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第二話:気になるあの子は隣の家の子

第二話

 気になる子がいる。

 隣の家の子だ。

「おかえり、兄さん」

「おう、ただ今。千波はもう帰ってたのか」

「はい。帰宅部ですから」

 名前を夏八木千波と言う。

「俺も帰宅部だよ」

「千波のクラスのほうが終わるの早かったんですよ」

「そっか。一緒に帰れればよかったな」

「一緒に帰るなんて恥ずかしいじゃないですか」

 ちょっとショックだ。いや、かなーり、ショックだ。

 俺と千波は兄と妹。まさしくその関係だと言っていい。でも最近は千波の事が可愛いなと思い始めているんだから…兄としての気持ちと男としての気持ちが心の中で闘っていないとか、居ないとか。

「ま、千波が嫌ならしょうがないな。お前に嫌われるのは嫌だから。じゃな」

「お、お茶でも飲んで行きません?」

「ああ、そうだな」

 いや、いいよなんて言ったらぶーたれて箒でも投げてきそうだ。

 夏八木家にはたびたびお邪魔になっているので珍しいってもんがもう無い。どうかすると晩御飯まで頂いちゃうからな。千波もたまに食事しにくるし。

「お茶です」

「ありがとう…一緒に帰りたくないから嫌われたかと思ったぜ」

「そうですね…今は他の人がいませんから」

 お茶が熱くて良く聞こえん。

「ごめん、聞こえなかった」

「お茶が熱いから気をつけてって言ったんです」

「そうか、ぜひ聞いておくべきだったな」

「本当、ちゃんと聞いておいてくださいよ…はぁ」

 何でため息なんてついちゃうんだろうか。まぁ、好意で教えてあげたのにそれを見事にやるんだからため息も出るかな。

「学園には、慣れたか?」

「もう、またその質問ですか」

 困ったように笑われて頷く。

「慣れましたよ」

「いじめられたりしてないか」

「大丈夫です」

「変な虫が…いや、やめとこ。心配しだしたらきりがない」

 変な虫がつかないかどうかが心配だ。帰りだって可愛いんだからストーカーとかの被害に遭わないか心配なんだ。

「そんなに心配なら捕まえてくれてればいいのに…」

「え」

「変な虫はぜーんぶ、春成桜先輩とやらに飛んで行きましたよ」

「ははぁ、そいつはすげぇな」

 もしかして春成さんは本当に魔法が使えるんだろうか。

「春成先輩って『青電気』って呼ばれてますよ」

「へー。何で」

「寄ってきた虫を殺すんです」

「それ絶対嫉妬から誰かがつけたあだ名だな。そういう噂するのほどほどにしておいた方がいいぞ」

「はーい」

 千波の事が少し気にはなる。ただまぁ、何かがあるってわけでもない。

 その日はそのまま晩御飯まで頂いてしまった。

「夏八木千波ねぇ…子供の頃から後ろをついてきて今もついてきてくれるって思ったけど、そうはいかないよなぁ…」


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