Stage6-7 兄から妹へ
リズ、ジュンタ、サン隊長、三郎、アイネ、メグミ、ユウヤ、市村、なんくる、ちむじゅら、まくとぅ、さーたー、ダイス、ライト、そして悪魔達。
出会った全てのキャラクターが同じ方向を見つめる。
「…さあ、誰を選ぶ?」
「…何を基準に選べと言うんだ。」
「それは人それぞれ違いますから。顔面、容姿、強さ、能力…何を取ろうがその後どうなろうがそれがそいつの人生なのさ。」
ここでは何をどのように考察したらいいのか。正解のないこの問題は、俺の頭を悩ませた。左眼の激痛が続く中、長考は出来なかった。
しかし、ふと目に入ったキャラクターがいた。
俺は思うがままに、自分の直感を信じた。
「…ほぉ。」
俺が指を指したキャラクターを確認したアレクは、再び真っ暗な空間へと戻した。
「…やはり君は面白い。何故そのキャラクターを選んだんだい?君ならリズやさーたー、なんくるを選ぶかと思ったが。」
「…まあ、妥当に考えるならそうだろうな。」
「ほぉ、君の言うその妥当とは何を基準にしたんだい?」
「そんな堅苦しく考えるなよ。直感だ。」
アレクは微笑みながら溜息を吐いた。
「この大事な局面でその選択が出来るとはね。」
「勘を疑ったら俺は終わりさ。」
アレクはその場からゆっくりと去って行く。
「それじゃあ、ゲームの世界に君を戻すよ。でも、ここからは君の選択で大きく結末が変わる。誰が生きて誰が死ぬのか。君が死ぬ事を回避出来ない展開だってあるだろう。君が死ねば、現実世界には二度と帰れなくなる。今なら土下座一つで元の世界に戻してやらん事もないが…どうする?」
俺はその言葉に鼻で笑ってしまった。
「…何がおかしい?」
「…いや、その選択は無いなって。一応ゲーオタなもんで。ここまで来たらクリア目指すでしょ。」
アレクは鼻で笑い返した。
「…因みに、さっきの君が選んだキャラクター。後々君の元へと現れるよ。精々再会を楽しみにしているといい。」
高らかな笑い声と共に、背景はカナディアンロッキーへと戻る。
倒れているライトを見ると、剥ぎ取られた頭や全身の傷は治っていた。更にはキノコの姿ではなく、本来の人間の姿であった。白髪に白銀の鎧を纏っている彼女は、まるでジャンヌ・ダルクのようであった。
周囲を見渡すも、サン隊長の姿は無かった。
俺はライトに近づき声をかける。
「…ここは。」
「気が付いたか?」
「あれ?私確か…獣の怪物に襲われて、お兄ちゃんを助けて…」
「…記憶が無いのか?」
「…それに君は誰だい?」
ライトの魔族になっていた間の記憶は無かった。元々あった記憶を元に魔族として生きていたようだが、人間としての彼女は心の奥深くに封印されていたと推測した。
俺はこれまでの事を全て話した。
「…そうだったんだ。お兄ちゃんは生きてるの?」
俺は首を左右に振った。
「…そうだよね。でも、アレクがお兄ちゃんを殺したなんて。」
この世界はゲームの世界でアレクはこの世界を操る者なんて説明は出来なかった。現状話せる事としては、アレクは敵だったという言葉だけだった。
ガチャンッガチャッガチャッ!
突然空から大きな音が聴こえた。見上げると歯車が四つ回っているのが見えた。
「…歯車が回っている。という事は。」
そう、物語の進行が再開した。悪魔討伐に時間を要したせいで忘れていたが、本来はこの歯車を起動させることが目的だ。
そして同時に四つ目の歯車が動き出したという事は、サン隊長の身体はライトに受け継がれたという事だ。その事をライトに伝えると、ライトは腕を抱えながら大号泣した。
落ち着いたライトを連れて、俺はなんくるとメグミの元へと戻った。
『…ありがとうな。』
どこからか聞き覚えのある懐かしい声が聴こえた。
「…気のせいかな。」
少し歳を取った兄の図太い声に気付かずも、兄から送られた最後の言葉は妹の元へとしっかり届いたのだった。
次回もお楽しみに!




