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今世は幸せでありますように!  作者: ゆる


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Stage5-9 悪魔討伐編 それぞれの戦い

いつもご愛読ありがとうございます!

今世は幸せでありますように!の続編、お待たせいたしました!

中々時間を設けれず、今回は6000字と多めになってしまいました。

ゆっくり時間をかけて読んでもらえると嬉しいです^^


悪魔城 四十五階


悪魔城の最上階は恐らく五十階だ。

つまり、あと五回も上れば親玉のカバネが待ち構えているという事だ。

しかし、三十階でそれなりに強い悪魔に出くわしている事を考えると、ここから先は簡単には進めなさそうだ。

そう思いながら四十五階フロアの扉を開ける。


すると、四十五階フロアは部屋のようになっていた。

紫の絨毯にカーテン、松明ではなくガラスで出来たランプが吊るされている。

「うわっマジ!?君たちディープ倒したの?」

ショートカットの金髪悪魔が小さい羽で飛びながら近付いてくる。

そして全員が警戒態勢をとる。

「うわっ待って待って!不意打ちとか狙ってないから!…ディープが倒されたとなると、私に勝ち目は無いと思うし。」

金髪悪魔は腕を組みながら何か悩んでいる様子だった。

暫く悩み続けると、「よし!」と聴こえた。

「ここ通っていいよ!」

全員開いた口が塞がらなかった。

「いや、ぶっちゃけ厳しいと思うのよね。誰と闘うか分からないしね。多分私が勝てるとしたらそこのライトグリーンの娘くらいなのよ。」

金髪悪魔が指さしたのは、リズであった。

それを聞いたリズの額には怒りマークが浮いて出ていた。

「き、聞き捨てならないわね。誰なら勝てるって?」

「だから君だってば。相性とかレベル的にも私が有利なのは貴方だけ。」

リズの身体から炎が出現し、目つきも悪くなった。

「皆さん、先に行ってください。この女は私が潰す!」

「へぇ〜。」


俺はリズの肩に手を置く。

「ちょっと待てよ。折角通してくれるのになんでわざわざ。」

「あのね、お兄ちゃん。売られた喧嘩は買う主義なの。それが例え負け戦だとしてもね。」

リズは俺の手を払い、双剣を回転させて戦闘態勢に入った。

「私、お兄ちゃんの妹だよ?こんな所で負けないって!」

「…わかった。絶対上がってこいよ!」


俺達はリズを置いて金髪悪魔の横を通り過ぎて階段を上がった。


「あんた馬鹿なの?そんなに早く死にたかった?」

金髪悪魔は、呆れた顔でリズを見ていた。

「スピクタルッ!バイアップッ!」

バイアップ・・・攻撃力アップ魔法

スピタクル・・・瞬発、スピードアップ魔法

リズのライトグリーンの戦闘服は、半身ずつ赤と青に変わった。次第にそれは、紫一色となる。

「私は双剣使いのスピードスター!この異名も伊達じゃないわよ!」

「フッ…面白い。」

金髪悪魔の身体や羽根が大きくなり、次第にライトブルーに変色した。

ライトブルーの身体を隠すように、鋼の鎧を装備していた。

「鎧の上位悪魔、ダリア。カバネ様に仕える二番手の私を倒せるかしら?」


リズVSダリア 開戦。



悪魔城 四十六階

なんくる、さーたー、そして俺は、四十七階へと足を進めていた。

その間四十六階では、既にまくとぅが戦闘を開始していた。

「焔の(フレイム・バタフライ)!」

まくとぅの周りに約二十頭程の蝶が出現する。その蝶は羽を広げると三十センチ程の大きさで、炎を纏っている。

「世界一大きな蝶をご存知?焔の(フレイム・バタフライ)は、アレクサンドラトリバネアゲハをモデルに作られています。この大きさの蝶が炎を纏っていたら、簡単に触れる事はできません。」

