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第一話:気になるあの子は隣の席

第一話

 気になる子がいる。

 隣の席の子だ。

「おはよう、夢川君」

「おはよう、春成さん」

 まだ気になる程度。他のクラスの男子はラブレターをしこたま書いて列をなし、入学式の次の日に振られまくったそうだ。ばっさばっさと斬り倒していく春成桜さんは修羅か何かに見えたとは俺の友人の話。

「あ、今日私と夢川君日直だよ!」

「え、ああ、そうねー」

 ただ単純に、凄いと思う。ごめん、無理…をただ作業的に繰り返した春成さんも凄いけれど、告白した奴が凄いと思う。俺はまだアクションを起こす気はない。

 何せ、この学園に入ったが最後…教師は最後まで固定、クラスメートも固定なのだ。挙句、席順まで固定…とは言わない。こればっかりはクラスの担任のさじ加減だ。俺のクラスは『絶対しない』と毎年言う予定だそうだ…つまり、席替えは無し。

 もしふられたら残りの学園生活ずーっと、春成さんと顔を合わせ無くてはいけない。いや、成功したって顔を合わせなくてはいけないけれどもモチベーションが全然違うだろう。春成さんは別にふった相手に特別な事をするわけでもない。ただ、それが逆に男子には答えるようで泣きながら走り去った男子生徒が数名いる。

「あれ?どうしたの?」

「あ、ううん。何でもない。ちょっと寝るのが遅くなって。昨日テレビで犬の特集があっててそれ見てたらつい遅くなったんだよ」

「それ私もみたー。可愛かったよね。あ、そういえばさ、晩冬先輩凄いよね。また何かしたって言ってたよ」

「へぇー。そんなにすごい人なんだなー」

 まぁ、この程度の話はできるわけで…現状維持でも別にいいと思っている。流れぬ川はくさるとか言うけどさ、激流に身をゆだねるほど俺も冒険家じゃないのよ。

「よぉ兄弟、今日も春成さんを目で追ってたな」

「よしてくれよ。男の兄弟なんて要らないぜ」

 女の兄妹もいない…けどな。

「つれないねぇ…で、一体いつになったら春成さんに告白するんだ?」

「どうだっていいだろ。俺がいつ告るよなんて言ったんだ」

「でも九割は告白したんだぜい?お前さんもすれば春成さんは同学年に興味が無いと言う事が立証される」

 いつの間にか最後の一人になっていたのか。

「嘘だろ。C組の二次元万歳君はどうした。あいつは生身の女に一切の興味はないって言って教師も納得してた筋金入りだろ。紐パン盗難の夏の英雄はどうしたんだよ」

「あいつがみてたアニメの主役の中の人と声が似てたらしい。それで、告白したそうだ」

「基準がわからんな」

「結果は『ごめん』だ。彼は泣き叫びながら『女、女なんてーっ』といいながら池田に飛び込んだ。池田は『うほっ』とか言いながら抱きしめてたよ」

「そうだ、池田はどうした。そっちには興味が無いって公言していたぞ」

 これならどうだ。体育教師が恐ろしい目で池田の事を見ている事を…そして、池田が熱視線で教師を見ている事は周知の事実だ。

「それが生まれて初めて『ときめいた』んだそうだ」

「…マジかよ。行っちゃ悪いが春成さんは別にぼいんとかフェティズムの極みってわけでもないだろう。どこにでもいる…優等生とかそんな感じなのに…」

「魔力でもあるんじゃね」

「それはねぇよ」

 魔法を使うのは俺だってあと十年以上必要だ。

「ともかく、後はお前だけだ。近日頼むぞ」

「知るか」

 春成桜。クラスの学級委員長で優等生。裏表の無い性格で品行方正、間違った事には厳しいってわけでもない。うーむ、侮れん人だ。


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