Stage8-14 破られた契
「…てな感じだ。」
「なるほど。」
バレットさんに聞いた話は謎の多い事ばかりだったが、なんくるがこの島に来た事があってその詳細は不明だという事はわかった。 それ以上教えないのはネタバレになるからであろう。
「バレットさんは何故この島に?」
「不具合があって派遣された。この世界だけは現実に近い神経波が出ているんだ。つまり、刺されたりしたら現実並みの痛みが走るってこと。」
「…てことは場合によっては死ぬことも。」
「あるだろうな。」
バレットさんと俺はそのまま洞窟を後にした。
外に出ると元の岩場の上へと出て、左手には内側の国、右側には外側の国となっている。
「…忠告になってしまうが、この【天の花園】のミッションは最難関だ。クリアする気がないなら今すぐ立ち去る事を勧める。」
そう言うとバレットさんは転移魔法陣を発動した。
「…ここに入ればクリアせずともこの世界から抜け出せる。本来の俺の役目は離脱したいプレイヤーをゲーム世界から抜け出す手助けをする事だ。」
この世界から抜け出すには、ゲームをクリアするしかないと思っていたが、バレットさんと出会った事でゲーム世界から抜け出せる展開となった。
「…ただし、このゲームを二度とプレイする事は出来なくなる。」
先程まで現実へ戻るつもりでいたが、バレットさんの一言で躊躇してしまった。
このままでは、なんくるやライトを見捨てる事になるのではないかと思い始めていたのだ。
「…もうなんくるやライトと会えなくなるんですか?」
バレットさんは俺の言葉に腹を抱えて笑った。
「お前正気か?ゲーム世界だぞ?あいつらはただのキャラクター、現実世界にはいないんだ。」
バレットさんの言っていることは最もであった。しかし、俺はこのまま立ち去る選択肢は無くなっていた。
「…すみません。もうクリアしてから出るって決めたんです。」
「…お前普通じゃねぇよ。まあいいけど。」
バレットさんは転移魔法陣を消し、外側の村へと立ち去ろうとした。そして、再び振り返り一言発した。
「忠告はしたからな?どうなっても知らんぞ。」
バレットさんは岩場を一段一段降りて行った。
深呼吸をした後、再び一番上の岩場へと戻った。
息を荒らしながらも頂上に到達すると、そこには見覚えのある人物が座り込んでいた。
「…なんくる?それに、まくとぅ?」
二人は驚いた表情で振り返った。
「…アルミ…なんでここに。」
「なんでって、俺達空から落ちてきたじゃねぇか。」
「…そう…だよな。」
俺はなんくるに近付き、思い切り胸ぐらを掴んだ。
「お兄ちゃんッ!」
なんくるは苦しそうにしながら、俺を見下ろした。
「…その様子だと、それなりには知ってるのか?」
「…全部では無いが、まあそれなりにな。」
「まくとぅは関係無いんだ。俺はお前と同じ世界から来た未来人だ。」
なんくるからそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった俺は、黙り込んでしまった。
「何で言わなかった?」
数分の沈黙後に発したのは、何故黙っていたのかという質問だった。他にも山ほど聞きたいことはあるが、順を追って聞かないと混乱してしまいそうになっていた。
「…言う必要が無いと思った。お前とリズが未来人と知った時は驚いたさ。もちろんサン隊長やライトもそうだ。だがな?俺達だけじゃないんだよ。」
「…どういう事だ。」
「…俺達未来人が住む第一から第七東京までの都市部は、各地域から代表を選抜した。」
俺はなんくるの言っていることが理解出来なかった。
「お前がジュンタとか言う男に誘導されたように、俺もカツラギという男に誘導されてここまで来ている。まるで仕組まれたかのように。俺達は騙されて何かの実験に巻き込まれている可能性が高い。」
「いやいやいや、そもそも俺達の故郷は壊滅していただろ。何で過去に送り込む必要があるんだよ。」
そこからなんくるは「わからない」の一点張りだった。まくとぅの手によって俺はなんくると距離を取らされた。
「…この世界に何が起こっているんだ。」
俺達三人は沈黙のまま内側の国をただただ眺めていた。
次回もお楽しみに!




