Stage10-3 役割
「ホーリーシールドッ!」
俺とさーたーは聖なる壁に包まれた。
特大ムカデ、通称ペルビアンジャイアントオオムカデは、ホーリーシールドにぶつかりその場で動かなくなった。
「…さーたー、助かった。」
「お安い御用ですよ!」
「でも、ホーリーシールドを使えるなんて流石。」
「…さっき船内で色々ありましたからね。レベル1スタートなので、潜伏してるだけでレベルが上がりました!」
さーたー 魔法使い レベル15
「この短時間で15も上げたのか!」
さーたーは、得意気な顔を見せながらウインクをしてきた。
やだ何それ可愛い。
さーたーの現実の姿も知っているが、派手な服装の割に大人しそうな見た目だ。それを知っているからこそ、こんな陽キャみたいな対応を取られると腰が低くなってしまう。
「…なんで寝たまま体育座りしてるんです?」
「…男には、時に大事な物を守りたい時があるんです。」
「…なんかよく分かりませんけど、とりあえずこのムカデは消しましょう。」
さーたーの杖からライトグリーンに輝く光と星が溢れ出す。
「…この世の全ての自然達よ。我に力を!ネイチャースタームッ!」
呪文と共に現れたのは、トルネードであった。しかし、そのトルネードの風に乗って葉と星が回転している状態だ。俺達も飛ばされてしまいそうになるほどの威力で、キラキラと輝く竜巻は次第にペルビアンジャイアントオオムカデに直撃した。
「ちょっと嘘でしょ!何なのその魔法!」
ペルビアンジャイアントオオムカデは、勢い良く飛ばされた。少し離れたところまで飛び、次第に海へと落下した。頑丈な為、辛うじて原型は留めているが、全体の重さによって海底へと沈んでいった。
「!?そんな…ペルビアンジャイアントオオムカデがやられるなんて。」
「まくとぅ…あなたはムカデに頼る傾向がありますね。」
俺は忘れていた。かつて俺が一人で旅をしていた時、この二人はなんくると共にかつてチームを組んでいたのだ。チーム名は確か…HY:BiSks。空白の五年間を共にしていただけあって、相手の手の内をしっかり把握している。しかし、現状に至っては断然まくとぅの方が有利だ。
まくとぅ 昆虫魔法使い レベル99
さーたー 魔法使い レベル15
そう、レベル差というやつだ。
前作の痛手がこういう場面で出て来てしまうのだ。
だが、希望はある。
さーたーは賢くて可愛い。そして器用で可愛い。更には可愛くて可愛いのだ。
「…さっきからブツブツ何言ってるんですか…恥ずかしいのでやめてください。」
「おっと…危ない危ない。」
「いやいや、アウト。全然アウト。」
「無駄話ができる程余裕があるのね、さーたー。」
俺とさーたーが話している間にまくとぅは、炎を纏った蝶を複数生み出していた。
「余裕なんかないです…でも自信はありますよ!」
負けじとさーたーは水の球体を複数生成した。
炎の昆虫と水の魔法、果たしてどちらが勝つのか。俺とメグミは、この闘いをただ眺めている事しか出来なかった。
次回もお楽しみに!




