるちゃんに手を伸ばす。

 気付けば千波のタオルが落ちていた。

「く、くぅっ」

 千波のあれや、あれが当たって色々とピンチだっ。

「ふふ、どうですか?」

「ひ、卑怯なりっ」

 決行派手に色々とやっていたからか…この後、俺たち二人は母さんにこっぴどく叱られるのであった。

 もちろん、この時の俺達は…その事を知らなかった。


千波編も告白で終わりでしたけども、これで蛇足のほうも終わりでーす。いぇい。幼馴染、妹…他多数色々と混ぜごチャしてたらこんな感じに…元はね、夏は『スポーツ大好き熱血幼馴染』だったのです。まぁ、元設定はいいや。設定が安定してたのは春だけだし。敵として四季真由を出すつもりが、最期まで登場せず…その代わり昔から好きだったということにして一人で面倒なことをやってもらいました。ああ、三角関係になってたら今頃冬治は血祭りですとも…。千波編を読んでくれた方、ありがとうございました。

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