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Stage5-19 悪魔討伐編 綺麗な女(め)の棘

お疲れ様ですー!

楽しんで読んで頂けたら嬉しいです!


ピコラは、頚部と四肢を完全に切断されていた。

当然意識はない。闘いの中死んだ事を喜んでいるのか、遺体は笑顔であった。

『第八試合の先鋒戦は、青、アルミの勝利だァ!!!』

再び会場の歓声が湧き上がる。

俺はステージを去ると、なんくるが笑顔でこちらを見ていた。

「また強くなったんだな。」

「…お前程じゃないよ。」

俺はそっとなんくるの背中を押した。


『続いて次鋒戦!前へ!』

「おっしゃあぁぁぁぁッ!」

なんくるの声は会場外にまで響き渡った。

「では、僕が相手をしましょう。」

『次鋒戦!青、なんくる。赤、ウェクサー。試合開始!』

なんくるは腕を組んだままで、ウェクサーは眼鏡をクイッとあげる。

「…ねぇ、あのウェクサーって人どこかで。」

アイネやリズに問い掛けたが、さーたー以外は見覚えがなかった。

「…あんた、最低だな。」

「は?何がだ?」

ウェクサーは溜息を吐く。

「…僕には過去が見える。あなたが村の仲間を見殺しにした過去が。」

なんくるがハッとした時、右の脇からウェクサーが攻撃を仕掛けてきた。

「な!?」

鋭い盗賊ナイフのような物でウェクサーは斬りかかった。

防御に間に合わず右の脇腹を斬られ、出血が止まらない。

なんくるは右の脇腹を押さえながら蹲る。

「…あなたは所詮こんなもんなんですよ。」


スパァンッ!


俺だけじゃない、さーたーやリズも目を疑った。

あのなんくるが手も足も出ずに、首を斬られたのだ。

なんくるの顔がコロコロと転がると同時に、ステージは少しずつ血の海と化していた。


『…な、なんという事でしょう。あまりの早さに、会場も静まり返っております。』


「…なんくる。」

言葉が出なかった。

なんくるが死ぬ事なんて考えた事もなかった。

闘えない事が辛い、こんなに人を憎んだことは無い。

ウェクサー。お前だけは必ず。


「…!?」


なんくるの首の断面がピクピクと動き、徐々に植物の芽のようなものが顔を出した。それは物凄い早さで成長し、茎となり花が咲いた。そして、咲いた花から大きな実の光が宙に浮かんだ。

「なんだこれは!?」

ウェクサーは動揺を隠せず、光に斬り掛かる。しかし、ナイフは何度も光を貫通した。

そして、光は会場全員の目を眩ませた。

全員が同じタイミングで開眼すると、状況が追いつかない程の光景に再び目を疑った。


「…誰だ貴様。」

ウェクサーは空いた口が塞がらない。

なんくるの断面から出た光からは、女性が現れた。

その女性の髪は光り輝く程に美しい桃色の髪、耳は鋭利に立っている。透き通った白い肌は、派手な赤と黄色のドレスに身を包んでいる。

「…我を起こしたのは貴様か。」

ウェクサーは、言葉が詰まった状態で後退りした。

「…ふむ。見た目だけで大した事ないのだな。」

その女性は「ぷッ」と笑いを堪えていた。

それに腹を立てたウェクサーは、遅れながらも盗賊ナイフを投げた。

しかし、勢い良く放たれたナイフは、二本の指で止められた。そして、溜息混じりにウェクサーを睨み付けた。

「…くだらない。その無礼は斬首に値する。」

「お、お前は何なんだ!」

「我は、プルメリア。主の体内に生きる花。」

そう言うとプルメリアは、両手から茨を放出した。その茨は、ウェクサーの身体に巻き付くと同時に棘が皮膚に突き刺さった。

ウェクサーの痛みに耐える声は、叫ぶよりも痛々しかった。

「…何か言い残すことはあるか?」

ウェクサーは唾液を流し涙目状態でプルメリアを見た。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。」

先程までの威圧感が嘘のようで、ウェクサーは怯えた子鹿のような姿だった。

「茨の棘は今、貴様の血管に刺さっている。その血管に種を流している。その種が身体を巡るとどうなると思う。」

ウェクサーがハッとした時、至る所の皮膚から植物の芽が顔を出し始めた。次第に眼や耳からも出血が流れる。

プルメリアは、怯えるウェクサーの耳元に顔を寄せた。

「…素敵な肥料をありがとう。」

体内で得た栄養は植物の成長を促進させ、大きな花を咲かせた。

複数の赤い花には血液が付着していた。しかし、それは美しさを際立たせた。

「…生前よりも美しい。いつか私の故郷の海へ連れて行こう。」

プルメリアは再び光となり、なんくるの身体へと消えていった。そして、なんくるの顔と身体を植物の力で繋いだのだ。

徐々になんくるの意識は戻り、何事も無かったかのようにステージを後にした。


『じ、じ、次鋒戦は、なんくるの勝利だァァァ!』


アナウンサーが仕事を全うする中、会場は静まり返っていた。


「…なんくる、具合はどう?」

さーたーは心配そうに話し掛ける。

すると、なんくるは頭を押さえながら座り込む。

「…頭が痛い。それに俺、あの男をどうやって倒したんだ。」

俺達がなんくるの言葉に驚く中、同時に切断された首の傷跡が消えている事に気が付いた。

しかし、闘いの時間は待ってはくれなかった。

モヤモヤとした感情が残るまま、中堅戦誘導のアナウンスが響き渡った。




次回もお楽しみに!

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