Stage8-22 意地
【外の国の街 ルッコラ街】
街に入る前、民族が住んでいるような貧民街を通り、殺風景な景色は商店街へと変わる。そこから次第に洋風な街並みへと変わっていった。
ルッコラ街は貴族との身分や格差に厳しく、平民や貧民、奴隷は貴族の住宅街には出入り出来ないようになっている。全ては貴族のためにをモットーとしている。
街の中心には大きな時計台があり、特定の時刻で鐘が鳴り響く。
今は十時を指しており、鐘の音と共に私は時計台を見上げた。
そこには東京代表偶数組の内の一人がこちらを見下ろしていた。その眼は、冷酷であり寒気を覚えた。すると、彼は時計台から魔術師のように舞い降りて来た。
「素敵な技ね。生物との契約?」
「…契約?そんな事僕はしないよ。空歩を使っただけさ。」
「空歩を使えるのね、相当の実力者だわ。」
「…そんな事ないと思うな。僕はいつでも脇役なのさ。今も別に君と闘いたくて待っていた訳じゃないんだ。訳も分からず闘う必要なんてあるのかって思うでしょ?」
彼の訴えは、三人中では明らかにまともであった。
では、時計台から見下ろしていた時のあの冷酷な眼は何だったのか。
「…貴方は何故彼等といるの?」
「…彼等?あぁ、ルイやハルサミーの事ね。正直ついていけないよ。彼等は僕なんか居なくてもやっていけるだろうし。それにもう死んだと思うよ。」
「…何故分かるの?」
「…だって、ルイはなんくるって人を狙いに行ったでしょ?どう見てもレベルが違うよ。それに僕が君と会ってるという事は、ハルサミーはあの桃色の髪の子と対面しているでしょ?無理無理、絶対勝てないよ。何で分からないかな。」
私は彼を誤解していたのだろうか。
誰よりも冷静に物事を判断し、決して目立とうとはしない。
「…貴方、私達側に着く気はない?」
「それもいい考えだと思うな。どうせ死ぬなら乗り換える判断も時には重要だと思うし。でもそれは…」
気が付くと私は暗闇の中で十字架の形の柱に貼り付けられていた。
周囲を見渡すとすぐ隣には、私と同じ状態で貼り付けられているメグミがいた。
「…メグミ…何で…」
「…ねぇ、磔刑って知ってる?」
声のする方を向くと、そこには先程いた彼が立っていた。
「…ねぇ…これは何…どういう状況なの。」
「どういう状況って…勿論君達を殺すためさ。」
「…どうして。」
彼は静かに笑いながら穏やかな表情でこちらを見つめる。
「借りに僕が君達側に付いたとしてもそれは君達じゃない。僕はアルミさんに付く事にするよ。それ以外は邪魔でしかない。」
「何も殺すことなんて!一緒に強くなって、旅をすれば良いじゃない!」
彼は溜息を吐いてメグミに近付く。
「やめてッ!メグミから離れてッ!」
薄く目を開けるメグミは、彼を見て微笑んだ。
「…やっと来てくれたんですね。」
彼は驚いた表情を一瞬見せた。そのまま頷き、メグミの胸に手を当てた。
「ねえ待ってッ!やめてッ!お願いッ!」
「…いいの…もう…お母さん…」
私は驚きを隠せず息を呑んだ。
「…ありがとう。」
そう言い残し、メグミは光の雫となって消えていった。
耐えられない悲痛、私は狂ったように叫び続けた。傍から見れば、精神異常者だろう。
「…。」
「…落ち着いたかい?」
「…。」
「…何故こんな事を?」
彼の質問に私は黙秘を貫き通した。
「…ライト、いや、アイネさんと言った方が良いのかな?」
「お前か…メグミに吹き込んだのは…。」
「…違いますよ。彼女は…メグミちゃんは自分で気付いたんです。死んだはずのあなたが何故生きていたのか。混乱したでしょうけど、それよりも母親が生きていた事への嬉しさが勝ったんでしょうね。」
涙が溢れ、視界が見えにくくなる。その涙の意味、それは悲しみと後悔だった。彼が悪い事なんて一つも無い、悪いのは私自身なのだから。
「…分かっていたのよ。メグミの命がもう僅かなんて。生まれる前から知ってたわよ、知らないわけないじゃない!でも…抗いたくもなるじゃない。助けたかった…もっと一緒にいたかった…。」
「…自身の中へ取り込めるのは血の繋がった一族のみ。貴方がメグミちゃんを取り込んだ時点で、どうなるか分かっていたでしょう。こんな結末、誰が望むんですか。貴方が正体を隠した理由はなんです。」
緊迫とした空気の中、時間は刻一刻と過ぎていく。
彼は冷酷な目線を送った。彼の冷酷な目の意味が分かった瞬間だった。
次回もお楽しみに!




