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今世は幸せでありますように!  作者: ゆる


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Stage5-4 悪魔討伐編 涙のエイサー

いつもご愛読ありがとうございます!

お待たせいたしました。投稿が遅れて申し訳ありません。

今回は切ねぇ…って思いながら書いてました汗

ぜひお楽しみ下さい。

時は遡ること二年前。


与那国島を初めとし、地球全体が崩壊した。

人が落下する程の地割れが起こり、その後幾つもの自然災害が地球を襲った。

日本で村として残っているのは十箇所程だろうか。

いずれにしても食物や水分不足問題が浮上している。

子供達を優先にしていれば、自然と栄養失調で倒れる者が続出していた。

このままでは村人全員の命を落としてしまう。

そんな時だった…


「我と契約を結ばぬか?悪い話ではなかろう。」


悪魔四天王のカバネという女悪魔が村に降り立った。

カバネはこの沖縄の地を自身の王国とし、悪魔城を建設すると言い放った。その代わりの条件として、村人達の命の保証と食料問題の解決を約束するという契約だった。

確かに、決して悪い話ではなかった。

しかし、これは悪魔との契約なのだ。

更に悪魔との契約は、必ず犠牲者を生み出すという。

好条件であっても誰も返事をしなかった。いや、出来なかった。何故なら悪魔とは人の不幸を好物とするからだ。

村人達は悪魔が来た事にも怯えており、身動きが取れずにいた。

そんな中、村人達の前に出たのが長老だった。

「長老のちむじゅらじゃ。その契約、結ばせてもらうぞい。」

「「長老!?」」

長老は、何を思ってか契約を結ぶ事を約束してしまった。

長老の側近二人も驚きを隠せずにいた。

「待ってください長老!悪魔との契約は…」

「でぃきやー。わかっておる。」

長老は覚悟を決めた様子で側近の話を優しく遮った。

「でぃきやー、ちゅーばー。お前達には世話になったのぉ。これからは二人がこの村の長として、村を支えていくのじゃ。」

「「長老…。」」

「琉球村の者達よ!我、ちむじゅら最後の言葉を聞くが良い!側近のでぃきやー!そして、ちゅーばー!本日をもって側近を解任とし、この村の新たな長に命ず!」

側近二人だけでなく、村人達は涙を流し続けた。

長老ちむじゅらはカバネの前に立つ。

「契約成立♥」

「…ぐぶりーさびら。にふぇーでーびる。」

長老は村人に聴こえない程の小さな声で呟いた。

カバネはちむじゅらの中心に契約魔法陣を発動させた。

「我の契約の生贄となれ。そなたの村人達の食料問題を解決、約束しよう。そして…腹を満たした村人を年に一度儀式に捧げ、我が大蛇の命の糧となるのだッ!!!」

開いた口が塞がらないとはこの事である。

悪魔は、最初から約束を守る気などなかったのだ。

長老が契約を結ぶと言った時点で、不幸の連鎖は完成していた。

長老は魔法陣から出ようとするも、見えない壁で出られなくなっていた。

「長老ォーッ!!!」

「待て!早まるな!ちゅーばーッ!」

ちゅーばーは、背中の特大斧を取り出して飛びかかる。

魔法陣目掛けて斧をおおきく振りかぶるも、魔法陣は微動だにしなかった。

「うふっ♥ごちそうさま♥」

長老は魔法陣の中で姿を消し、契約は成立された。

「…長老。」

膝から崩れ落ちるちゅーばー。

次の瞬間ちゅーばーは、思い切り顔面に蹴りを食らい、でぃきやーの元まで飛ばされる。

カバネは軽蔑した目で側近二人を見つめる。

「…愚か者はそこで膝まづいているが良い。」

ちゅーばーは再び立ち上がり、カバネに向かって力強く斧を振りかぶった。

「貴様ァァァァァァァァァッ!!!」

しかし、特大斧はカバネの人差し指一本で止められてしまった。

「…この程度の力で我を切れると思ったか?つくづく愚かじゃのぉ。」

デコピンのように人差し指で特大斧を弾き返した。

「…な…舐めるなァァァァッ!」

「…愚か。」

カバネはちゅーばーに氷結魔法をかけた。

ちゅーばーは顔以外を氷漬けにされた。

そして、カバネにより斧を持った右腕を砕かれた。

「うわぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛ァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァッ!!!!!!!!!」

