Stage8-16 内と外、奇数と偶数
「どうも〜♪東京偶数組でぇ〜す♪」
その高い声の主は、スタイル抜群の女性だった。水色の髪にたわわと実った果実を持つ彼女は、アイドルのような可愛らしい顔容であった。
その隣に立つのは金髪の色黒キザ男と前髪の長い暗そうな男が立っていた。
まくとぅは投げてきたナイフを取り、金髪の色黒男に投げ返した。金髪男は二本の指でそれを受け止めた。
「…随分錆びたナイフを使うんですね。」
「ハハッ…錆びたナイフを身体に刺したらどうなると思う?」
「…気色悪い。」
不気味な笑みを向ける金髪男の間に入るようになんくるがまくとぅの前に入る。
「…悪いが何の用だ?生憎今は忙しくてな。」
「君達、外側?内側?」
「は?なんの事だ。」
なんくるの返答に偶数組を名乗る三人は馬鹿にするように笑った。
「え?何も知らないの?何でここに居るの?超ウケるんですけど〜♪」
「こりゃ、勝負にならん。偶数組の勝ちで終わりだな。」
「……勝ち確。」
高らかに笑い続ける偶数組に俺は質問を投げ掛けた。
「すまない、何も調べずに来てしまったんだ。良かったら教えてくれないか?」
「おい!アルミ!」
俺の低姿勢になんくるは少しご立腹であった。
「そうですよ!こんな奴等に聞く必要がありません!」
「…アルミさん。私は部外者かもしれませんが、お兄ちゃん達の言う通りだと思いますよ。」
すると金髪男が先程の不気味な笑みを浮かべながらこちらに近付いて来た。そして、俺に顔を近づけた。
「教えるかよ!ばぁぁぁぁぁかぁッ!」
そう言い放つと俺の顔面に唾をかけた。
それとほぼ同時になんくるが金髪男に思い切り殴り掛かった。受け止めきれなかった金髪男の頬にはナックルの痕がくっきりと付き、外側の村の方へと飛ばされた。
「何をするッ!!!」
水色髪の女性になんくるは殺意の目を向ける。
「…何をする?仲間に手を出したんだ。生きて帰れると思うな。」
「わ、わ、わ、分かったよ!情報を話すから今は一旦止めて!」
なんくるは耳を傾けず、戦闘態勢のままだった。俺はなんくるに近付き、「大丈夫だから。ありがとう。」と伝えた。すると、なんくるはナックルを外してその場を離れた。
「じゃあ、教えてもらおうか。」
「…か、簡単に言いますと、外側の村と内側の村に寡占するんです。天の花園の村は、二年おきに戦争をしているんです。その戦争に向けて、両国は準備を進めています。なので、未来人東京代表の私達がこの世界に送り込まれたのです。」
「なるほど。奇数と偶数に分けられているのはそれが理由か?」
「…そ、そうです。私達は外側の村へ呼ばれているのでそちらに向かいます。恐らく奇数組は内側かと思います。」
この時、俺が外側の村へ入れなかった理由がハッキリと分かった。
「その話によれば、私達も対立するという事ですよね?」
ライトは、水色の髪の女性へ問い掛けた。
「…多分そうです。タイムリミットは二週間。その間に天の花園の決着をつける必要があります。同時に私達が帰れるタイミングもその時なのです。」
「帰れるタイミング?」
「…天の花園に一度入ると基本的にはもう出られません。その代わり、二年に一度下界への扉が開きます。そこに入れるのが二週間後なのです。」
会話に割り込むようにまくとぅが質問を投げた。
「そもそもその戦争に決着をつける必要があるんですか?話せば和解を出来る可能性も…」
「それは御法度なのです。」
まくとぅの言葉を遮るように水色の髪の女性は言葉を重ねた。
「我々はもう、引き返す事の出来ない地獄の世界に来たんです。生きて帰れるのは果たして誰なのか、二週間後に全て決まります。」
そう言い残し、奇数組の二人は外の村へと帰った。
残された俺達は状況を整理する事が精一杯だった。頭が混乱した状態のまま、内側の村へと身を移した。
次回もお楽しみに!




