さんざん忠告したのにまるで聞く耳持たなかったじゃん!!今更ジャンピング土下座してももう遅い、この国はぶっ潰れます☆今から二秒後に消滅するからね、国民の皆さん、恨むなら無能な王様一択だよー!
第一章:忠告はしたよね?
あたしの名前はリヴィア。
この星に生まれた“聖女”であり、“魔力の器”でもある。
星の魔力は、自然に分配されるべきもの。
でも、なぜか今代の魔力は、全部あたしに集まってきてる。
原因は、王国の魔力政策の失敗。
「ねぇ!魔力の分配しないと、マジ詰むんだってば!」
「前例がありません」
「会議で否決されました」
頭の固いクソジジイどもが、あたしの忠告を無視した。
その結果——
・あたしの体内に魔力が飽和
・星の魔力循環が停止
・地脈が狂い、空が割れ始める
「このままじゃ、この国だけじゃなく…星が死ぬよ?」
でも、誰も聞いてくれなかった。
王様は「聖女がいれば大丈夫」とか言って、宴会してた。
——そして、ついに限界が来た。
あたしの体が、魔力の暴走を始めたのだ。
「カウントダウン、はーじまーるよー!」
第二章:ジャンピング土下座は遅すぎる
魔力の暴走は、まず空から始まった。
空が割れ、黒い裂け目が広がり、星の核が悲鳴を上げる。
紫の稲妻が走り、地面は震え、魔物が異常発生しはじめた。
空気は重く、鳥たちは空を捨てて逃げ出していく。
王国は混乱に陥った。
民衆は逃げ惑い、貴族は責任を押し付け合う。
王様に呼び出されたあたしは、王宮の玉座の間で重臣たちに囲まれた。
「へぇ、あたしの話、やっと聞く気になったんだ?」
「……すまなかった。だが、今ならまだ間に合うだろう?君の力で、魔力を抑えてくれ!」
あたしは、にっこり笑った。
「間に合わないよ? だって、もう“始まってる”んだもん」
「聖女リヴィアよ! そんな冷たいことを言わずに…どうか、魔力を抑えてくれ!」
魔力の奔流が、あたしの体を中心に渦を巻く。
星の魔力があたし一人に集まりすぎて、“星の血流”が止まりかけているのだ。
このままでは…、星そのものが“魔力の心停止”を起こす。
「さんざん忠告したのに、まるで聞く耳持たなかったじゃん? 今さら何なのwww」
王様が、地面に頭をこすりつけた。
それを見た部下たちが、一斉に飛び上がって同じポーズをし始めた。
「頼む!国を…この星を救ってくれ!」
「「「「「「お願いします!!!」」」」」」
うわあ、リアルジャンピング土下座連合軍だ!
思わず笑ってしまったあたしは…冷たい目でそれを見下ろしながら、つぶやいた。
「ねぇ、王様。あたし、何度も言ったよね? 魔力の分配をしないと、星が壊れるって。でも、あなたたちは“前例がない”って言って、全部無視した。会議で否決だったっけ? ははっ、笑わせないでよ」
王は顔を上げた。
「我が国の民は、何も知らぬのだ! 罪は我らにある! だから、民だけでも——」
「無理だよ」
あたしは、静かに言った。
「今更ジャンピング土下座しても、もう遅い」
魔力の暴走は、あたしの意思では止められない。
もう、限界。
「この星の命が壊滅するまでのカウントダウンはね、もう止まらないの。今から二秒後に、まずこの国が消えるよ。いや、正確には“魔力の中心点”であるこの王都が、ね」
「そんな!!!」
王様が絶叫した。
ゴージャスな衣装を着こんでる土下座連合軍も、その場で立ち上がって騒ぎ始めて…すごいことになってる。
「この国はぶっ潰れます☆今から二秒後に消滅するからね~!! 国民の皆さん、恨むなら無能な王様一択だよー!」
あたしがヤケクソになって声をはりあげたその瞬間——光が弾けた。
王都は、音もなく、魔力の渦に飲み込まれていった。
第三章:滅びのあとに残るもの
王都が消えた。
魔力の渦がすべてを飲み込み、建物も人も、空気さえも、跡形もなく消えた。
あたしの体に集まりすぎた魔力は、ついに限界を超え、星の中心を一度“リセット”したのだ。
