Stage2-2 伊藤家奪還編 伊藤 恵
Stage2-1 伊藤三郎
の続編になります。
大変お待たせ致しました!
何せ多忙だったもので、誤字などあったら申し訳ありません。
尚、まだ伏線だらけで訳が分からないかもですが、その伏線を必ず頭に入れておいてください!
目を開くとアルミと伊藤三郎の姿はなかった。
アルミは【人魂化】に吸収され、伊藤三郎の中に入った。つまり、伊藤三郎は消えたのではなくアルミ自身が伊藤三郎になったのだ。
伊藤三郎の体内に入ったアルミは、伊藤三郎自身の苦しみや悲しみを感じ取った。異常な程の不安感と胃の痛みで今にも蹲りそうになる程だった。そんな痛みに耐えながらも、家族とまた再会出来ると信じて毎日を生きていたのだった。
「三郎さん…あんたの痛みしかと受け取りました。必ず家族を見つけます。」
しかし、手掛かりが何も無いのは事実。
三郎さん自身も手を尽くしたと言ってるほどだ。
まずは近所への情報収集をしようと玄関に向かった。
この家に入った時は気づかなかったが、玄関の棚には家族の写真が飾ってあった。
奥さんも娘さんも幸せそうに微笑んでいた。
少し気になったのは、三郎さんはどことなく暗い表情をしていてまるで別人であった。
「半年前ですもんね…正直もう覚えてないわね。」
「半年前?んなこともう忘れたよ。」
「三郎さん…こんな事言いたくないけど現実見ましょ?半年も経ってるのよ?」
もう何件の家に回ったかわからない。
しかし、八割が「忘れた」という言い分ばかりだった。
近所が駄目ならとそのまま警察へ向かった。
警察署の受付は、若い刑事が担当していた。
「伊藤さん、お久しぶりです!丁度連絡しようと思っていたんです!いえね、大っぴらに捜査はしていなかったんですけど、あの時以降も数人で情報を聞いて回ってはいたんですよ。」
「ほんとですか!?些細な事でも良いんです!何かあるなら教えてください!」
「…伊藤恵さんらしき人物が市内のスーパーのカメラに映っていた事がわかりました。」
まさかの展開であった。娘の伊藤恵さんが市内のスーパーにいたとなると、捜査範囲は絞られるはず。これだけの有力な情報を得たなら、警察も再び動いてくれるだろう。
「一先ずこちらにどうぞ。」
若い刑事さんに案内されたのはテレビの置かれた取調室のような部屋だった。
刑事さんはビデオテープを取り出し、デッキへと入れた。
「スーパーのカメラの映像をビデオに落としたものです。こちらをご覧ください。」
映像を見ると小学校低学年程の女の子らしき子供がスーパーを静かに歩き回っている。
映像は画質も悪く、所々ノイズがはしっている。
それでも分かったのは惣菜パンを万引きしている所だった。
「スーパーの店長さんから連絡があったんです。万引きしている子供がいて困っていると。」
刑事さんは気まずそうな表情を向けていた。
何故、伊藤恵は万引きなどしているのだろうか。
誘拐されたのなら伊藤恵自身を買い物に行かせるだろうか。
普通なら少しでも証拠を減らし、逃げ道を無くす為にも犯人が買い物に行くのではないだろうか。
犯人は身内にいる可能性も否定できない。
それに半年間証拠が何も出なかったのに、何故このタイミングで姿を現したのだろうか。
謎は深まるばかりであった。
「…刑事さん、お願いがあります。」
事実確認として、刑事さんに一つ依頼を託した。
そして再び自宅へと戻った。
【伊藤宅】
伊藤宅は4LDKの一軒家だ。この家は玄関から入ると右手に客間、左手に2階へ上がる階段がある。階段の隣にはトイレが設置されている。
リビングには突き当たりのドアから入り、ダイニングやキッチンも兼ね備えている。リビングの奥にはもう一部屋、伊藤三郎の書斎がある。
そして二階に二部屋、一つは夫婦の寝室。もう一つは娘の部屋。
今、いるのは伊藤三郎の書斎である。
机の引き出しから無数に出てくる書類と睨めっこして、約一時間が経過している。
「…流石に住民票は無いよな。」
溜息をつきながら独り言を呟いた時、とある手帳を発見した。
中を見ていくと仕事や会食等の日程が書き込まれていた。
すると、八月九日の枠内に結婚記念日(嘘)と記載されていた。詳細は不明だが、娘の伊藤恵よりも奥さんの明恵さんの事を先に調べる必要があったようだ。
