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Stage1-4 選ばれし五人と歯車

Stage1-3【悩】と【ミッション】

の続編になります。

一つの歯車が大きい音をたてながらゆっくりと動いている。

ジュンタと名乗るおっさんは険しい表情のままこちらを見つめていた。

おっさんの言う歯車を直すというのはどういう事なのであろうか。

しかし、まずは妹のリズを探さなければいけない。

おっさんに事情を説明し、再会した時に話を聞くと提案した。

「…そうか。」

そう言い、おっさんは立ち去ってしまった。


この街は電気の通っている所も限られている為、夜になると漆黒の闇夜に包み込まれる。

時計というものも無い為、時間は不明だ。

何も見えなくなる前に焚き火をする必要がある。

落ちている木の枝など集めながら足を進めた。


パチパチと火と薪から音が鳴る。

廃ビル街を抜けた俺は、広大に広がる砂漠地帯に突入していた。

夜の砂漠は肌寒い為、焚き火は必須だ。

暗い中で光る砂、そして無数の星に燃え盛る焔。これほど神秘的な光景はあるのだろうか。

あの街もこの強く美しく変わればと願ってしまう。

それに一人で火を見ていると、色々と考え込んでしまう。

妹のリズはどこにいるのだろうか、そもそも砂漠地帯にいるのだろうかなど。

不安が過りながらも薄い藁のマット上で眠りに入った。


どれだけ歩いたのだろうか、先の見えない砂漠地帯を数日間歩み進めている。

途中、サソリの魔物などに襲われたが全て返り討ちにした。

改めてステータスを確認しておこう。

アルミ レベル一八 俊足のソードハンター。

ビルの屋上を出てからレベルも順調に上がっている。

少し遠くからだろうか、刃を弾き擦れるような音が聴こえる。

身を潜めながら音に近付いて行くと、一人の女性が大型の蠍と戦闘中であった。

女性は青の戦闘服を纏い、身軽に攻撃をかわしている。遠目だが双剣使いで、スピードには自身がありそうだ。

しかし、目を細めてよく見るとその女性は金髪である事が分かった。

リズも金髪だが、リズの戦闘服はライトグリーンである。

「硬いッ…私の双剣じゃ攻撃が通らないッ!」

大きめの独り言が聞こえた頃には飛び出していた。

距離はあるが、下りだ。そこまで時間は掛からない。

すると女性は砂で足が縺れ、転倒した。

蠍の毒針攻撃が女性をロックオンしていた。

「だ、誰か…お兄ちゃん…」

「…一刀両断…花吹雪ッ!」

蠍は真っ二つに割れ、グロテスクな光景を隠すかのように桜が舞い散る。

「…よく見たら愛する妹じゃないか。」

やはり双剣使いは妹のリズであった。

青色の戦闘服は、気付けばライトグリーンへと戻っていた。

「…ありがとう。」

余計な会話はせず、兄妹は再会した。


【ミッションクリア リズとの再会】

報酬 中回復ポーション、三千ゴールド

『新たなミッションが発生しました。ミッション リズの情報』


リズの情報とは自動的に進行するのだろうか。

再会しただけでもかなり大きい事を成し遂げた気分だ。

「リズ、これから何処に向かえばいい?お兄ちゃんはお前を追っかけて来ただけなんだが。」

「うん。実はジュンタっていうおじさんを探してるんだけど、中々見つからなくて。」

気まづそうな表情をしているのがバレたのであろうか、リズは察したような表情をしていた。

「まさかとは思うけど…会ったけどバイバイしちゃった系…?」

「…しちゃった系。」

リズの話によるとジュンタのおっさんは中々見つからないで有名だそうだ。結局リズのように世界を変えようとする者の為には、あのおっさんがキーマンになるのだろう。

そんなレアおっさんに大して「また会えたら話聞くよ」ってどの目線で物事を言っているのだろうか。

盛大に詰んだと認めたアルミであった。

「…出来ることならホイル焼きにされたい。」

「何言ってんの?」

一先ずリズとは合流出来た、気長におっさんを探すとしよう。

来た道を戻ればおっさんに会う確率は高いだろう。

リズに事情を説明し、辺りを見渡すも足跡など残っていなかった。

ここは砂漠、風が吹けば足跡は消える。

