Stage10-6 母との約束
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「お母さん!」
「なぁに?大翔。」
「僕、大きくなったらお母さんを助けてあげるからね!」
「ふふっありがとう。期待してるわね。」
「うんっ!」
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随分と懐かしい夢を見た。
母と交わした口約束。今の俺にはまだ叶えられない。
元々ゲームなんて興味なかった。有海の奴が勧めてくるし、イベントでは賞金出るって言うから始めただけ。
【なんくる・ないさー】という名前だって、正直言えばテキトーに付けた。その時にやっていた沖縄特集の番組に目が止まったからだ。
ゲームなんて興味無いし、少しやり込めば簡単だ。何をそんなに熱くなる理由がある。これで負けるわけないだろ。
そう思っていた…
俺は何度も負けた。
賞金は夢のまた夢…いつからかこの夢を掴む事が夢になっていた。
目を覚ますとそこは砂漠だった。こんな薄着でも砂漠にいられるのは、言わずもがなゲームだからだ。
そんなゲームでも、熱血キャラとして生きる事が今となっては生きがいになっている。
なんの手掛かりも無い為、一先ずテキトーに歩いてみる事にした。以前の俺なら慎重になっていただろうが、このゲームに入り浸るようになってからは、そんな考えは無くなっていった。
歩いていると少し先にオアシスが見え、その横にロッジがある。俺はペースを変えずにそこへ迎った。
ノックをすると中からは野太い声が聞こえた。
木の軋む音が鳴り、扉はゆっくりと開かれた。
「どちら様ですか?」
中からはスキンヘッドの顎髭を生やした中年の男が出てきた。引き締まった大きな身体にピンクのTシャツを着ている。Tシャツは張り裂けそうになっており、上に重ねて着ているエプロンのパンダも顔を横に伸ばしている。
「あの…ここに住んでいるんですか?」
「…はい?」
訪ねてはみたものの、何を聞けば良いか分からなかった。
「…入れ。武器は外に置け。」
俺は男の言う事に従った。
「俺の名はマキシム。ここではよく賊が現れてな。賊を追い払って、平穏な生活を送るのが俺の日常だ。」
「なんくるです。その賊とは何者なんですか?」
マキシムは、この島と賊について教えてくれた。この地帯は五つに分類されており、それぞれ季節も環境も全く違うらしい。島の中心には山があり、山頂付近にはある人物が住んでいるらしい。その人物の名や顔は誰も知らない。その人物がこの島の賊のボスでは無いかと言われている。とは主に【海賊】【盗賊】【山賊】に分類されているらしい。
「賊を名乗るような奴は、ろくな奴じゃない。それをよく覚えておくんだな。」
マキシムは語りながら、熱いコーヒーを啜る。外は猛暑だが、このロッジの中は涼しくなっている。しかし、俺の身体は熱いコーヒーなど欲していなかった。
「…わかりました。しかし、その山に住む者は何者なんでしょうね。マキシムさんも顔は見た事は無いんですよね?」
「さぁな。見た事もないし、山にさえ近付いた事もない。」
俺はその山に住む者こそ、ライトをこの世界に閉じ込めた犯人なのではないかと睨んだ。
「マキシムさん、暫くここでお世話になっても宜しいですか?」
俺の推理が正しいかは分からない。だが、今はこの選択が最善と判断した。しかし、マキシムさんは気付いていない。
自身も【賊】であることに。
次回もお楽しみに!