まくとぅが流暢に話す方向には、上位悪魔のウォンカが立っている。羽はなく、額に二本の角が生えている。身体は悪魔らしくえんじ色で、筋肉質であった。

「フンッ!上位悪魔のウォンカ様の相手にまさかお前のような虫女が残るとは。あの赤髪の男と殺り合いたかったが…まあ良い。」

ウォンカの身体は徐々に美しい青色に変わっていく。

手指は四本、足指は五本。そして、頬の辺りには膨らんだり萎んだりする袋があった。身体からは紫色の体液が流れ、一滴床に落ちると蒸発していた。

「猛毒蛙の強さを見せてやるぜ。」

「…猛毒?」

「そうともよ!モウドクフキヤガエルって知ってるかぁ?バトラコトキシンっていう強い毒性を持っててよ、触れただけで死に至るんだぜぇ!」

ウォンカは蛙のように高く飛び上がり、まくとぅに向かって行った。

「死ねやあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「行きなさい!焔の(フレイム・バタフライ)!」

焔の蝶は、ウォンカに体当たりするも溶けて消えてしまった。

「…なに!?」

まくとぅは大きく後方に下がり、ウォンカから距離を取った。

地面に着地したウォンカは、直進するように前にいるまくとぅに飛びかかった。

「触れちまえばてめぇは終わりだっ!」


ウォンカの体当たりで煙が舞い上がる。

この煙は建物の破損ではなく、猛毒による蒸発であった。


まくとぅVSウォンカ 開戦!



悪魔城 四十七階

扉を開けると四十七階フロアには誰も居なかった。

所々に椅子や棺桶などは置いてあるが、他には何も無かった。

「何で誰もいないのかしら。」

「…俺が知るわけないだろ。」

さーたーとなんくるが話しているのを聞いて、俺は「あっ!」と声を出していた。

二人は少々驚いた様子でこちらを見つめる。

「ここ、ディープの部屋だよ。ユウヤと闘ってるからこの部屋にいないんだ。」

「なるほどな、じゃあさっさと四十八階に行こうぜ。」

俺とさーたーは頷き、三人は四十八階へと向かった。



カキンッ!

カキーンッッ!

