Stage8-25 残された者達
天の花園、内国と外国の戦争は突如終わりを迎えようとしていた。
多くの怪我人や死者を出し、両国は大差の無い闘いを続けた。両国の隊長は同時に白旗を上げ、今回も引き分けという形で幕を閉じようとしていた。
失った兵士の数はどうするのか。彼等は普通の人間とは違い、一度の妊娠で何百人と子供を産めるらしい。この国の成長速度は下界より早い。成長を待ち、二年もすれば立派な兵士になる。
今までそのようにやってきたと言うのだ。
戦争のために産まれ、戦争のために死ぬ。
そんな残酷な国の戦争を、俺達は終わらせる事が出来なかった。今回のミッションは失敗に終わった。
同時刻、下界への扉が空に開かれた。その時間移動空間から出られなければ、次に出られるのはいつになるか分からない。
生き残った者達は、俺の念力となんくるの跳躍力で扉に入ろうと考えていた。その為、再びなんくるの待機する岩場へと集結したのだが…。
俺はこの光景を想像出来ただろうか。
いや、俺だけじゃない。
誰も想像出来なかったはずだ。
「…なんくる?」
仰向け状態で背中を沿ったような形で固まっている。
腹部からは出血の跡があり、広範囲で赤くなり腫れ上がっている。
なんくるの顔色は蒼白状態で、口を開けて苦しんだ表情を浮かべていた。
俺はゆっくりと近付き、呼吸や脈拍を確認する。
「…生き…てる…まだ生きてる!」
俺とまくとぅは全魔力を使い、なんくるへ回復魔法を掛け続けた。傷口は治るも体内に菌が繁殖しているのか、完全に治す事は出来なかった。
「…ア…ルミ。」
なんくるは、か細い声で話し掛けてきた。
俺はなんくるの背を支えながら起こす。
「…死ぬ…前に…もう一…度…まくとぅと…ユウヤに…」
「お兄ちゃん!!私ここにいるよ?」
「…あぁ…まくとぅ…の…声…だ。」
なんくるの体内には錆による菌が回っているのか、恐らく毒も付着していたのだろう。かろうじて会話は出来ているが、正直時間の問題だと確信した。もう彼は…二度と妹や親友を、肉眼で見ることは出来ないのだから。
「…真っ暗だ…怖い…誰かいないのか?」
なんくるは、既に失明しているようだ。仰向け状態で手を前に出し、空に向かって仰ぐように手を動かし続けていた。
「…なんくる。」
まくとぅは、悲惨な兄の姿に耐え切れず嗚咽を吐きながら涙を流す。
「…こんな残酷な事…あっていいはずが無い…。」
共に闘ってきた仲間が苦しんでいる。
俺は、まくとぅの刀を取り鞘を抜いて捨てた。
「…なんくる…まくとぅ…許してくれ。」
「…嫌…やめて…。」
俺はなんくるに剣先を向け、勢い良く振り下ろした。
『カキーーーーンッ!!!!!』
止めてきた刀の持ち手を辿り、そのまま顔を拝んだ。
その顔に俺は驚きを隠せなかった。かつて旅を共にした彼に凄くよく似ていた。
「…ユ…ウヤ……?」
次回もお楽しみに!