——静寂。
風も、音も、命もない。
ただ、あたしだけが、そこに立っていた。
「……やっちゃった」
あたしは、空を見上げる。
星の魔力は、再び流れ始めていた。
暴走は止まり、地脈は再構築され、空の裂け目もゆっくりと閉じていく。
でも、王都は戻らない。
あたしが“選んだ”のだ。
この星を救うために、王都を犠牲にすることを。
「……あたし、これでも、聖女なんだよね」
皮肉だ。
人々を救うために生まれた聖女が、最も多くの命を奪った。
そのとき、魔力の流れの中から、一人の少年が現れた。
彼は、王都の外れに住んでいた孤児——レオン。
あたしが唯一、魔力の暴走から守った存在。
あたしの話を聞いてくれた、たったひとりの人。
「リヴィア……生きてたんだね」
あたしはうなずいた。
「うん。あたしと、あなただけが、ね」
一人ぼっちで残されたくなくて、レオンを巻き込んでしまった。
申し訳なさで、涙が出てくる。
「星も生きてるよ? 空も、大地も、魔力も…、君が守ったから」
守ったなんて…、そう言ってもらえるなんて、思ってなかった。
「……そうかな」
ただ怒って、ただ壊して、ただ……悲しかっただけだよ?
「君は、誰よりも、星を愛した聖女だよ」
あたしは、そっと抱きしめてくれたレオンにしがみついて、ワンワン、泣いた。
第四章:聖女の選択、星の再生
王都が消えたあと、星は静かだった。
魔力の流れは正常に戻り、地脈は安定し、空は澄み渡っていた。
でも、そこに人の営みはなかった。
「……これが、あたしの選択の結果なんだね」
あたし——聖女リヴィアは、星の中心に立っていた。
魔力の器として生まれ、忠告を無視され、破壊者として歴史に刻まれる存在。
隣に立つのは、レオン。
あたしの魔力で守られた、唯一の命。
「リヴィア。君は、間違ってないよ」
「でも、たくさんの人が…死んだもの。あたしが…こ」
「君が殺したんじゃない! 君の声を無視した人間が、自分で滅びを選んだんだ」
あたしは、星の地面に手を当てた。
魔力が、優しく流れている。
この星は、まだ…生きているのだ。
「……もう一度、始めてようかな」
レオンが目を見開いた。
「始めるって……?」
「この星に、もう一度“人の営み”を、ね」
あたしは、魔力を使って、星の記憶を呼び起こすことを決めた。
失われた土地、風景、命の痕跡。
それらを、少しずつ、少しずつ再構築していく。
今度は、あたしが“中心”とならないように。
魔力が、星全体に均等に分配されるように。
誰もが公平に魔力を使えるように。
丁寧に、少しずつ…、イチから設計し直した。
「もう、誰か一人に負担を押し付けるような世界にはしないからね!」
いつの間にか血眼になって作業に没頭していたあたしを見て、レオンが微笑む。
「それが、聖女の祈り?」
あたしはうなずいた。
「うん。あたしは、“破壊者”じゃない。この星の“再生者”になるのよ!!」
——星が、再び命をのせてまわり始めた。
少しずつ戻ってきた人々は、村を作り、畑を耕し、空を見上げるようになった。
漂う魔力を拾っては、自由に使って生活の中に活かすようになった。
魔力は使うものであり、貯めるものではない。
魔力は分け与えるものではなく、ありふれたもの。
常識が変わり、人々の認識も変化していった。
誰も、王都のことは語らない。
しかし、星を救った“聖女”のことは、静かに語り継がれる。
「さんざん忠告したのに、聞く耳持たなかったじゃん」
その言葉は、星の教訓として、未来の子供たちに伝えられている。
あたしは今日も、星の風を感じながら、祈る。
「この星が、もう二度と…、誰か一人にすべてを背負わせるような事がありませんように」
——これは、聖女リヴィアが、破壊と再生を経て、星に祈りを捧げた物語。
そして、誰もが“聞く耳”を持つようになった世界の、始まりの記録。




