Stage6-2 神秘のベールに包まれて
【カナディアンロッキー バンフ国立公園】
1887年にカナダ初、世界で三番目の国立公園に指定された。観光拠点バンフの街を中心として広がる、カナディアンロッキー観光のメインとなる国立公園。 3,000m級の山々と、エメラルドブルーに輝く湖の絶景は息を飲むほどの美しさで有名だ。
エメラルドブルーに輝く湖には、全員言葉を発さずに眺めていた。綺麗というのは言わずもがな、自然による癒しを堪能している。
しかし、近くに行けば透き通った湖面となる。猛暑だが、湖はしっかりと冷たい。爽やかな風も吹き抜ける。
「…気持ちいいね〜。」
「そだね〜。」
全員がだらしない言葉使いになってしまうほどに、その場は心地が良かった。
無心で山や湖を見ていると少し離れた森の中で何かが動いたように感じた。
「…アルミ〜どしたの〜。」
なんくるは情けない声で俺を気にかけていた。
「今そこに人影があったような…」
すると、突然サン隊長が起き上がる。
「…どこだ!」
気配を感じた方へ指をさすと、サン隊長は走って行った。
俺はなんくるにメグミを頼み、サン隊長を追い掛けた。
遠くだと分からないが、ここの森は意外にも深い。一度見失うと中々見つけられないのだ。
辛うじてサン隊長に追い付くも、サン隊長は硬直して一点を見つめていた。
「…サン隊長?どうしたんですか?」
俺はサン隊長の見ている方向へ目を向けた。そこには、事前に話していた赤いキノコの姿をした女性が立っていた。女性はキノコ柄の帽子を被り、キノコ柄の上下の服を着ていた。ショートヘアで小柄なその女性は、サン隊長と同じように硬直していた。
数分間、謎の沈黙の時間が続いた。
「…あの、サン隊長。」
動揺している。何か予想外の者を見たかのような表情。しかし、それはサン隊長だけではなく謎のキノコの女性も同様だった。
「どうしたって言うんですか?まさか知り合いとか?」
冗談半分で問い掛けた。
「…あぁ。」
サン隊長は一言だけ返した。
この時、このゲームで初めてサン隊長に出会った時の事を思い出した。
ーーーーー
「…よぉ、アルミ。」
捜索部隊の中心に座る大柄で強面の男。
恐る恐る、強面の男へと近づいて行く。
「…リズが出て行ったぞ。」
「知ってる。」
強面の男はゆっくりと立ち上がり俺に近付いて来た。
「…兄貴なら傍で見守ってやれ。これは隊長命令だ。」
どうやら俺自身、捜索部隊に属しているらしい。
これは断ると袋叩きにされる可能性が高い。
「…分かった。」
その場を去ろうとすると、隊長の右腕らしき女性が近付いて来た。
「サン隊長は妹を亡くしている。言葉こそ足りないが、分かってやってくれ。」
ーーーーー
そうだ、アレクさんが言っていた。サン隊長には妹がいると。だがその妹は亡くなっているはず。
俺は再び、サン隊長へ問い詰めた。
「黙っていても分かりません。状況を説明してください。」
「…彼女は…亡くなったはずの妹だ。」
俺の予想は正しかった。
「…お兄…さま?」
サン隊長は理由を聞かずに女性を抱き締めた。
「ごめんッ!ごめんなぁッ!」
一方的な感情に女性は困惑を隠せていなかった。
しかし、女性は微笑んだ。
「…いいよ。」
女性はサン隊長の頭や頬、背を擦る。
「…でも。」
女性の言葉にサン隊長は一度離れた。
女性の白目部分は黒くなり、黒目部分は赤くなっていた。ニヤリと微笑むその表情は、何かを企んでいる表情そのものだった。
「…お兄ちゃんの栄養頂戴♪」
女性は再びサン隊長を強く抱き締め、身体から緑の気体を吸い込んでいた。それに苦しむサン隊長は悲鳴を上げ続けていた。
「おい!やめろっ!」
俺の言葉に女性は手を前に出し、「動くな」と低い声で呟いた。
「…こいつは害虫なの。早く始末しないと。」
俺には女性の言っていることが理解出来なかった。
次回もお楽しみに!




