Stage5-5 悪魔討伐編 ウージの森
いつもご愛読ありがとうございます!
アルミ、ユウヤ、なんくるの旅路をお楽しみください!
最後に出てくる女の子とは…
「…その一年後の今日、お前達二人が現れた。結局一年経っても何も変わっちゃいない。だから俺は、でぃきやー様を見習って…」
次の瞬間、ユウヤがなんくるを殴った。
「…痛ってぇ…何すんだ。」
「馬鹿は一発殴らないと目を覚ましませんから。」
なんくるは勢い良く立ち上がり、ユウヤの胸ぐらを掴んだ。
ユウヤの小さい身体は、なんくるの力によって軽々持ち上げられた。
「お前に俺の何がわかる。俺がどんな思いでこの一年を過ごして来たと思ってる。」
「知りませんよそんな事。」
ユウヤは冷酷な目つきで、なんくるを見下ろしていた。
「でぃきやー様の教えは、一年後に生贄になる事なんですか?違うでしょ。でぃきやー様は最後の希望であるあなたに賭けたんですよ?そんな事も分からないで何がどんな一年を過ごしたと思ってるだ。馬鹿にするのもいい加減にしろッ!」
普段ニコニコしているユウヤがここまで怒りを露わにしたのは初めてだった。
なんくるはそっとユウヤの胸ぐらを離した。
「…もう悪魔に従うのは止めようぜ。俺達も手伝うから、琉球村の平和を取り戻してやろうぜ?」
俺は涙を流すなんくるに手を差し伸べた。
「このチームならいけますよ。イケイケです。」
ユウヤも手を差し伸べた。
なんくるは大きな手のひらで目元を押さえながら無言で頷いたのだった。
レベル99 天使騎士(翼の折れたエンジェル) ユウヤ
レベル99 武闘家(ナックル使い)なんくる
レベル95 サイキッカー(他には何もなし)アルミ
改めてこう見ると俺ってなんかしょぼくね?
超能力を上手く使ってるだけで、武術も魔術も何も使えないのだ。
正直、ユウヤのお陰でここまでレベルが上がったと言っても過言では無い。
あの、有名なゲーム、チネモンの学習能力マシンを持たせたみたいなものだ。
情けないったらありゃしない。
一先ず、足でまといにだけはならないようにしよう。
俺達は儀式の祭殿で焚き火を囲んでいる。
串に大蛇の肉を刺して調理している所だ。
「さて、これからどうする?…泣んくる(笑)」
「泣んくるじゃねぇ!なんくるだッ!誤魔化せると思うんじゃねぇッ!」
またこの二人の絡みが見られて何故か少し嬉しい。
三人は大蛇の肉を頬張る。
「「「う…う…うんめぇ〜〜〜!!!!!」」」
なんということでしょう、意外にも美味ではありませんか。例えると蛇肉は鶏肉に近い味だ。淡白で所々しっかりとした脂も味わえる。その上変なクセは無く、新鮮な脂の乗った魚を食べたかのような感覚だ。
ついでに言うと、闘いの後にこの肉を食べると、細胞に染み渡るようで意識が飛びそうになる。それだけ美味いという事だ。
三人はそのまま食事に夢中となり、大蛇の肉を調理し食べ続けるのであった。
三十分後…。
大蛇の中心辺りを切って調理していたが、一割も食していない。
「だはぁ〜!食った食った!」
三人は満足そうに横たわった。
綺麗な星空を見上げていると…
「…明日村の皆に謝るよ。生贄にならなかった責任として、俺は悪魔討伐へ行く。」
二人はなんくるの方を向いて優しく微笑んだ。
「…じゃあいよいよ悪魔城に殴り込みですか。」
俺は首をパキパキと鳴らしながら起き上がる。
「その前に、ウージの森があるぜ。」
なんくるの言うウージの森とは、サトウキビ畑の事である。
ざわわざわざわざわざわわわわわ…である。
「ウージの森には何かあるんですか?」
ユウヤはなんくるに事前確認をする。
「あぁ、昔ウージっていう村人がサトウキビ畑を管理していてな。気付けばそこに住むようになって、サトウキビ畑イコールウージの森ってなったんだ。」
(※この話はフィクションです。)
「今はその森には誰も住んでいないんですか?」
ユウヤの質問になんくるは返事を渋る。
「…あまり言いたかないが、今は俺の妹が。」
俺とユウヤは、なんくるの妹の顔を想像した。
顔は…体型は…と想像していくとどうしても厳つくなってしまう。
なんくるは胸ポケットから一枚のボロボロ写真を取り出した。
俺とユウヤは写真を見て絶句した。
写真の女性は収穫かごを担いでいる。
頬には土の痕も見られるが、桃色の髪色に透き通るような白い肌。
両耳には桃色のイヤリングをつけていて、その上綺麗な橙のパッチリとした瞳。
はっきり言おう、一つ一つのパーツに欠点がない。
体型は痩せ型だが、出るとこはしっかり出ている。
控えめに言って超美人である。
しかし、何故なんくるは妹の存在を隠そうとしていたのだろうか。
「…。」
「えっと、なんかごめん。」
俺は謝った。もしかして二年前の地割れで…と思ったのだ。
「ん?あ、いや生きてるぜ?」
「じゃあなんなんだよ。」
「…まあ、もし遭遇したら説明するよ。そんなことよりさ…」
なんくるは言いたくなさそうな様子で話を逸らした。
「よく見たら悪魔城って意外と遠いんだな。パッと見たらあるから近いものだと。徒歩およそ三十分って…。」
俺はチラシのような紙に描かれた悪魔城のパンフレットを見ていた。
悪魔城設立キャンペーンで、村人に近辺の地図をくれたとか。
そこが親切なら悪魔城設立しなくても良かったのでは?
