Stage6-4 喋る魔族
「隊長!副隊長!逃げてください!ここは私が!」
彼女の背中は小刻みに震えながらも勇敢に立ち向かっていた。
泣き喚いた俺や逃げ出した一番隊隊長よりも遥かに頼り甲斐があった。俺は、負けていられないと立ち上がった。
「情けない姿を見せてしまってすまない。俺も闘う、たとえここで朽ち果てようとも!」
「…隊長。」
しかし、ライトが立ち上がる気配を感じない。
ふとライトの方向を見ると腹部を抑えながら中腰状態で苦痛表情を浮かべていた。
俺はすぐ様ライトに駆け寄った。
「…かすり傷…なのに…毒を塗られたみたいに…痛い。」
ライトはその場に再び倒れてしまった。
俺はライトを仰向けにし、腹部を見ると三本の傷が紫色に炎症していた。
「…くそ…何だこれ。どうしたら…。」
「…その傷は…普通…助からない。」
聞き覚えのない声に俺は恐る恐る振り返った。
先程の獣の魔族が目の前に立っていた。
「…彼女…強い…まだ…生きてる。」
俺は何が起こっているのか事態を飲み込めなかった。
獣の魔族はゆっくりと手を伸ばしライトを掴もうとした。
俺はすくい上げるように魔族の手を斬った。空中を回転して、離れた所に手が落ちる。
魔族は悲しそうな表情を浮かべたまま俺を思い切り蹴り上げた。口や肛門から内臓が飛び出てしまうのではないかと思う程につよいちからだった。そして俺は遥か彼方へと飛ばされた。
「隊長ッー!!!!!」
…満天の星空。
肌寒さを感じ取った俺はゆっくりと身体を起こす。
しかし、全身に激痛が走る。
肋骨や背骨に異状がある事はすぐに分かった。
僅かに濡れている臀部は出血であった。やはり飛ばされた際に口と肛門から出血があったようだ。
激痛に耐えながら何とか立ち上がり、ライトとアレクを探す事にした。
暫く歩くと人らしき影が倒れているのが見えた。
一定の速度でゆっくりと近づき、すぐにアレクという事が分かった。
「…アレク…おい、アレク!」
声に反応は無いが、息はあるようだ。身体状況的に深い傷は無い。アレクが一人だけで倒れているという事は、俺と同じような展開だったのだろうと想像出来た。同時に周囲にライトの姿は無い事も明白であった。
「アレクッ!ライトは!ライトはどこだッ!」
俺の怒鳴り声に顰めっ面を向けるアレクの目は少しずつ開いていた。
「…隊長…すいません。」
「ライトは…」
アレクは涙を流しながら「すみません」と繰り返し言い続けていた。
この日から捜索部隊サンライトは、俺とアレクのみとなった。後に再び大きな組織と成り上がったが、副隊長の席は空いたままだ。
副隊長のライトは行方不明となったが、後に魔族となって過去の世界で生きているという噂を耳にした。正直期待は出来なかったが、断る理由は無かった。
そして俺達捜索部隊サンライトは、ライトと獣の魔族を捜索する為、アルミのいる過去へと飛び立った。
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次回もお楽しみに!




