Stage8-13 注がれた生命
俺は岩場の上から岩で囲われた村を眺めていた。
少し前の事を思い出すと胸が苦しくなる。
「…クソッ…なんでこうなっちまった。」
以前この村には、未来で仕事をこなしていた時に来た事があった。
一ヶ月程暮らしていたが、家、人、環境など全てにおいて不満は無かった。
だが、俺はすぐに村から逃げ出した。
というより、何かがおかしかったのだ。
結局それを解明することは出来ず、報酬も貰わずにその仕事は終わった。
それからこの村には足を踏み入れていない。
あの時は、報酬はいらないからとにかく早くこの村から出して欲しいと村長に懇願した。今思えば、失礼だったとも思うが、あの時の感情がなんだったのか未だに分からずじまいだ。
だが、不思議な事に何が原因だったのかさえよく覚えていないのだ。
そもそも当時は、ここへどうやって来たのか何の目的であったのかさえ覚えていない。漠然と来た事があるという記憶だけが残っている。
「…悪いなアルミ、ライト。今回は上から見守らせてもらうぜ。」
すると、突然背後に気配を感じた。
「やっと再生できたよ。こんな時間かかるなんて思わなかった。」
「…遅かったな。身体が残っていれば必ず戻ってくると信じていたよ。」
女性は溜息を吐いて俺の横に座り込む。
「しかも、お兄ちゃん全然泣かないじゃん。死んじゃってたかもしれないんだからね。」
「…だから、お前の能力を信じてたんだって。」
女性は「まあ、それもそうね!」と自慢げに胸を張った。
「ここまではどうやって?」
女性は「当然」と空を指さした。空中には無数の蝶々が舞っていた。
「…便利だな。お前の虫。」
「物みたいに言わないで。まず生きてた事と再生した事を褒め称えてよ!」
「…よくやった。」
俺がまくとぅの頭を撫でると少し嬉しそうな表情を見せる。
「ところでさ、蝶達の案内で辿り着いただけなんだけどここ何処?」
「…ここはとある条件が揃った時にのみ出現する島なんだ。かつては、ネバーランドとも呼ばれていたが実は違う。ここは全てが謎に包まれた幻の島。」
「ふーん、そんな所になんの用事なの?」
「用事?そんなのありゃしないさ。だって呼び出したのは向こうなんだから。」
何も解明されていないこの島へ訪れた者は何人もいる。しかし、帰ってきた者は自分を含めて何人いるのだろうか。帰ってきたとしても記憶は無く、何の目的があったのかも分からない。そんな幻の島を人は【天の花園】と名付けたのだ。
「…天の花園…出来ることなら関わりたくない島だ。ハァ…帰りたい。」
次回もお楽しみに!