金属音が一定のリズムで四十五階フロアに響き渡っていた。

紫色の戦闘服を纏ったリズは既に傷だらけで息を切らしている。

「ふふっ、どう?貫けそうかしら?」

鎧の上位悪魔ダリアは、余裕の笑みを浮かべていた。

「鋼の渦!」

鋼のように硬い渦がリズを襲う。

なんとか凌ぐも体力はかなり削られている。

反対にダリアは傷一つ付いていない。

リズは双剣使いとしてスピードに長けているが、その分攻撃力や防御力はかなり劣ってしまう。

小技やテクニックは一級品のリズも相手によっては無力と化す。それ程この世界では相性が重要視される。

「…また私、やっちゃったんだ。相手が悪いって分かってたのになぁ。」

「今更気づいても遅いですよ。ここまで来て見逃すなんて事はありませんからね。」

リズの戦闘服はライトグリーンへと戻り、リズは二つの短剣を懐に閉まった。

「…あなた何をしているの?」

「このままじゃ、私は負けちゃうからね。」

左手を上を向けて開き、握り締めた右手を上に乗せる。

すると、両手全体が光り輝き二人を包み込んだ。

光から出てきたリズは背中に薄い水色の羽根が生え、両耳が鋭利に尖っていた。

「もう誰も、私を止められない!」

「ふーん、興味深い。」

リズは高速でフロア内を飛び回った。

「この私が見えないだと!?」

高速移動によって出来た残像がダリアを囲んでいる。

消えかかってもまた新たにリズの残像が浮かび上がる。

「なんで!?追いつけない!」

ダリアはリズの進化に驚く事しか出来なかった。

リズは空中で止まると、至る所に光る石のようなものが置いていた。

その石は特定の技を使用する時に役立つ魔石というものだった。

「サージタリアースッ!」

空中の魔石が輝き、全てを光の線が繋いだ。

それはまるで日本で言う射手座のようだった。

「半人半馬…ケイローン!?」

ケイローンとは、ギリシア神話に登場するケンタウロス属の賢者である。射手座のモデルもケイローンと言われている。

そして、矢の先端に光が集まり、ダリアの左胸を貫通させた。

「グハァッ!」

ダリアは膝を着いて身動きが取れなくなっていた。

そこへリズがゆっくりと舞い降りる。

「やっぱり。星座の力も弱点なんですね。」

「ハハッ…知らなかったのかぁ。ヤバいなあ、動けそうにないや。まだまだ気持ちは闘えるのに…。」

悪魔には天使や精霊の技が弱点のようだ。

たった一度、胸へ技を貫通させただけで身動きを封じたのだ。

「はぁ…通っていいよ。私の負け。」

リズは不満そうな表情をしていた。

「ちょっと何が不満なの!?こんな状態で勝てるわけないでしょ!…安心しなさい、治ったら襲うとかないから。」

「あなた、なんでそんな聞き分けが良いの?悪魔はほとんどが自我を貫き通すでしょ?」

ダリアは左胸を抑えながら静かに話した。

「まあ、色んな悪魔がいるんだ。」


今回私は運が良かっただけだ。

【サージタリアース】は、今日が初披露。しかも、未完成であった。失敗の可能性が高かったが何とかなった。

あれ?ポケットの中に何か…

リズのポケットの中からは、守と記載された白いお守りが出てきた。

それはただのお守りではなく、開運効果があるのだ。

「…ありがと。お兄ちゃん。」

リズは傷口を抑えながら上の階へと向かった。


リズVSダリア 勝者リズ



蒸発による煙の中から出てきたのは、ウォンカだった。

ウォンカはその場を離れ、次第に蛙の姿から悪魔へと戻っていた。

「…クソ。あいつはヤバい。俺を道ずれにしようとしやがった。」

「…蛙を解いて良かったのですか?」

ウォンカは右の首筋から激痛が走った。

背後からサソリの姿をしたまくとぅが現れ、サソリの毒針がウォンカの首に刺さっていた。その毒針は、頸動脈の位置へ正確に刺されていた。

ウォンカは首を抑えて痙攣を始める。

「…てめぇ。」

「本当に上位悪魔なのですか?詰めが甘いですよ。」

まくとぅはサソリの装備を解除し、元の姿へ戻った。

「貴方のような悪魔は、虐殺がお似合い。」

まくとぅは呪文を唱え、まくとぅの周りの床は黒く染った。

黒い模様は波を打ち、少しずつウォンカのいる方向へゆっくり進んでいた。

「…なんだこれは。」

「虐殺者、軍隊アリよ!」

軍隊アリはウォンカの足から少しずつ上半身へと纏っていった。

ウォンカは身体の所々から痛みが生じ苦しんでいた。

軍隊アリはウォンカの皮膚を噛みちぎろうとしているのだ。

ウォンカはその場で悶え苦しみ、最終的には全身が黒く染った。

「いずれお前は骨のみとなるだろう。」


「…そいつはどうかな。」

黒く染ったウォンカは再び蛙へと姿を変えていた。

軍隊アリの集団の中からウォンカの舌が伸び、まくとぅの身体へと巻き付く。

そして、ウォンカはまくとぅを自らの元へと引きずり込んだ。

一瞬の事であった、まくとぅは蛙の力に対抗できなかった。

毒蛙の皮膚に触れてしまったまくとぅは、全身が蒸発を始めていた。

悲痛の叫びが響く中、まくとぅは軍隊アリを増殖させていた。

そして、無数の軍隊アリへ新たな命令を下した。

「軍隊アリ達よ!我、まくとぅと共にウォンカを包み込むのだ!」

軍隊アリは躊躇せずにまくとぅとウォンカへ襲いかかった。

同時にまくとぅは、ウォンカが逃げないよう自身の身体と鎖で結んだ。そして、押さえつけられた身体は再度蒸発を進行させた。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「お前…まさかッ!」

