第三十一話:八方ふさがり
第三十一話
冬治の事がもっと知りたくなった。
紅葉はそう考え、携帯電話を握りしめる。
かける相手は、冬治ではない。
『もしもし?どうしたの』
「…和也くん、話があるの」
相手は和也だ。
幼馴染で、この前告白してきた相手だ。
まさか告白されるなんて思っていなかったので驚いた。驚いて、ちょっとだけ嬉しかったとともにふらなきゃいけないと思うと悲しくなった。
この話はもうお互い済んだ話である。
今更蒸し返す事も無いだろう…そう思って早速本題に入る。
「もっと、冬治君と仲良くなりたい。だから、協力してほしい」
『ちなみにどのくらい仲良くなりたいのさ』
「…目で何を言っているのかわかるぐらい。こう、心で繋がっているレベルまで頑張りたい」
それは無理なんじゃないかなぁという幼馴染の声なんて聞こえなかった。
『紅葉ちゃんは冬治の事が好きなんでしょ?』
「そ、それは…そうかもしれない。でも、告白なんてしたら気まずくなるかも」
色々とちょっかいを出しておきながら優柔不断だったりする。
これまで和也を入れての三人でやってきた。紅葉としては和也も入れて三人で仲良くしたいのだ。
『どうだろ…冬治は彼女なんていないから大丈夫だと思うよ。性別雌なら誰にだって食いつくと思う』
「そ、そうかな。そうは思えないけど」
『ゴリラでもいいんじゃない?』
「へっくし…風邪かな」
『冬治はちょっと頼りなくてエッチだけど…』
「そんな事無いよ!」
この前の事があって、ドキドキしながら反論する。
『いきなりどうしたの』
「う、ううん、何でもない」
頼りなくて、エッチだったならこの前の夕立ちで何かあったはずだ。
結局何もなかった。
からかうこともなく、下着姿に戸惑う事もなく、帰ってしまったのだ。一番良い方法だっただろうけど、あの時何かあったなら…もっと仲良くなっていたかもしれなかったのだ。惜しい気がする。
プロポーションには少々、自信があっただけに何一つ反応しなかったのにもショックだ。あれだけぴったりくっついていれば男子なら『イヤッホー』ぐらいは言ってもよいのではないか…ただ、冬治はそんな事をしてなかった。
『…ここはまぁ、彼の友人であるわたしに任せなさい』
「……ちょっとだけ心配だなぁ…」
『フラレタ男は大人しく、幼馴染の冬治恋人ルートか、冬治との一生友人ルートを応援します』
空回りの大きい幼馴染をちょっと不安に思う。
『ま、もとはおれが冬治と紅葉ちゃんを会わせたんだからおれがやるのは道理でしょう。二人の愛のクピドはおれしかいないね』
きっと、和也が裸一枚で弓矢を向けていたら撃ち落とす事請け合いである。
「…頼んだよ」
次の日、冬治から連絡があった。
『今日遊びに行かない?冬治から誘われたんだけど…』
「う、うん、もちろんだよ」
何か企んでいるのだろう。場所を聞いて、電話をきった。
紅葉としてはそれが吉と出るか、大凶と出るか定かではない。
「…口裏ぐらいは会わせておいた方がいいかな」
幼馴染に電話をかけてみる。
「…もしもし、和也君?」
『げほ…もしもし?』
声が別人になっていた。
「えーと、どうしたの」
『おれは今日、風邪をひいたんだ』
「うそ、昨日電話したんじゃないの?何ですぐに風邪ひいてるの?」
それから風邪をひくよう頑張ったんだ…それは何だか無駄な頑張りに思えた。
『とりあえず、おれはいけないから二人で…いってきて。仲良くなるチャンスがあるはずだから』
「何かプランは?」
『…プラン?何それおいしいの?』
どうやら吉か凶かすらわからない状況らしい。
頭の中はぷらんぷらん…こんなことを言っているのは間違いなく、風邪のせいだ。
『未来は、自分で…切り開くものだよ…ごほっ』
「お、お大事に…」
頭が痛くなってきた。
そういえば、和也が告白してきたときに冬治が風邪をひいていた。
「…もしかして」
それも嘘ではなかった。実際に、お見舞いにいったぐらいだ。
もし、和也に協力していたのなら今回の事がばれるのは明白だ。
「……和也君はもう当てにならない」
勝手に頼って見捨てられた和也は結構かわいそうである。まぁ、今の彼からしたら風邪の方で手いっぱいであるし、紅葉からしてみたら手の内がばれてそうなので次の一手を考える必要があった。
「こ、こうなったら初心に帰って『地味で大人しい読書系』で行こうかな」
結局、彼女の意見は家を出るまで、決まらなかったのだった。




