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Stage1-3 【ミッション】

Stage1-2 クソゲーじゃねぇかッ!

の続編になります。


心を落ち着かせ話を再開するも、妹らしき金髪美女は未だ困惑した表情を見せる。

「すまない、こんな状況で少々取り乱してしまったようだ。」

苦し紛れの言い訳を挟んでみる。

金髪美女妹は徐々に落ち着きを取り戻した。

そのまま屋上の柵に近づき街を見下ろす。

崩壊した街を眺めて溜息を零した。

「…この街ももう終わったのね。」

絶望というよりは諦めに近いのだろうか。

この街に何があったのかがわからない為、意を決して問いかけた。

「一体この街に何があったんだ?」

「…本当に何も覚えてないの?」

「…すまない。」

まだ名前は不明なので金髪美女妹で押し通すが、彼女は「しょうがないわね」と空を見つめながら語り始めた。

「良い?あなたの名前はアルミ、私のお兄ちゃん!そして私は妹のリズ!」

この金髪美女妹はリズという名前らしい。

リズは街が崩壊するまで何があったのか経緯を全て語ってくれた。


ーーーーー

二一二一年 七月 第五東京ネオンシティ

辺り一面ネオンに包まれている大都会。

何百年と続いている大企業の広告が流れる中、街は人混みで溢れかえっている。

約三十年前、大気汚染問題改善の為、全国の工場の閉鎖。そして、車は全て廃棄された。

新たに工場の建設、車の開発がなされたが電気のみで回るようになった。

これが現実的になり、日本政府はガスの使用を禁止とした。

以降、大気汚染問題は解決された。

しかし、徐々に物価や電気代の値上がり問題が浮上した。

日本は国外との貿易に力を入れていたが、それは戦争への引き金となってしまった。

日本は一ヶ国だけでなく二カ国から攻め込まれた。

幸い日本の陸海空軍は全国でもトップクラスであった為、いくらでも太刀打ちできた。

日本は戦争に勝利した。

しかし、街は跡形もなく崩壊した。

戦争による被害はそれだけでなく、何千万人もの死者や怪我人が続出した。

医療による設備や道具もない為、その怪我人の命もやがて尽きた。

残った生存者は僅かに通っている電気や水を頼りに生活している。

崩壊後、辛うじて食べれる物が落ちていればそれを食べ、足りなければ魔物の討伐をしている。

今ではその魔物でさえ力をつけてきている。

以降、人々は生きていく事さえ困難な状況なのだ。


ーーーーー


アルミとリズの間には息が詰まるような雰囲気が広がっていた。

人間が生きていくために必要な衣・食・住は充分とは言えない状況なのである。

そんな中、リズは世界を変える旅に出ると言うのだ。

それはゴールの見えない旅であり、問題が解決する可能性も低いと言えよう。

「…宛はあるのか?」

当然のように彼女は首を横に振った。

出発前に挨拶に来たらしいが、実の兄が記憶喪失状態で困惑したとの事だ。

恐らくこのゲーム、ここでリズに付いて行くという選択が基本ルートであろう。


「…じゃあ、行くね。」

【リズをとめますか?】

【止める】【止めない】


予想通り選択肢が出た。

昔のゲームであれば【止めない】を選択しても、物語は進行しないようになっているだろう。

では、このゲームはどうなのであろうか。


【止めない】


「お兄ちゃん、止めないでね。私の気持ちは変わらないから。いつかまた会えたら、その時は抱きしめてね。」

そう言って彼女は去って行った。


『ミッション発生、リズの悩みを解決せよ。そして、この世界の【ミッション】について情報を集めよ。』


恐らくリズを引き止めていればこの【ミッション】というのは発生しなかったのであろう。

この世界の【ミッション】、それを解明するのはかなり大変そうだ。

「一先ず、リズを追いかけよう。」

考える事は色々あるが、まずはあの淋しげな妹の背中を追うこととした。


ビルは十階建てでエレベーターは使用できない。

階段を降りて行くと各階には既に生存者が生活している。

すれ違う人々と目が合う事はない。

一階フロアには捜索部隊が待機していた。

「…よぉ、アルミ。」

捜索部隊の中心に大柄の男が座っていた。目の下にクマがあり、髭の剃り残しが目立つ。

そこへ恐る恐る近づいた。

「…リズが出て行ったぞ。」

「知ってる。」

強面の男はゆっくりと立ち上がり近付いて来た。

「…兄貴なら傍で見守ってやれ。これは隊長命令だ。」

どうやら俺自身、捜索部隊に属しているらしい。

これは断ると袋叩きにされる可能性が高い。

「…分かった。」

その場を去ろうとすると、隊長の右腕らしき女性が近付いて来た。

「サン隊長は妹を亡くしている。言葉こそ足りないが、分かってやってくれ。」

あの隊長はサンという名前らしい。そしてこの右腕らしき女性は、胸元に【一番隊隊長 アレク】と書かれていた。

上司の気持ちを汲むというのは嫌いだが今はやむを得ない。

「サン隊長、一番隊隊長アレク様。我が妹の為、ご配慮感謝致します。必ず妹と帰還する事をお約束します。」

サン隊長とアレクは微笑んでいた。

外を出るとビルの壁に木の板が掛けてあった。

【捜索部隊 サンライト アジト】と書かれていた。

妹のリズを探す為、崩壊した街の中へと歩き出した。


しばらく歩くと、黒いローブを羽織った人物が道の真ん中で座っていた。

ゆっくりと近付くもこちらを見向きもしない。

「あんた、大丈夫か?」

「…。」

返事は無い。ただの屍であろうか。

「歯車が壊れ始めた。選ばれし五人の歯車が…。」

突然涙ぐんだように話し始めた。

歯車とは何なのか。そして、選ばれし五人とは。

「おっさん、この世界について何か知ってるのか?」

黒いローブのおっさんは立ち上がり、手で着いて来いと合図をした。

五分程着いていくとそこは崩壊した岸壁だった。

沈没した船も何隻かそのままの状態となっている。

黒いローブのおっさんは空に指をさした。

「なんだよ、あれ…」

「あれが、選ばれし五人の歯車。」

黄土色の薄汚い空から五つの歯車が見えている。

しかし、歯車はボロボロで辛うじて動いているような状態だった。

「選ばれし者よ、歯車を直してくれんか?」

黒いローブのフードが風で捲れ、おっさんの顔が露わになった。

おっさんは綺麗な白髪を持ち、左額には深い傷跡がある。

「…おっさん、その傷。」

「おっさんではない。今年九六のジュンタだ。」

九十六歳とは思えない程の見た目と饒舌さだった。

そして目の前には『【ミッション】発生、選ばれし五人と歯車』と表示された。

次回

Stage1-4 選ばれし五人と歯車

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