まくとぅはニヤリと笑った時、二人は軍隊アリに包み込まれていた。


「まくとぅッ!」

四十五階から上がってきたリズが軍隊アリに包まれている塊に近付く。

「まくとぅ!ダメ!そのままじゃ死んじゃうよ!」


リズか…。

すまない…私にはもう…。


リズの声が届く事はなかった。

リズの目の前に一本、二本…と二人の骨の姿が表した。

リズの泣き声は、四十六階にのみ響き渡っていた。


まくとぅVSウォンカ

両者道連れ行為により、引き分けで幕を閉じた。



一方その頃、四十九階では…。

「四十八階にも誰もいねぇと思ったら、てめぇらは一体何やってんだ!」

年齢十歳前半程だろうか、男女の悪魔がトランプをしていた。

「あー!やっと来た!遅いよぉ!」

男の子の悪魔がなんくるとさーたーの手を引く。

「人数足りないんだから早くしてよぉ!」

二人は唖然としたままトランプに参戦する事となった。

「よしっ!ババ抜きやろう!…あ、僕?下位悪魔のカイト!よろしく!」

「…あ、あの。初めまして。下位悪魔のカリナです。」

敵意の無い二人を見て、なんくるやさーたーは開いた口が塞がらなかった。

そして、カイトは放置されたアルミを見て、

「あ、ごめん!このトランプ四人用なんだっ!」

と口を尖らせて訴えた。

「…ちょっと、カイト。ご、ごめんなさい!悪気は無いんです。」

俺は全員を無視して最上階へと向かったのだった。


「まったく…。で?なんでお前達は俺達に敵意がないんだ?」

カイトとカリナは目を見合わせた。

「…別に僕達、世界征服なんて興味なかったんだ。むしろ人間達の生活に憧れていたくらいだよ。」

「…市村清子様の命令は絶対。市村様に従順なカバネ様の傘下であれば、従う事は必然でした。」

「…それをカバネ様に話したら。」


ーーーーー

半年前

カバネはカイトの顔面を思い切り殴る。

殴られたカイトは悔し涙を流し、立ち上がれない程のダメージを負った。

「人間になりたいだと?笑わせるな!貴様は誰の傘下にいるのだ?」

「…カ、カバネ…様です。」

苦しみながらも返事をするカイト。でなければ、更に負傷することになりかねないからだ。

「わかっておるならふざけた事を吐かすな。直に生き残りの人間どもが攻めてくるであろう。準備はしておけ。」

「…はい。」

ーーーーー


カイトは半年前の出来事をなんくるとさーたーに話した。

「…カバネ。絶対に許さん。」

なんくるは立ち上がって最上階の扉へ向かった。

「ちょっと!どこ行くの!」

「…てめぇの親玉ぶっ倒すんだよ。そしたら、お前らも人間と生活すればいい。」

さーたーは微笑んでなんくると共に向かおうとした。

「…無理だよ。カバネ様は強いんだ。」

カイトが弱音を吐き、カリナも何も言えずにいた。

「大丈夫だ。俺も、俺の仲間もそれ以上に強いからよ。」

「私たちに任せて!」

なんくるとさーたーは、カイトとカリナに笑顔で答えた。そして、最上階へと向かった。


最上階の扉を開けると、フロアの中央でアルミが倒れていた。

「アルミッ!」

なんくるとさーたーが近付くと周囲黒い炎に囲まれた。

「…黒い炎。まさか!?」

「…さーたー?黒い炎がどうかしたのか?」

「…黒い炎は魔界の炎なの。つまり、カバネは魔界の炎を操る者。」

なんくるはさーたーが何を言いたいのかよく分からなかった。


「その娘はよく分かってるようじゃの。」

黒い炎の中からカバネが現れた。

「…カバネッ!!!」

「近頃の赤い虫はうるさいのぉ。発情期かの?わらわが相手をしてやっても良いぞ?」

カバネは薄い布を捲り、胸や尻を見せつける。

それになんくるは動揺を隠せず、さーたーの魔法の杖で思い切り叩かれた。

「カバネッ!あなたは魔界からの帰還者なの?」

「フフッ、そうじゃ。わらわは魔界から生き延びた悪魔。今はこの地で低迷してるがのぉ、元々は市村様の右腕を務めておったのじゃ。」


アルミの意識はなく、なんくるも身動きが取れない。

この状況でさーたーには何か考えがあるようだった。


「ねぇ、カバネ。私と契約しない?」

「…ほぉ。」

「お前は何を言ってるんだ!」


さーたーの持ち出した契約とは何なのか。

この時のアルミとなんくるは知る由もなかった。


次回

Stage5-10 悪魔討伐編 本当の主人公

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