しかし、下ってきた坂を戻れば何とかなるだろうと思いリズと共に歩み始めた。


体感、来た時と同じ位の時間が経ったように感じるが、未だに砂漠地帯を抜けられずにいた。

既に日も落ちようとしている。

レベルは二五とそれなりに上がったが、リズのレベルは三二と一回り上であった。

兄のくせに妹より弱いなど目も当てられない。

そういえば、リズの戦闘服はどういう仕組みなのであろうか。

「リズの戦闘服はどういうカラクリなんだ?」

「カラクリって…これは色によって今の自分の体力メーターとか何の能力が上がっているかがわかるのよ。」

要するに緑は標準で、あとは信号と同じ原理。赤が一番状態的には危険ということになるらしい。

そして、素早さが上がると青になり、攻撃力が上がると黒になる等の要素もあるとか。

ちなみにこの戦闘服、一着一万ゴールドを超えるらしい。物価高は現実だけにしてもらいたいものだ。

そもそも自分は防具にゴールドを掛けないタイプであり、リズの戦闘服の良さをあまり理解出来ない

「お兄ちゃんこそ、さっきの技は何?あんなの最強技じゃん。」

【一刀両断 花吹雪】

敵を真っ二つに両断する事ができる。防御力に関わらず、通常通りのダメージを与える事ができる。桜の舞う頃、敵は美しく返り咲く。


今持つ技の中ではトップクラスである。

「ふーん、そんなスキルがあるんだ。」

他愛の無い話をしていると、砂漠地帯の入口が見えた。

入口には黒いローブの人物が立っていた。

「あれは…おっさんじゃねぇか。」

リズは足早にその場を立ち去った。


ジュンタのおっさんとは、恐らく十日ぶり位の再開である。

「この砂漠からよく戻ったものだ。」

ジュンタのおっさんはどことなく嬉しそうな表情をしていた。

そして、改めてこの世界と歯車について聞いた。


ーーーーー

世界はあの歯車によって支えられている。

今見えるあの五つの歯車は選ばれし五人の力によって支えられている。

しかし、人々は歯車には気付かないまま生活していた。選ばれし五人も同様であった。

選ばれし五人の【ミッション】を解決する事によって歯車はスムーズに動く。

つまりあの歯車は選ばれし五人の精神状態のようなものだ。

あのボロさを見ると、ほとんどが解決されていないのであろう。

お主に頼みたい事、それは選ばれし五人の魂に入り込んではくれぬか?

お主はそれぞれの選ばれし者として歯車を直し、世界を変えてほしいのだ。

しかし、その五人は全員生きている年代が違う。

簡単に言うと御先祖様だ。

そんな選ばれし者達の魂に入り込むためには…。

ーーーーー


まず年代の移動については【転移魔法陣】と【時間跳躍術】を掛け合わせた魔法陣に入って移動する。

選ばれし五人として人生を進む為には【人魂化】というアイテムを使用する。

【転移魔法陣】

異世界への転移が可能になる。

【時間跳躍術】

時間旅行が可能になる。

【人魂化】

人の魂に入り込み、乗っ取る。その人物として生きていくことが可能。


「改めてお主に頼みたい。行ってくれるか?」

【はい】【いいえ】

この世界に入り込み過ぎてゲームという事を忘れていた。

つまりはここからが始まりという事か。

【はい】

「…うむ、良い返事だ。」

おっさんは【転移魔法陣】を描き、【時間跳躍術】を掛けた。

魔法陣は青く紫色に光り輝いている。

「【人魂化】を渡しておく。向こうに着いたらターゲットに近付いて使うのだ。」

ターゲットは【伊藤三郎】【市村清子】【ユウヤ】の三名との事だ。

【人魂化】を受け取り、魔法陣に向かった。

「お兄ちゃん、本当に行くの?」

リズは心配そうな表情を浮かべている。

「…少しだけ待っていてくれ。リズの望む世界にする為に行ってくるよ。」

リズは何か言いたげな表情をしていたが、それを横切り魔法陣に向かった。

「…おっさん、リズを頼んだ。」

「おっさんではない、ジュンタだ。」


魔法陣と共に稲妻が走り、アルミは姿を消した。

「…お兄ちゃん…気をつけて。」


『 【ミッション 選ばれし五人と歯車 】開始 』

次回

Stage2-1 伊藤三郎

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