Stage8-20 因縁対決!なんくる対ルイ!
決戦当日の朝。
改めて状況を整理すると、この世界は【天の花園】と呼ばれる異世界。
ここには内側と外側の国があり、定期的に戦争をしている。未だに決着がつかない為送り込まれたのが我々東京代表組。奇数、偶然で分けられ夫々の国へ寡占する。
結論から言えば、生き残った東京代表組が現実世界に戻れるのだ。
何故勝敗を決めなければ行けないのか、そこだけが謎のままだ。
「…てことで、開戦したらなんくるは岩壁の上で見張りを頼む。あの金髪男がいつ探しに来て暴れるか分からないからな。」
「わかった。」
「ライト、まくとぅも無理はするなよ。」
「「了解!」」
俺は外の国の方向を向いた。
「アルミ?どうした?」
「…いや…俺の所にも奴が来るだろうなって。」
「奴?」
「開戦だァッ!門を開けろォ!!!」
この村の隊長の声が響き渡り、兵士達の雄叫びが轟く。
大きい物音を立てながら、大きな門は上へと上がり始めた。
一部の兵士は集中し、一部の兵士は雄叫びを上げる。そして、槍を持った兵士はリズム良く槍の底を地面に叩きつけていた。
『すーすめ進め!時には戻れ!隙があれば槍を刺せ!我等がむらーを守るのだッ!』
ルーティンなのだろうか、リズムを取り始めたと思えば歌まで歌い出した。
唖然としていると門が完全に開き、隊長の「進めぇッ!」という掛け声が響き渡る。
その声に兵士達も次々後に続いた。
俺達も後方だが、少しずつ前へと進み始めた。
ふと岩壁の上を見上げ、なんくるがいるのを確認した。俺が頷くとなんくるは親指を立てて返答した。
「…アルミ…皆…死ぬなよ。」
岩壁から見下ろす内側の国と外側の国。兵力の差は歴然だった。
「お前はここでお留守番かぁ?」
「もう来たのか、早いな。」
振り返るとそこには外側の国にいる東京代表の金髪男が立っていた。
「夜も眠れないんだよ、お前を痛め付けないと気が済まなくて済まなくて。この傷…倍にして返してやる!」
金髪男は錆びたナイフを舐め回す。
「…金髪…錆びを舐めると病気になるぜ?」
「ごちゃごちゃうるせぇ!それに俺は金髪じゃねぇ!第二東京代表のルイって名前があんだよぉ。」
甘い言葉とは裏腹、ルイは殺意の目を終始向けていた。長い舌で口周りを舐め回し、錆びたナイフを投げてきた。
だが俺は間一髪、ナックルで弾き返した。しかし、錆びたナイフとナックルは内側の森へと落ちていってしまった。
「残念だったな。俺には錆びたナイフの予備はまだまだあるぜぇ。」
「…こりゃ参ったね。」
奇声を上げてルイは俺へ飛び掛ってきた。
「豪炎鉄塊ッ!」
俺の左肩目掛けて斬りかかったルイだが、聞こえるはずのない金属音が響き渡る。
「攻撃だけが取り柄だと思ったか?」
「そうこなくちゃねぇ。」
ルイはその場を離れず、左肩にナイフを当てたまま呪文を唱え始めた。
「ランブルアースッ!」
すると、徐々に地面は揺れ、雷までも轟き始めた。地面の岩が俺の足を封じ、その間に俺の左肩へ落雷が直撃した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
俺の肩の鋼鉄化は解かれ、劣化したように溶けてボロボロになっていた。又、錆びたナイフで傷までも付けられてしまった。
「…何が起こった。」
「電飾って知ってるか?」
「電飾…だと?」
【電飾】・・・異なる種類の金属が接触し、水などの電解質が存在する環境で、金属間で電子のやり取りが起こり、一方の金属が腐食(錆びる)現象のこと。
電気化学的な腐食の一種で、金属が電解質中でイオン化する際に、異なる金属間で電子のやり取りが起こることで発生する。
「…つまり、俺の鉄とお前の錆びたナイフ…そこに雨水と落雷があった事で起きた現象という事だな。」
「ヒャッハッハッ!鉄が腐食してますぜぇ?あれあれ?傷まで出来てるぅ!」
出血量が多く、抑えていても溢れてしまう。傷口に錆びが混入したのか、ジワジワと痛みを感じる。
「あー面白いッ!やっぱり錆びは辞められないぜぇ!」
ルイが興奮して話している隙に俺は森へと落ちた。
「おいッ!逃げんのかよッ!」
案の定すぐ様ルイは追いかけるように落下した。
着地と同時に俺は踏み切って身を隠した。
ルイが着地する頃には、既に俺は遠くへと消えていた。
「クソがァッ!!」
俺は川の水で左肩の傷口を洗い流した。傷口に冷水を掛けると、中々の痛みを感じた。しかし、すぐには洗い流せなかった為、感染症のリスクは高いだろう。
「クソッ…まくとぅに助けてもらわな…」
立ち上がろうとすると、ルイが顔に蹴りを入れてきた。吹き飛ばされた俺は再び川へ飛び込み、水飛沫が上がる。
「お前さ…何逃げちゃってんの?」
「…逃げるも戦略の内ってね。」
「…あ?」
ルイは再び錆びたナイフを投げてきた。今度は十本程一気に。
防ぎ切れないと思った俺は、再び鋼鉄化した。しかし、先程よりも腐食が進んでおり、少しずつ崩れ落ちてしまった。
「…終わりだ。」
「…火龍…憑依ッ!」
ルイが飛び掛る直前、なんくるを大きな煉獄が包み込む。
再び姿を現した時には、なんくるの全身が炎で包まれていた。そしてその形は、龍そのものだった。
「…龍と同化しただと!?」
「…勝負はここからだ。」
次回もお楽しみに!




