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Stage8-2 生けない花


「…人間じゃないって…それはどういう。」

ライトとメグミの間に長い沈黙が続いた。

大きな満月はスポットライトのように二人を照らす。

「…私ってこの世に存在してはいけない存在なの。私のお父さんは過去の人、お母さんは未来の人。結ばれるはずのない二人から生まれた子供はどうなると思う?」

ライトは言葉が詰まり、息を飲んだ。

「…分からないよ。」

「今頭の中で想像した事が正解だよ。」

ライトが思い浮かべた事は【死】であった。

「…どうにかならないの?」

「…ならないよ。何歳まで生きれるのかさえ分からない。気が付いたら死んでるってパターンなんじゃないかな。」

「…そんなこと誰に聞いたの?」

「…前に悪魔のプレシャスに捕まっていた時があって。」


ーーーーー

『…お前異形かにゃ?』

『いぎょー?』

『…いぎょう!産まれるはずのなかった子供の事にゃ。』

『…私死ぬの?』

『…そうにゃ。気の毒にゃけど、そればっかりはどうにも出来ないにゃ。後悔しないように生きるのにゃ。』

『わかった。』

ーーーーー


「…そんなの所詮悪魔の戯言でしょ?」

「プレシャスさんは違う!」

突然のメグミの大声にライトは驚いた。

「…ごめんね。そんなつもりは。」

メグミは左右に首を振り、「いいの。」と一言だけ呟いた。そして、海に浮かぶ月を見て涙を流す。

「…こんな時お母さんならなんて言うかな。」

メグミは「…会いたい会いたいよ」とその場で泣き崩れてしまった。

ライトはゆっくりと近付き、背後からメグミを抱き締める。

「…一つだけ…メグミちゃんの悩みを無くす方法があるけど。」

「…何?」

ライトは苦い表情をしながら、その方法を話す。そのような事はしたくなかったが、何もせずにメグミが亡くなるのは納得出来なかった。

「…やるよ。何もせず死んじゃうよりマシ!」

ライトはメグミを抱き締め、満月を見ながら「…ごめん。」と呟いた。



…翌日。

早朝、集合場所に集まったのは俺となんくる、そしてライトだけだった。

「…メグミは?」

分かっていながらも俺はメグミの所在を確認する。

「…まだベットで眠っているわ。」

ライトの曇った表情は気になるが、メグミが起きる前に行かなければならない。

「…ライト、何かあったのか?」

俺が聞くよりも先になんくるが問い掛けた。

「…別に何も。」

その後もライトは、何も話そうとはしなかった。不穏な空気の中、俺達は天の階段へと向かった。


黄金に輝く階段の目の前に佇む俺達は、ふと上を見上げた。階段は雲の中まで続いており、階段は途中で途切れているように見えた。

「…なぁ、あれって先があるんだよな?」

なんくるとライトは同時に首を傾げる。

「…てっぺんまで行って落ちるとか無いよな?」

なんくるとライトは再び首を傾げる。

「…お前らわざと?」

「いや、本当にわからんから。」

「…答えようが無いということ。」

「…そりゃそうか」と再び階段に向き直し、俺達は足を進めた。

三人は無言のまま階段をのぼり続け、次第に雲の中へと突入した。落ちてしまうのではないかという恐怖に煽られながら足を進めるも、何度も進むのを躊躇してしまいそうになる。

徐々に重くなる一歩を止めると、ついに階段が途切れてしまった。

「…本当にこの先に何かあるのか?」

振り返ると、なんくるとライトは俺から五段程離れて様子を見ていた。

「てめぇらふざけんなよッ!」

「うるせぇ!さっさと行けぇぇぇ!」

俺となんくるが戦闘態勢に入ると、


「「あっ」」


俺は足を踏み外し、雲の中へと落ちた。

俺の叫びは徐々に遠くなっていったのであった。


次回もお楽しみに!

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