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第三話:気になるあの子は隣のクラスの子

第三話

 気になる子がいる。

 隣のクラスの子だ。

「…」

 読書しかしてない少女。髪は長いし、鬼火が飛んでそうな暗い雰囲気の子だった。

「あの子、友達いないんじゃないかな」

「え?どれ」

「どれとか言うなよ。あの子だ、あの子」

 指差すのは失礼なので顎でしゃくってやった…これも大分失礼だな。

「ああ、あれね。チャラいだけの女だろ」

 口を思い切り開けて笑っている女子生徒がいる。リンゴも入るんじゃないかなって言う大きさでギャル女だ。しかしながら、うちの学年の学力トップだ。

「だから、あれって言うな。間違ってる。そいつの後ろだ」

「うまい具合にステルスしてるなぁ…忍者?」

「現代に忍者はいないだろ」

「じゃあサイバー忍者」

 結局忍者なんだな。

 まぁ、だからと言ってどうするわけでもない。凝視している和也を引っ張って教室に戻ろうとすると虚無を掴んだ。

「あれ消えた…って…あいつ、何してんだ」

 四季は教室に入っていくと件の女子生徒と何やら話しているようだった。しかも、必死だ。告白でもしてるんだろうか…。しかし、他のクラスメートたちは本当に気付いてなさそうだな。

「…あいつのあんな必死な顔、久しぶりに見た」

 辺りを、正確にはこっちを見ながら…二言、三言交わして二人とも立ち上がる。

「お、来た…か」

 来たのはいいが、後ろに連れてきやがった。

 背後霊みたい…。

「はい、連れてきたよ」

「誰が連れて来いって言ったんだ」

「わかってる。おれに全部任せてくれ…じゃあ秋口紅葉ちゃんお願いします」

 え、何これ。

 混乱し始める脳を落ちつけと言い聞かせて、相手を改めてみる。

 赤い眼鏡に、大人しそうな風貌、髪は肩まで、結構胸はでかそうだ。

「…秋口、紅葉です。あの、友達になって欲しいって言われて…凄く、嬉しいです」

 質問したい事が、その他いろいろ友人に聞きたいタイムが欲しかった…が、此処は空気を読むのが先決だろう。別に友達になるくらいわけないってもんだ。

「俺は夢川冬治だ…えーっと、その、よろしくお願いします…でいいのか」

「いいのかって、うん、いいんじゃない。さ、これでめでたく友達が完成だ。秋口さん、敬語は要らないよ?」

「は…う、うん」

「じゃあ放課後は親睦を深めるために校門前へ集合ね」

「え、ああ…」

「うん」

 良くわからないまま別れ、自分のクラスへ。さて、早速友人に詰め寄ろうじゃないか。

「これは一体どういう事だ」

「どういう事って…こっちが聞きたい。そんな真剣そうな顔でみるなよ。男の面を拝みたいとは思わない」

「同感だ…秋口さんの説明がまだだって言っているんだ」

「おっと、これはいい傾向ですね。ぐへへへ」

 ぺらぺらと何故か生徒手帳をめくり、読み始める。

「秋口紅葉。こうよう、ね。もみじって呼ばれる事が多いけどあの子はそれを嫌っているから気をつけてね。刺されるかも」

「そうか、気をつけよう…じゃなくて、だ。ちゃうねん。そんな事は後で自分で知るわい」

「うん、グッジョブだ」

「何であんな事をしたんだと聞いたんだ」

 しばらく考えて和也は手を叩いた。

「オーケーオーケー。あんたは秋口さんが気になった。気になったら行動したほうがいい。別にやましい事をしたわけじゃあない。友達を一人作っただけさ。おれはただ手伝っただけ」

「…まぁ、そう言われればそうだがな」

 それ以上追及できる事も無く、俺は黙り込んでしまったのだった。


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