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Stage8-9 過去を生きた証


気が付けばそこは浜辺であった。

波の音に目を覚ます。だが、嫌な気分では無かった。むしろ優しく懐かしいその音は、俺の心を洗ってくれた。

活気のある自然植物たち、色のある海や砂を見て俺は涙が込み上げてきた。

「…生きてる…何もかも。」

何度も崩れそうになる足を支えながら、砂に足を踏み入れ続けた。次第に埋まりは浅くなり、そのまま勢い良く村へと走った。

村からは明るい歌声や、太鼓の音が響き渡っていた。

入口から入ると、「ようこそー!」と大勢の人間が迎え入れてくれた。棒立ち状態でいると、村人の中から一人の老人が前に出てきた。

「…ようこそ、琉球村へ。我が名はちむじゅら、この村の長なる者。」

到着した村は、なんと琉球村。俺の故郷そのものであった。

元々有名な観光地とも知られている琉球村。伝統的な古民家が複数並んでいた。

その古民家を石垣で囲っており、シーサーも置物として置いてある。

疑うものは何一つ無かった。


『はぁ〜イヤイヤサッサー!アイヤイヤサーサー!』


明るい声がエイサー太鼓と共に響き渡る。

ちむじゅらの案内の元、少しずつ村の中へ入って行くと、村人達はひたすら歌いながら踊っている。

「ようこそ。」

「お前変な匂いがするな。何処の生まれだ?」

「これこれ、ちゅーばー。お客様になんて言い草じゃ。」

一人は優しそうな眼鏡をかけた男、もう一人は見るからにやんちゃそうな男。

「はじめまして。私はでぃきやー。」

「ちゅーばーだ!」

二人と握手を交し、互いに自己紹介を済ませる。

「…すみません、今は西暦何年でしょうか?」

俺の質問に三人は首を傾げる。

「お前何言ってんだ?」

「…もしかして、記憶が無いのですか?」

未来から来たとは到底言えず、俺は嘘をついた。

「…はい。名前だけは覚えているのですが。」

「…ふむ。では思い出すまでここで暮らすと良い。」

ちむじゅら様は、行く宛ての無かった俺に優しい言葉をかけてくれた。その言葉に再び涙が溢れる。

「泣いてんじゃねぇよ。」

「ちゅーばー。」

デリカシーの無い発言にでぃきやーはちゅーばーの頭を軽く叩いた。そして、でぃきやーが近付いて手を差し出した。

「改めて、宜しく。」

「…よろしくお願いしやす!」

こうして俺は、この世界の琉球村の民となった。

村人達とは次第に打ち解け、未来から来た事も忘れてしまうほどに暖かい毎日だった。だが、眠る時にはあの日の光景が蘇る。未だに最後のカツラギの顔が思い浮かんでしまう。

毎日早起きして畑仕事に動物達の世話。でぃきやーやちゅーばーと稽古に励み、気付けば未来にいた頃より強くなっていた。

「…やるじゃねぇか。俺の次に。」

「素直に褒められないのですか?」

「うるせぇ!」

言葉遣いや素行は悪いが、中身は悪い奴じゃない。でぃきやーが居るからこそこの二人は最強なのかもしれない。

「でも本当に強くなったね。もしかしたら村一番なんじゃないかい?」

その言葉に少し照れると、納得がいかなかったのか見習いの女の子が前に出て来る。

「私の方が強いですッ!」

「まくとぅ。君はまだ見習いだろ?なんくるの方が遥かに強いよ。」

でぃきやーは、優しくも重い言葉を十代そこそこの女の子に言い放つ。

「…ほんとだもん。」

これが俺とまくとぅそーけーとの出会いだった。


次回もお楽しみに!

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