Stage5-13 悪魔討伐編 謎の旅人
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本日も賑やかな地下酒場。
昼間から酒を飲み交わす冒険者もいれば、依頼ボードと睨めっこをしている冒険者もいる。
はたまた、単独でクエストを受注しようとしているのは僕だけだろうか。
何にしようか迷っていると、隣に見かけない冒険者が立っていた。
その人物は黒のフードを被っていてよく顔が見えないが、手の傷や包帯、使い古した魔法杖と大剣。間違いなく相当な腕の持ち主であった。
「…あの。ここC級なんで、S級なら奥の扉ですよ。」
黒のフードの人物はこちらを睨みつけるような視線で見てきた。
フードの中から見えたのは、白髪で口元を黒い布で覆った顔容であった。
「…あぁ…ありがとう。」
そう一言言い残し、その場を立ち去ってしまった。
「…あの人、凄いなぁ。」
気を取り直して、C級クエストのボードとの睨めっこを再開した。
そして僕はある依頼が目に入った。
【悪魔城までのルート確保】
山梨県に建つ悪魔城までの最短ルートを確保してください。報酬は金貨十枚。
数分間悩んだ結果、このクエストの受注を決めた。
因みにこの世界での通貨について説明しておこう。この世界での通貨単位は今と言う。金貨一枚で一万今、銀貨一枚で千今、銅貨一枚で百今となる。僕はまだお目にかかった事はないが、貴族のみが所持するというプラチナ貨と紙幣というものがある。
プラチナ貨は金貨の上、つまり一枚で十万今となる。
紙幣とは、紙で出来た通貨である。紙幣は一枚百万今である。
つまり今回のクエストは、報酬十万今ということになる。
「こんな美味しい仕事はそうそう無い。何としても食費を稼がねば!」
僕の独り言の癖は、酒場の人達も既に慣れっこだ。一瞬視線を向けるのみで、あとは無視だ。
だが、そんな事は僕にとってはどうでも良かった。
もう湿気たパンと蒸かし芋の生活はごめんだ。
そう意気込んで、僕は酒場を出て行った。
プレシャスの悪魔城まではそう遠くない。徒歩で三十分程の位置に建っている。
しかし、道中は複雑な為、何としても最適ルートを確保したいのが本部の願いなのだろう。
目印を付けながら、地道に記録を繰り返していく。
そして、再度意識が戻る頃には陽は沈もうとしていた。
あれから四時間程経過したようだ。
「よし!出来た!」
適正ルートを記した地図を大事に仕舞う。
そして、四時間以上時間を掛けた甲斐はあったと心で訴えを繰り返した。
帰り道、地面に複数の影が映り込んでいた。
ふと上を見上げると、蝙蝠型のモンスターが空を飛んでいた。
次第にそのモンスターは、僕に近付いてきた。
「城に何の用だ!」
そのモンスターは警戒しながら声を荒らげた。よく見ると腰元には刀を備えている。
「特に用はありません!立派だったので見に来ました!」
全く思ってもいない言葉をペラペラと見繕った。
「…ほぉ、中々良い目をしている。」
勘違いされてしまった僕は、悪魔城に招待されたのだった。
しかし、悪魔城の入口は既に閉鎖されていた。
「…あれ?」
僕が不思議そうにしていると、蝙蝠型のモンスターは語り始めた。
「…プレシャス様は引退された。戻って来る事に期待してこのように待機しているが。」
蝙蝠型のモンスターは半分諦めたような表情をしていた。
しかし、引退という言葉が引っ掛かる。何者かに討伐されたのではないのか。だとすると、夜逃げ?
