Stage5-3 悪魔討伐編 神か悪魔か
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深夜一時過ぎ。
「おい、ユウヤ。起きろ。」
小声ながらもやや強い口調で俺はユウヤに声を掛ける。
「おい。おいって。おいって言ってんだろぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
最終的には大声、更には頬に張り手を喰らわせた。
ユウヤは首を押さえながら目を覚ます。
「……やり過ぎ。」
俺とユウヤは忍び足で縁側から抜け出した。
庭は砂利の為、ゆっくり歩こうとも音を立ててしまう。
無事に門を抜け、夕方の広場へと向かう。
日中の賑やかな様子とは比べ物にならないくらい夜は静かだ。
夜の二十時位までエイサー太鼓を叩いていたせいか、永遠と耳に響いている感じだ。
広場を抜け、物陰に隠れながら小道に入って行く。
【これより先の立ち入りを禁じます】の赤い看板のすぐ後ろには、ロープが張られている。
物陰に隠れていると、看板の奥が少しだけ見えた。
禁足地擬きは森に囲われ、小道が続いている。
周囲に誰も居ないことを確認した俺とユウヤは再び忍び足で禁足地擬きへと入って行った。
森の中は薄暗く、足元を見るのが精一杯だ。
逆に明るくしてしまうと誰かに見られてしまう可能性がある。
慎重に道を進んで行くと、木々には蝋燭が掛けられている。
所々無数の藁人形もあり、釘で刺してあった。
「もしかすると、呪いの儀式が行われているのかも。」
歩み続けていると出口が見えて来た。
そこには大きな石の祭壇があり、四つ角にはかがり火が置かれている。
ゆっくりと階段を上がって行くと、頂上は平らな状態になっていた。
そこの中心には手足を縛られたなんくるが横たわっていた。
「おいっ!なんくるっ!」
なんくるの身体は傷だらけだった。
「…お前ら…なんで。」
「何があった。」
ユウヤが問い詰めると、辺りの空気が変わった。
「アルミ、来るぞ。」
「分かってる!」
森の奥からザザッ…ザザッ…と不規則な音が響き渡っている。
少しずつだが音は近づき、大きくなっている。
地響きと共に巨大な影が姿を現した。
『シャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
現れたのは大蛇だった。
それも想像以上に巨大で、十五メートルはあるだろうか。
「なんくる!これはどういう事だ!」
「……。」
なんくるは唇を噛み締めて、話すのを拒んでいるようだった。
「一先ず、あの蛇を何とかしましょう。」
ユウヤは刀を抜き、なんくるの手足に縛り付けてあるロープを切った。
「…お前らバチが当たるぜ。いや…俺もだな。」
覚悟を決めたかのようになんくるはナックルを装着する。
三人が戦闘態勢に入り、大蛇も威嚇を続けている。
「千里眼ッ!」
ユウヤは千里眼で大蛇の体内を分析していた。
「…ダメだ。こいつに弱点は無い。強いて言うなら視覚が悪い事くらいですね。」
「なら奴の四角に入って、絞めちまえば。」
「ダメです。動きが俊敏な上、嗅覚は優れています。安易に動くと…喰われます。とにかく、隙を狙って首を刎ねるしかありませんね。」
ユウヤは刀を構えながら流暢に話を進める。
「なら俺となんくるが気を逸らして、ユウヤが首を切るしかないな。」
ユウヤとなんくるは頷き、三人は一斉に飛び出した。
まずは大蛇の動きを止める必要がある。
「「「俊足ッ!」」」
全員考えは同じだったようだ。
ほぼ同時のタイミングで、素早さが上昇する。
俺は、テレキネシスで身体を浮かせ、大蛇の目の前に行った。
「サイコキネシスッ!」
大蛇は神経に痛みが走っているだろう。
すぐに奇声をあげ、悶え苦しんでいた。
しかし、サイコキネシスは身動きも封じる為、苦しんでも抜けられない拷問技だ。
その間になんくるは大蛇の腹部付近へ移動していた。
「燃えよッ!龍炎弾ッ!」
なんくるの全身に炎が纏い、両手に力が集中した。
炎の拳で大蛇の腹部を殴り、高速で何度も攻撃を繰り返した。
大蛇は更に奇声をあげる。
弱体化した所を狙い、ユウヤがボロボロの翼を広げて飛び立った。
僅かに飛び続け、大蛇の首に刀を向けた。
「天使の斬撃!」
首の急所に黄金針が何度も刺される。
大蛇の首は切断出来なかったが、紫色の血が流れ、その場に倒れ込んだ。
「これ、死んだのか?」
「いや、急所に打ち込んだから動けないだけだろう。今のうちにとどめを。」
なんくるは再び両手に炎を宿し、空高く飛び上がった。
限界まで上がりきったところで、両手を下にして回転しながら落下してくる。
「メテオ・ストライクッ!!!」
それはまるで隕石のように、ユウヤが切り付けた首元へ攻撃を命中させた。
奇声をあげる間もなく、大蛇の首は切断された。
三人は紫色の血飛沫を浴び、異様な臭いに包まれている。
無事に大蛇を討伐したが、なんくるは浮かない顔をしていた。
俺はなんくるの肩に手を置き、訳を聞こうとした。
「…此処は生贄の祭壇。古くからの言い伝えで神々に祈りを捧げる際に使用されたらしいんだが。最近やってきた、カバネという女がこの村を乗っ取った事から全ては始まった。」
「そのカバネっていう女は一体何者なんだ?」
「…悪魔族さ。それも悪魔界の四天王と言われている。あいつが来てから、村の皆も変わっちまった。いや、一番変わったのは俺なのかもしれねぇな。」
なんくるは、終始深刻そうな表情をしていた。
俺とユウヤは一先ず、なんくるとこの村に何があったのか話を聴くこととした。
次回
Stage5-4 悪魔討伐編
涙のエイサー




