Stage10【新世界編】10-1 復讐
気が付くと目の前には、晴れ渡る空が広がっていた。仰向けになっている俺の身体は何かに揺られている感覚だった。身を起こし周囲を見渡すとそこは大きな船の上だった。所謂、海賊船のようなその船は、ただひたすら前進していた。
「……んん…。」
「うわっ!?」
この時、俺の横に誰か倒れている事に気が付いた。よく見ると懐かしいその顔容はさーたーだった。
「…あれ?ここは?」
「もうゲームの世界だよ。俺も今目が覚めた。」
「…アルミさん。御無沙汰しています。」
前の世界でさーたーとは出会った。そこまでの絡みは無かったが、相当な魔法の実力者ということは知っている。
「あんまり話した事無かったけど、一先ず無事で良かったよ。」
俺は右手を差し出す。するとさーたーは微笑みながら握り返してくれた。
「やめてくださいよ、初めましてじゃないんですから。それよりアルミさんこそ!あのゲームクリアしたなんて凄いじゃないですか!」
「と言っても完結してないんだよ。残ったままの伏線だってあるし。第一、死んだと思った人達が生きてるとか意味わからん。最初と言っていること違うんだよ。」
さーたーは、少し声を上げて笑った。
「アルミさんって真面目なんですね(笑)結構真に受けやすいタイプですか?死んだら最後とは聞いてましたけど、まさか現実世界の命が取られるわけないじゃないですか。」
よく考えてみれば確かにそうだ。
死ぬというのなら、どのように死ぬのか教えて欲しいものだ。
「まあでも、ある意味死にましたけどね…。現にほら、見た目は同じでも能力ゼロ。これじゃあただの人間ですよ。」
「君ならすぐ上級魔法職に就けるだろ?」
「こうなったら前より強くなるしかないですね!」
健気な美少女であった。
船に揺られて二時間程経過したが、特にイベントが発生することは無かった。
「そもそも何で船なんだ?」
「何ででしょうね?探索してみます?」
俺はさーたーと共に船内を探索する事にした。
船自体は木製で出来ており、傷んでいる所も目立つが船内は思ったより状態が良かった。
一つ一つの船室には、ベッドや宝箱が積んである。一室には、大量の食料が敷き詰められていた。他も隅々まで探索するが、これと言って目立った物は見つからなかった。
「最後はここか。」
見ていない最後の部屋は、船長室であった。
ゲームでいえばお決まりかもしれないが、こういう時は大体机の引き出しに何かある。それも一番上だ。
俺は勢いよく引き出しを開けた。
「カラカラカラカラカラカラカラッ!!!!!」
勢い良く出てきたのは、ボールペン一本だった。
俺とさーたーは、笑いに堪える事で必死だった。
「…ちょっ…ふざけないでください…ブフッ。」
「…ふざけて…ブフッ……ない…ブフッ。」
五分後…
「…気を取り直して、二段目いきます。」
俺は再び勢いよく引き出しを開けた。
出てきたのは赤い箱だった。
正確に言えば、見るからに罠であろう怪しい箱だ。
「…絶対罠。」
「…でも唯一の手掛かりですよ。」
そう言われては後には引けなかった。俺は箱の包装紙を破り捨て、中を開けた。中からは赤いスイッチボタンが見えた。
俺は暫く沈黙しながらスイッチを眺め続けた。
「……えいっ。」
俺は我慢できず、スイッチボタンを押した。
すると、船外から大きな音が鳴り響いた。
急いで看板に戻るとそこには特殊な立ち方をした男が立っており、空中大きく二つのミッションが浮かび上がっていた。
一、復讐の鬼 バレットを倒せ!
二、船内の宝を守りきれ!
あのスイッチボタンは、イベント発生ボタンだったようだ。このまま何もしなければ、何も無い風景を見続けることになっていたかもしれない。
「…よぉ、アルミ。久しぶりだな。お前のせいで…身体に麻痺が残っちまったよ。顔半分の神経もねぇ。どう落とし前つけてくれようか。」
「…お前が仕掛けてきたんだろ。負けたくせにグダグダうるせぇな。」
俺の発言に怒りを覚えたのか、険しい表情でバレットが襲い掛かって来た。短剣で責めてきたが、俺は手元にある果物ナイフで受け止めた。
「…俺の事舐めてんだろ?殺してやるよォッ!」
バレットは、俺に対しての復讐心だけで再びこの世界へとやってきたようだ。彼の求める答えに最後まで向き合う事こそ、せめてもの償いだと感じた。俺はバレットの短剣を弾き、距離を取った。そして、戦闘態勢となり、バレットを迎え打った。
「死ねやあぁァァァァッ!アルミィィィィィッ!」
新章開幕でーす!
次回もお楽しみに!