「何で引退したんですか?」
「…分からない。しかし、黒いフードの男に仲間がやられている。死に際の仲間が教えてくれたよ。その黒いフードの男が攫った可能性も…いや、でもプレシャス様に限ってそんな。」
黒いフードの男と聞いて、酒場で会った男を思い出した。
「…まさかね。」
偶然だと思い込んでいると後ろに何者かの気配を感じた。
振り返ると先程会った黒いフードの男が立っていた。
「…あなたは。」
男はこちらに向かって歩いてくる。そして、魔法杖を蝙蝠型モンスターに向ける。
「…生き残りは始末する。」
「黒いフード…まさか貴様!プレシャス様はどこだ!」
すると、黒いフードの背後から上位悪魔プレシャスが現れた。
「「「プレシャス様ッ!!!」」」
「お前達、すまないにゃ。私はこの男に敗れた。命乞いの末、着いて行くことに決めたのにゃ。」
蝙蝠型のモンスター達は唖然としていた。
「だからもう私の事は気にせず、自由に生きると良いにゃ。」
先程まで慕っていた蝙蝠型モンスター達の敬意は怒りへと変化していた。
「…貴方に仕えて数百年。こんな屈辱的な思いをさせられるとは思いませんでした。くだらない余生を自由に生きるくらいなら、貴方に殺された方がマシだ。」
しかし、プレシャスに殺意はない。むしろ興味が無いといった様子だった。プレシャスの目線は常に黒いフードの男であった。
お互い無駄な会話はせず、すぐに戦闘態勢に入った。決着は直ぐにつき、蝙蝠型モンスター達は黒いフードの男に斬られて行った。
ボロボロの大剣を使いこなす様はまるで歴戦の勇士であった。どうやら酒場での予想は当たっていたようだ。
僕は、黒いフードの男にゆっくりと近付く。
「…あの、ありがとうございました。」
「礼を言われるようなことはしていない。」
黒いフードの男は、目線も合わせずに立ち去ろうとした。
「待ってください!お名前を、お名前を教えてくれませんか!」
「…必要ない。お前はリズ達と共に悪魔討伐を目指せ。」
「…じゃあせめて…母を…アイネ・エッジ・キールを助けてくれませんか。」
黒いフードの男は立ち止まってこちらを見返した。目元しか見えないが、その表情は驚いているという事だけは分かった。
黒いフードの男は僕に近付き、強く肩を掴んだ。
「アイネは、生きているんだな!」
「…え?あ、はい。…母の知り合いでしょうか?」
男は安心した表情で一つ悩みが晴れたような様子だった。
「…古い友人だ。アイネの息子よ、アイネに何があった。」
僕はこれまでの経緯について全てを話した。
「…プレシャス。貴様を殺さないとその呪いとやらは解けないのか?」
「ま、待つにゃ!現場に行けば解除できるにゃ!」
彼女が本当に悪魔四天王のプレシャスなのだろうか。男に従えている姿は目を疑ってしまう。
「…アイネの息子よ。案内しろ、出発は明日の早朝だ。」
「…わかりました。」
そう言うと黒いフードの男はその場を立ち去って行った。
僕は呆然としながら酒場に戻り、悪魔城までの最適ルートを提出した。
同時にプレシャスの悪魔城はもぬけの殻だった事も報告した。
そして、今回のクエストで僕は冒険者ランクBへ上がった。
報酬の金貨十枚を受け取り、さーたーさん宛に手紙を書いた。その手紙をマスターに預けた後、僕はその酒場を去った。
そして、僕は黒いフードの男に全てを委ねる事を決意した。
翌日、昼過ぎにマスターからさーたーさんへ手紙が渡った。
『さーたーさん、なんくるさん、リズさん。急な手紙をお許しください。僕は一度故郷へ帰る事にしました。理由としましては、単独の依頼を受けた際、一人の男と出会いました。その男はプレシャスを従わせ、悪魔城を閉鎖させていました。更に、その男は母の友人だったのです。僕の話をした所、母の呪いを解除してくれるという申し出があり、このような形での挨拶になってしまいました。この手紙を読んでいる頃には僕はもう旅立っている事でしょう。憧れの皆さんと少しだけチームを組めた事、誇りに思います。短い期間でしたがお世話になりました。謝罪と同時に感謝を申し上げます。今後ともご武運を。 ダイス』
「黒いフードの男…アイネと知り合い…何か引っ掛かるな。」
「…そうね。リズに話してみましょう。どうしようもない新米も追わないと行けない事だしね。」
さーたーとなんくるは顔を見合せてリズの元へと向かった。
リズと合流し、さーたーから詳細を説明した。
「…それって。」
「行ってみる価値あると思うの。」
さーたーの言葉でリズは身支度を始めた。
「場所はわかるのか?」
「…ここから少し離れた東にある小さな村よ。前に少しダイスから聞いておいたの。」
「そんな事までしてたのかよ。」
「仲間だもの。こういう時助けに行けるでしょ?」
こうして三人は、旅に出た。
ダイスを連れ戻し、黒いフードの男の正体を突き止める旅に。
次回もお楽しみに〜!




