Stage9-5 新たな世界へ
俺を含めた呼ばれた八名は状況に付いていけていなかった。
寺門のマイクパフォーマンスにより、仮面をつけた観客も大歓声だ。
「さぁさぁ、お待たせ致しました!【今世は幸せでありますように!】一大イベント!お集まり頂いた優秀なプレイヤー達に盛大なる拍手をお願い致します!」
八名にスポットライトがあたり、拍手喝采状態であった。
「な、何がどうなってるんだ!?」
「俺にも分からないっす…」
困惑していると、寺門は一人ずつプレイヤーの紹介を始めた。
「それでは、皆様に最高のプレイヤー達の紹介を致します!まず、一番左のプレイヤーだぁ!」
見知らぬ女性にスポットライトが集中する。
「自由自在に魔法を操り、上級者以上の極技をも扱う。惜しくも死亡してしまったが、腕は確かだ!キャラクター名、さーたー!」
さーたーという名前に俺は思わず振り向いてしまった。その女性はショートカットで赤と白のチェック柄のカーディガンを羽織っている。眼鏡越しでも美少女という事は間違いない。さーたーと比較すると地味ではあるが、ベレー帽にショートパンツがまた違った可愛さを象徴していた。
「続いて二番手!自らの命を捨ててでも、大切な仲間を助け続けた!捜索部隊サンライト隊長!サン!」
またしても名前に振り返ってしまった。サンを扱うその男は、ロン毛の茶髪に剃りきれていない髭の痕が残っている。全身黒の服装をしており、正直ほぼサンと言って良い。
「続いて三番目の可愛らしいお嬢さん!幼きながらも親の遺伝子を受け継ぐ最強の魔法少女。力はなくとも戦えます!メグミ・キール・エッジ!」
青髪の小柄な女の子、小学生だろうか。こんなイベントに呼ばれるくらいだから相当の腕なのだろう…メグミって言った!?あのメグミ!?マジか!?
「続く四番目の彼は問題児!ながらも能力はピカイチ。即離脱した為物語の結末は知らない、でも強い!プレイヤー名、ハンモク!」
斑目 仁さん。俺が通うゲームショップの店長だ。仁さんもこのゲームをやっていた事は知っていたが、そこまでの実力を持っているとは思わなかった。早々に辞めたから俺は出会った事も無いわけか。
「さてさて、お次は高校生部門!五番手、天使の力で圧倒し続けた!死んでも何度も蘇る!プレイヤー名、ユウヤ!」
「お前がユウヤかよっ!?」
「…え、まあそうっすけど。」
なんとユウヤを使っていたのはユウキだった。
「六番手の彼はちょっと奥手。仲間と協力して全クリアを成し遂げた!プレイヤー名、アルミ!」
俺の紹介が終わると全員が驚いた表情でこちらを見つめた。
「せ、先輩…あれ全クリしたの?」
「え?まあ。」
「…すげぇわお前。」
仁さんの目は尊敬ではなくドン引きであった。逆に誰もクリアせずに離脱していた事の方が驚きであった。
「七番手、八番手はなんと現実でもゲームの中でも兄妹!二人で力を合わせてクリア手前まで行った実力者!なんくるアンドまくとぅ!」
大翔がなんくるで、彩香がまくとぅ。そんな事実を聞かされ、俺は少し恥ずかしくなってしまった。この恥ずかしさは決して彼等にではない。数々の厨二病発言にだ。
周囲を見渡すと全員が気まずそうにしていた。
「さぁ、皆さん。聞きたい事が多々あるはずです。何故死んだら終わりと言われていたゲームに死んだはずの仲間が生きているのか。そして、何故他のプレイヤーの物語に仲間が登場しているのか。他のキャラクターはNPCだったのか。ですよね?」
こちらから質問する事なく、寺門は俺達が気になっている事を話に持ち出した。
「まず一つ目、【今あり】はゲームの世界!ゲームは所詮ゲームゥッ!そして新たなネトゲとして他人の物語と同時進行するシステムを搭載したぁ!二つッ!惜しくも死んでしまえばデータが全て飛ぶぅ!三つ!他のキャラは全てNPC!」
奇妙な動きで改札する寺門に俺達は開いた口が塞がらなかった。
「しかし、問題が発生しました。四つ目、本当にゲーム世界に閉じ込められた人間がいます。五つ目、皆さんには彼女を救出する旅に出て頂きたいのです。六、彼女を新作ゲームの世界に連れ込んだ犯人がいます。七、その外道を捕まえるのです。」
プレイヤー達は寺門の言っている事に理解出来なかった。正確には理解し得ない内容だった。だが、現に意識不明の状態の女性を俺は知っている。
「さぁ、新しい扉を潜るのです!そして、彼女を救うのです!彼女の名は、ライト。あなた達に行って頂く新たな世界の名は!」
【今世は幸せでありますように!2】
次回もお楽しみに!