氷漬けにされている為、出血はしない。だが、腕を切られた際の激痛は同様であった。

悶え苦しむちゅーばーを放置し、カバネは空へ高く飛び上がった。

「半年後、琉球村の祭壇に生贄を一人用意せよ!さもなくば大蛇がお前達の村を襲い、全員を捕食する!生贄を確認したら、食料を提供しよう!」

そう言ってカバネは姿を消した。

「…ぜってぇ…殺して…やる…。」

カバネに対して殺意を向けるちゅーばーは、痛みに耐え切れず気を失ってしまった。

「ちゅーばー!ドクターッ!」

でぃきやーは村の医師を呼び、複数名でちゅーばーを診療所へ運んだ。


食料問題は何とかなる。

だが、生贄が必要という条件に胸が痛む村人達だった。


…三日後。

ちゅーばーが目を覚ました。

右腕を失ったが、他に異常は無かったそうだ。

ちゅーばーの見舞いに来ていたでぃきやーの元へ一人の青年が現れた。

「…ちゅーばー様、お加減いかがですか?」

「あぁ、まだ多少痛むが大丈夫だ。」

「君は…確かなんくる。」

二人の元へ尋ねたなんくるは、今後について話を伺った。

「…長老が契約しちまった以上、俺らは従うしかない。少なくとも生贄を出さない為に、対策を考えるつもりだ。」

ちゅーばーは戦意を喪失した訳ではなかった。

むしろ、カバネに対しての殺意で溢れている。

「…そうですね。これ以上犠牲者は出したくありません。」

二人が出した結論は、実力者を集い、悪魔城に攻め込むという事だった。


一週間ほどして、ちゅーばーは腕の痛みが引いた。

診療所からでも見える、少し離れた所に悪魔城は完成していた。

そして、ちゅーばーは診療所から姿を消した。

でぃきやーは村人達に事情を説明し、対策を練った。

村の長であるでぃきやーは村に残る事となった。

そして、村一番の魔道士さーたーと元騎士のまーすを筆頭に十人程のチームを編成した。

名を捜索討伐連合隊とした。

目的はちゅーばー捜索とカバネの討伐。

「でぃきやー様!なんで俺は行っちゃダメなんですか!」

なんくるは、最低限の敬語ででぃきやーに詰め寄る。

「なんくる、君には村を守ってもらいたい。」

今思えば、でぃきやー様の判断は正しかったのかもしれない。

捜索討伐連合隊は、半年経っても帰って来る事はなかった。

そして、約束の生贄を差し出す日がやってきた。



長老の家


「…でぃきやー様。」

「…。」

でぃきやーは無言のまま立ち上がる。

「…なんくる。ちょっと出て来る。」

そう告げて、でぃきやーは家を出て行った。

「…でぃきやー様。」


夕日が村を照らす頃、俺は海を眺めていた。

正直、この先どうなるのか不安で頭がいっぱいだった。

ちゅーばー様も捜索討伐連合隊も行方不明。

流石のでぃきやー様も頭を抱えているようだし。

「…俺がもっと強ければ。」

悔し涙だった。自分の無力さに嫌気がさした。

「…振り向かずにそのまま聞きなさい。」

後方から聞き覚えのある声がした。

「…でぃきやー様?」

「お前にはこの半年、私の側近代理として動いてもらっていた。本当に感謝している。」

なんくるは振り向かずに黙って話を聞く。

「なんくる…私はこの村が好きだ。世界が崩壊したにも関わらず、俺やお前は村と共に生き残った。それは凄く運の良い事だと思わないか?」

「…何が言いたいんですか?」

この時、俺は身体を動かせない事に気が付いた。

顔だけは動かせた為、ゆっくりと身体を見ると石化していたのだ。

「…こうでもしないとお前は私を止めるだろうからな。」

「でぃきやー様!まさかッ!」

「…俺はこの村の為に死ねるなら本望だ。ちゅーばーや捜索討伐連合隊が戻ったら、宜しく伝えてくれ。」

徐々に首が石化されていく。

このままでは全身石化され、身動きが取れなくなる。

「でぃきやー様ッ!待ってくださいッ!俺はッ!」

「…お前は強い。お前が今度は村を守ってくれ。」

「でぃ…様…や……ま……。」

口、鼻、目の順に石化は進行した。

俺の訴えは届かず、涙も流しきれなかった。


俺の石化が解けたのは、約三時間後だった。

辺りは暗くなり、夕日は月へと変わっていた。

俺は急いで村へと戻った。

村は何故か祭りを開き、賑やかだった。

「おい、なんだよこれ!何でこんな時に祭りなんて!」

村人達は何も答えない。

歌を歌い、踊り、太鼓の音が響き渡る。

俺は唖然としていたが、よく見ると村人達は笑ったまま涙を流していたのだ。

すると、でぃきやー様の母のやーたいが俺に近付いて腕を掴んだ。

「…やーたい様?」

やーたいは手で口を隠し、息が詰まる様に涙を流し続けていた。

俺はこの瞬間に全てを悟った。

ジワジワと涙目になった俺は唇を噛み締めた。

そして、やーたいを支えながら共に涙を流したのだった。


次回

Stage5-5 悪魔討伐編 ウージの森

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