悪魔が何を気使っとんねん。
思う所はあるが、ユウヤは出発を心待ちにしていた。
理由を問うと「飽きてきた」との事だった。
そんなユウヤの頬引っぱたいて朝を待った。
翌日 朝八時頃。
目を覚ますとなんくるの姿はなかった。
村に行くとなんくるは村人達と普段通り話していた。
どうやら村人達もわかってくれたようだ。
それもそうだ、あんな理不尽な生贄を差し出さなければいけないなんて。
悪魔は異常だ。
だが、村人達を苦しめる大蛇はもういない。
あとは、あの悪魔城を潰すだけだ。
「よぉ、アルミ!早いな!」
「おはようなんくる。上手くいったんだな。」
なんくるは笑顔でグッドポーズを取る。
「むしろ生贄にならなくて良かったってさ。でぃきやー様の件もあったし、皆俺を家族みたいに思ってくれてる。今は俺、この村を絶対守りたい。」
「協力するよ。」
二人は笑顔で拳を合わせあった。
それから四時間後の正午…
「…申し訳ありませんでした。」
寝坊したユウヤが寝癖だらけの状態で起きてきた。
更に一時間後…
「じゃあ、行きましょうか!」
俺となんくるは呆れていた。
「昼過ぎに悪魔城行ってどうするんだよ。遠足じゃねぇんだぞ。」
「そうだぞユウヤ、悪魔は早朝に弱体化するんだから。」
なんくる、俺の順でユウヤに正論をぶつける。
ユウヤは申し訳なさそうに涙目でプルプル震え出した。
「ごめぇーんなさーいってぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
村人達に見送られながら、俺達三人は悪魔城へと向かった。
ユウヤはルンルン気分で少し離れて先頭を歩いていた。
悪魔城の前にウージの森がある。
ただのサトウキビ畑と思って侮ってはいけない。
何度入っても入口に戻ってきてしまうという噂があるのだ。
どちらにせよ、なんくるの妹がそこにいるのなら案内してもらいたいものだ。
「なぁなんくる。お前の妹、森に家でも建ててるのか?」
「まさか、サトウキビ畑だぞ。ウージの森を抜けた所に小屋があるから、そこを寝床にしているんだろう。」
「だろうって…お前妹さんに会ってないのか?」
なんくるは静かに頷いた。理由を問い詰めると…
「…サトウキビ畑…というか虫が苦手なんだよ。」
世界が滅びかけているというのに、妹の安否より虫嫌いの感情が勝つのか…。
「妹さん聞いたら泣くぞ。」
「…反省してる。」
細い道を歩き続けると徐々に周囲はサトウキビ畑で囲まれていく。
暫く歩くと、正面には広大に広がるサトウキビ畑があった。
思っていたよりも高さがあり、その広大さは本当に森のようだった。
ウージの森とはよく言ったものだ。
「よし!行きましょう!」
なんでこいつ(ユウヤ)はこんなにルンルンしているのだろうか。
この時、ユウヤの「飽きてきた」と言った日の表情を思い出して、溜息を吐いてしまった。
そして、なんくるは見るからに入るのが嫌そうな表情をしていた。
「なんくるも覚悟決めなよ。たかが虫だろ。」
「そ、そうだな。」
あーダメだ。明らかに覇気がない。
俺はなんくるの手を引いて森へと入っていった。
途中途中なんくるの悲鳴が後ろで聴こえたが、無視して歩みを進めた。
一方その頃…
「ふん、カバネの奴。沖縄で何やってるんだ?」
「城を建てたらしいにゃん。」
「悪魔会議を忘れてしまうほど熱中しているらしいな。」
「ふん、一番下っ端のくせによォ。」
三人の悪魔は宙に浮いた映像で会話をしていた。
このビデオ通話のようなものは、悪魔達が生み出した魔法の一つ。
「そういえば聞いてほしい事があるにゃん!女の子を拾ったにゃん!」
「拾った?」
「そうにゃん!森の中で倒れていたにゃん。」
「ふん、人の子か?」
「そうにゃん。もしかしたら清子様の魔法で飛ばされたのかもにゃん。」
「にしても、無事という事は。」
「この子、凄い魔術量なのにゃん。使えるにゃん。」
女の子は何も知らずに、夢の中を彷徨い続けていた。
次回
Stage5-6 悪魔討伐編 五人の戦士達




