Stage8-8 カツラギ
「カツラギッ!」
「あ!なんくるさん…そいつら。」
警戒するカツラギの間に入り、俺は事情を説明した。
「なんだそうだったんですか。」
カツラギは、ちぶるやわんと握手を交わす。
「そういえば!面白いもの見つけたんですよ!」
カツラギは森の中へと走って行った。
俺達は急いでカツラギの後を追った。
森の中は薄暗く、足元を見るのが精一杯だ。
慎重に道を進んで行くと、木々には蝋燭が掛けられている。
所々無数の藁人形もあり、釘で刺してあった。
歩み続けていると出口が見えて来た。
そこには大きな石の祭壇があり、四つ角にはかがり火が置かれている。
ゆっくりと階段を上がって行くと、頂上は平らな状態になっていた。
そこの中心には手足を縛られたカツラギが横たわっていた。
「カツラギッ!」
次の瞬間、雷鳴が落ち俺達は吹き飛ばされた。
「誰じゃ?我を起こした愚か者は。」
カツラギの真上に現れたのは悪魔だった。
「悪魔!?」
「そんな馬鹿な!悪魔は大昔に滅んだはずだ!」
初めて見た悪魔に呆然とし、動揺を隠せなかった。
「…ほぉ、これは見るからにマヌケな男。」
「カツラギッ!逃げろッ!」
悪魔は真下に横たわるカツラギに目をやり、舐め回すように見ていた。
気を失っていたカツラギも少しずつ目を開け、悪魔の存在に気付いた。
「あ、あ、悪魔まあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「カツラギッ!」
悪魔はカツラギに顔を近付け、再び舐め回すように見た。
カツラギは恐怖で身動きが取れずにいた。
「ふむ、お主で良い。今日から貴様の主はわしじゃ。」
そう言い放ち、悪魔はカツラギを魔法で宙に浮かせた。カツラギの周りには紫の光が放たれている。
「頼むッ!やめてくれッ!カツラギは俺の!」
「なんくるさんッ!助けてッ!助けてッ!」
俺とカツラギは互いに手を伸ばした、しかし、届くことは無かった。目の前でカツラギは紫の光に吸収されてしまった。次第に紫の光は、大きな影を生み出した。
「…このシルエットはまさか。」
「…大蛇だ。」
『シャアァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!』
「…カツラギ。」
膝から崩れ落ちた音はあまりに小さく、大蛇の叫び声で掻き消されてしまった。
「よし、我が下僕よ。奴等を食ってしまえ。」
悪魔は大蛇に命令を下した。その瞬間、大蛇は俺達に向かって来る。
ちぶるやわんはその場から逃げ出したが、大蛇のスピードには勝てなかった。ちぶるは噛みちぎられ、わんは丸呑みにされてしまった。二人の断末魔は一瞬であったにも関わらず、凄まじい恐怖の種を植え付けた。
だが、俺は立ち直れずにいた。今まで共にやって来たカツラギを助けることも出来なかった。
「…何が俺より強い奴いないのだよ…俺が一番弱いじゃねぇか。」
辛い涙を何滴も流し、俺は悪魔に飛びかかった。しかし、全力の拳を片手で受け止められ、仕舞いには百メートル程突き飛ばされてしまった。
大蛇が俺に向かって来るも、目の前に三人組の内の一人が立ちはだかった。
「…なんくるさん。逃げてくれ。」
その男はそう告げ、大蛇の囮となった。俊敏な彼であったが、大蛇の素早さにはかなわず、最終的には捕食されてしまった。
「…ハハハ。負けだ負け。」
悪魔は俺の言葉に嫌気がさしたように、「もうよい。つまらん。」と背を向けた。その隙に後頚部を狙ったが、指先で攻撃を払い除けたのだ。
「…本当に弱くてつまらない。お前のようなものはそこで這いつくばっていろ!」
俺は悪魔の威嚇を受け、その場から動けなくなってしまった。
「…クソ…クソ…情けねぇ。」
突如出現した闇の中へと悪魔と大蛇は入って行った。
「…待てよ。カツラギ…せめて俺の手で。」
俺は声を荒らげながら、身体の硬直を剥がそうと暴れた。そして、ぎこちない走りで二人が入った闇の中へと追い掛けた。
次回もお楽しみに!