俺はふと左手の薬指を見た。
「…なるほどね。」
そして、玄関に向かった俺は写真立てを手に取った。
三人家族の写真だが、三郎さんの表情に違和感を感じた写真だ。何故暗い表情をしているのだろう。どこかピクニックにでも行った時の写真なのだろうか。三人が写っているという事は、写真を撮ったのは誰なのだろうか。
ふと写真を写真立てから取り出すと三郎さんのみ切り取られた写真が落ちてしまったのだ。
元の写真を見ると、そこには見知らぬ男と映る明恵さんと恵ちゃんの姿があった。
写真を置き、すぐ様家の中にアルバムが無いか探した。
すると夫婦の寝室内の押し入れから三冊のアルバムが出てきた。
一つは黄色のアルバムで【恵のアルバム】と書かれている。中には恵ちゃんだけが写っている写真が集められている。
二つ目は青色のアルバムで【家族写真】と書かれている。家族でのみ写っている写真が集められている。
問題があるのは三つ目のアルバムだった。
赤色のアルバムで【呪】とだけ黒文字で書かれている。
一枚、二枚とページをゆっくり捲っていくも写真は入っていなかった。
七枚目のページを開いた時だった、老婆の遺影のような写真が大々的に入れられていた。
俺は言葉が出なかった。
次のページを開くと三人家族と一緒に老婆が写っている写真もあった。雰囲気的に明恵さんのお母さんで、三郎さんの義母だろうか。
他には見知らぬ男性と写真撮っている奥さんの写真もあった。中には、事後の様な写真も。
どちらにせよ、【呪】と書かれたアルバムに三郎さんが写った写真はなかった。
それらの写真は全てズタボロに切り刻まれていた。
この時、伊藤三郎に入っている俺は怒りと悲しみの感情で溢れていた。
これは自身の感情ではなく、三郎さんの心の声であろう。
三郎さん自身も何か知っているのではないだろうか。
すると、居間の方から固定電話の鳴る音が聴こえた。
すぐに駆け付け電話に出ると、先程の刑事さんからの電話だった。
「三郎さん、あなたに頼まれた事調べましたよ。ですが、これで何がわかるのですか?よく分からないですけど、何かあったら教えてくださいね。決して貴方だけで解決しようなんて思わないでください。」
刑事さんから心配と忠告を受けた後、俺は恵ちゃんの見つかったスーパーへと向かった。
スーパーに入ると数人のお客様がいた。そして、店内の惣菜パンのコーナーに向かった。
するとそこにはボロボロの服装で、何日も入浴していないような容姿の子供がいた。その横顔は恵ちゃんによく似ていた。カメラの映像にもあった通り、その子供は再びパンを万引きしようとしていた。俺はその子に近づいて行った。
惣菜パンを持った右手を握り、万引きを阻止した。
顔を見る限り、間違いなく恵ちゃんであった。
恵ちゃんは俺の顔を見ると涙目になっていた。
「…お、お父ちゃん。」
恵ちゃんは大号泣で俺の身体に飛び込んで来た。
「お父ちゃんッ…お家に帰りたい…お母ちゃんがッお母ちゃんがぁぁぁぁぁッ!」
恵ちゃんの声は店内に響き渡り、全てのお客さんの視線を感じ取った。
一先ず恵ちゃんを抱き抱えて、パンを三個程購入した。その際、事情を全て話し、今までの万引きした分のお金を支払った。
「大変申し訳ありませんでした。」
「いや、まあ仕方ないですよ。そんな事情があったなんて。この見た目ですから、虐待とか疑ってたんです。こんな形ですけど、娘さんと再会出来て良かったですね。」
スーパーの店長さんは疑いもせずに許してくれた。
恵ちゃんを一旦自宅へ連れて行き、パンを食べさせた。
胃袋を満足させた後、まずはお風呂に入れてあげる事にした。
ボタンを押し、自動でお湯は張られていく。
お風呂が沸くまでは、恵ちゃんと話をする事にした。
「恵、何があったか話せるかい?」
恵ちゃんは辛そうな表情を浮かべながらも頷いた。
「…畑っていう叔父さんとおばあちゃんの所にいたの。」
恐らくあの写真の二人だろう。
その時だった、突如異常な程の頭痛に襲われた。
痛みに耐えられず、その場に倒れ込んでしまった。
「お父ちゃんッ!お父ちゃんッ!」
そして俺は意識が遠のいていった。
次回
Stage2-3 伊藤明恵