Stage5-23 悪魔討伐編 燃え尽きる愛
多忙の合間で書いていたので表現が変な箇所があるかもです。
ご了承の上、楽しんで読んでください。
観客から野次が飛び交う中、リズとサスラーは向かい合ったまま動かない。
しかし、お互いに思っている事は同じであった。
「「 付け入る隙が無い…。 」」
やむを得ずリズはサスラーに電撃を放った。
サスラーはそれを身軽に回避した。
回避した隙を狙うも、サスラーは更に回避を重ね続けた。
リズはサスラーの行く方向を予測し、短剣を投げる。しかし、サスラーはそれさえも回避し、短剣を素手で受け止めた。
「雑念が出てきたな。」
サスラーはリズのいない方向へ短剣を投げ、リズの左サイドから殴り掛かった。
リズが回避しようとすると投げた短剣がリズの右足に突き刺さる。
「くうぅッ!!!」
その短剣は熱くなっており、傷口の内側からジリジリと焼けていくのが分かる。
痛みに耐えきれず座り込んでしまうリズにサスラーは猛攻を仕掛ける。
高速で動くサスラーに対応出来ず、上下左右から殴る蹴るを受け続ける。
「…リズ。」
俺が心配しているとなんくるが肩を掴む。
「…信じろ。」
俺となんくるはどんな結果になろうとただ見ている事しか出来ないのだ。
顔面全体が腫れ始め、至る所から流血している。リズと言われなければ、もう誰かも分からないほどに。
「もう勝負ありましたね。」
立ち止まったサスラーにリズが足を掴む。
「…何の真似ですか?」
リズの掴んだ手から再び電気のようなものが光り、それはサスラーの手と足を拘束した。開いていた手と足がくっつき、サスラーはその場に倒れ込んでしまった。
「な、なんだ!?まさかこれは!?」
リズはボロボロの姿のまま何も言わずに立ち上がり、ゆっくりとサスラーに近づく。
「いや、出来るはずない!お前がそんな技を!」
焦っているサスラーを見ても、リズが何をしようとしているのか俺には分からなかった。
リズはサスラーの後頭部を掴み、念じていた。
「おい!やめろって!悪かった!俺の負けでいいから!」
リズは白眼を向いたまま何も発さなかった。次第に二人を囲む様に光の剣が現れる。
「…光剣の監獄。」
「なんでお前にその技が使えるんだッ!?」
「あの技…彼女はアークエンジェルなのか?」
「…いえ。ですが、彼女から微かにアークエンジェルの後継が見えます。恐らく何者かに天使の力を授かったのかと。」
市村とフードの男が話すのを遠目に、俺は何故かリズの姿を懐かしく感じた。
「…私もこの力の事はよく分からない。いつから使えるようになったのかだって分からない。でもこの力の持ち主の記憶が凄く暖かいものだった。そこにはお兄ちゃんもいて、なんくるやさーたー、まくとぅもいて。そして、分かったの。この力が何なのか。」
俺はなんくると目が合った。どうやら俺達は同じ事を考えていたようだ。そして、同時に涙が溢れた。
「頼む頼む頼むッ!!!見逃してくれ!その技だけは死んじまうッ!」
次第に光剣の力は強まり、雷鳴が轟き始めていた。
そして、リズの脳内に継承の瞬間の映像が流れる。
「…そっか。あの時に力を。」
リズはポロポロと涙を流しながら微笑んだ。
「辛かったよね。死ぬと分かってて見ず知らずの私に託したんだもんね。」
「それは違うよ。」
突然脳内に声が響く。
「君は彼の妹。それだけで信用に値する。リズ…本当に巻き込んで申し訳ないと思っているよ。」
「…いいよ。あなたはお兄ちゃんの友達なんでしょ?」
「…友達……あぁ。大切な友達だ。」
「…それを聞ければもう充分だよ。」
リズの脳内で、見覚えのある天使が微笑んだように見えた。
「…God knows.(神のみぞ知る)。」
「やめて!やめて!頼むからぁ!やめろって!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
リズは振り返り、俺の方を見て微笑んだ。
「□□□□。」
何かを呟いた時には、光剣が矛先を向けていた。そして光剣は二人を待つ事なく突き刺さり、会場全体は光で包み込まれた。
徐々に光が消えていくと、二人の姿はステージ上から消えていた。
俺はステージに上がり、二人のいた所へと駆け寄った。
そこにはリズの短剣とライトグリーンの球体が残されていた。手に取るとそれは俺の脳へと入った。
「…!?」
俺の脳内には、リズの見た記憶の映像が流れた。
それはリズのものだけでは無かった。
始まりは天使の世界。そこから始まる壮絶な物語。廃ビルで会った一人の青年。沖縄での闘い。
この光景はユウヤのものだと気づいた。
ユウヤは最後、リズを助けた際に天使の能力の半分を授けた。後継者を残すにはそれしか手が無かったのだ。そんな事をしなければ悪魔に負ける事は無かっただろう。それでもユウヤが後継者を残した理由は何なのかは分からなかった。
次第にユウヤの記憶はリズの記憶に変わった。
リズ本人が天使の力に気付いたのは少し前のようだ。
苦労の一言で片付けては可哀想なほどの壮絶な冒険をしてきたリズの記憶は、あまりにも過酷で重いものであった。
リズはユウヤが残した後継者という意味を理解したのか?
それさえも今では分かり兼ねるが、ユウヤもリズも死を覚悟して闘った事は間違いなかった。
そして、リズが最後振り返った時に俺に言い残した言葉に俺は涙が止まらなかった。
「だいすき。」
次回もお楽しみに!




