Stage5-16 悪魔討伐編 ありがとうの涙
皆様お疲れ様です!
いつもご愛読ありがとうございます!
「さて、じゃあ東に向かいますか。」
「この村を離れるのか?」
アイネはその場でボロボロの服装から、戦闘装備へと切り替えた。
「ここに残る必要ないでしょ?さっさと悪魔倒して元の世界に戻るのよ。まさか、平和ボケでもしてるの?」
俺は「まさか。」と鼻で笑うように呟いた。
こうして、俺達はアッチ村から旅立った。
村を出ると、少し離れた所から空飛ぶ機械に乗った冒険者がこちらに向かってくるのが見える。
俺達は避けるように道を開けた。
しかし、その機械は俺達の目の前で止まった。中から降りてきたのは、さーたー、なんくる、リズだった。
俺はハッと息を飲んだ。
「ダイス!迎えに来たよ!」
さーたーの言葉にダイスは驚いた表情を見せる。
「…何で。僕はチームを。」
「置き手紙で脱退は出来ないルールだ。辞めるならさーたーに直接伝えろ。」
なんくるからダイスは軽く説教を食らった。
ダイスは戸惑いながら改めてチームを脱退するか考えている。
「…やっぱり辞めたくないです。」
ダイスの言葉にさーたーは微笑みながら近付く。
「そもそも抜けてません。」
そう告げるとダイスは涙を一滴流した。
「そんなことより」という言葉でさーたー達の視線は、俺やアイネの方を向いていた。
「あなたがアイネさん?」
「初めまして。息子がお世話になったみたいで。」
「いえいえ、勝手にお預かりしてしまって申し訳ありません。ところで、悪魔の呪いが掛かっていると伺っていたのですが…。」
アイネの視線は俺に向けられ、全員からの注目を浴びた。
「…彼が呪いを解いてくれた。正確には彼が引き連れているプレシャス本人にだけど。」
その言葉に三人は目を開き、訴えを聞き直していた。
「プレシャス本人って、じゃあ山梨の悪魔城の閉鎖はあなたが?」
その話を聞いた瞬間、三人の目はキラキラと俺に向けていた。
それに気付き、そっと顔をフードで隠す。
しかし、なんくるとリズは勢いよく俺に近付いてきた。
「お前強いんだな!俺と一戦頼む!」
「プレシャスを一人で倒しちゃうなんて凄すぎ!」
俺は頭だけ下げ、そっぽを向いた。
すると、アイネとメグミは呆れたように同時に溜息を吐いた。
「…あんたさぁ、いつまでそうしてるつもり?」
色々と責められたが俺はひたすら黙秘を貫いた。
すると、再び呆れた溜息が耳元まで届いた。
「…言い難いみたいなので代弁しますと、彼の事は皆さんもご存知の方かと。」
三人はアイネの説明にあっけらかんとしていた。
そして、一番に察したのはリズだった。
「…もしかして、お兄ちゃん?」
「なに!?」
リズの言葉に反応したなんくるは無理矢理俺のフードを剥がした。
白髪姿に左眼の周囲は火傷で覆われ、ドラゴンの傷が深く刻まれている。左眼は既に失明しており、右眼のみで生きている状態だ。
そんな落ちぶれた姿を目の当たりにした三人は声も出せないほどに唖然としていた。
「…アルミなのか?」
「…何よこの傷。」
俺はフードを奪い、再び纏い直した。
「…話せば長い。」
「…お兄ちゃん!」
俺が振り返るとリズが飛び込んできた。
「…生きてて良かった。」
「…あぁ。待っててくれてありがとうな。」
俺の言葉にリズは涙を流し続けた。
リズが落ち着いてから俺達は歩き出した。俺やアイネに続き、全員が後を付いて来た。
途中なんくるはユウヤの事を尋ねてきた。
「…ユウヤは死んだ。遺体もない所を見ると天に昇ったんだろう。」
「…そうか。」
再び沈黙するまで時間は掛からなかった。
次第に辺りは暗くなり、我々は大きな岩場の影で一晩を過ごす事とした。
焚き火の音がジリジリと鳴る中、それを中心に囲っている。
全員が交互にチラチラと俺の様子を伺う。
「…分かったよ。何があったか話せばいいんだろ。」
その言葉で全員が姿勢を正す。
「…正直、曖昧な事もある。カバネに敗戦した俺は意識を失った。そこから全く記憶がない。それに、長い間海を彷徨っていた気がする。気が付くとそこは、とある島の浜辺だった。森が広がり、高い岩場に火山があって。まるで白亜紀の世界にでもタイムスリップしたかのような所だった。そこで俺は一人の少年と出会った。」
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「…あの日から僕は君に助けられてばかりだね。」
「…それはこっちの台詞だ。あの日助けて貰わなかったら、間違いなく死んでいた。ありがとう。俺に出来る事があったら言ってくれ。」
「…それじゃあ、近い将来この世界が滅んだとする。その時に僕が困っていたら助けてよ。」
「…なんだよそれ。でも、分かったよ。」
「約束だからな!どんな事を言っても助けろよー?」
「あぁ。」
俺と彼は指切りを交わした。
彼の名はジュンタ。
次回もお楽しみに!




