【Stage12 五島列島救出編】 12-1ただいま
新章開幕です!
二〇三五年 三月
「…ここは。」
場所は何処か分からない。何も無い草原に綺麗な花が咲いている。心地良い風が吹き、晴れ渡る空が広がっている。もうこの世界に歯車は無い。天の花園への階段も無い。ここは全ての事象が終わった世界という事だろう。
見た目や服装、武器は当時のままのようだ。肝心の特技や必殺技も元に戻っていた。
遠くを見ると、見覚えのある赤い鉄塔が見えた。
「…ここ東京か。」
「そうみたいですね。」
突然背後から声が聞こえ、驚いて振り返った。そこに立っていたのは、ライトグリーンの防具を付けた金髪ツインテールの美女。
「金髪美女妹きたあぁぁぁぁぉぁぁぁぁぉッ!!!」
「…先輩、それ最初も言ってましたよね。」
やや軽蔑するような視線を感じたが、俺は咳払いで全てを誤魔化した。
「…ところで、俺達どこ行けば良いんだろうな。」
「…何のヒントも無いですからね。【今あり2】も具体的に何処が舞台とか言ってませんでしたし。」
「だな…一先ずテキトーに歩いてみるか。」
俺とリズは赤い鉄塔の方向へと歩いて行った。
「この鉄塔もまだ新しい方ですね。私達がいた時代ではもう殆ど錆だらけでしたし。」
「確かにな。草木と砂で染まってる中、これだけ残っているのも謎だよな。」
俺とリズは、鉄塔の周りを徘徊した。だが、特に何も見つからなかった。
その周辺も見渡してみたが何も無い。
俺達は再びどの方角に行けば良いのか分からなくなった。
「…それらしいヒントもないし。隠しそうな所も全部見たし。一体どうなってるんだろ。」
「なぁ…そういえばさ…。」
俺は一つある事を思い出した。それは【今あり2】での五つの島についてだ。
「…あの島、五島列島をモチーフにしてるんだよ。てことは、五島列島のある所へ行かなきゃ行けないんじゃないか?」
「…ということは…長崎県って事ですか!?」
東京から長崎県の距離は、おおよそ1223キロメートルだ。電車で約六時間半、バスなら二十時間以上かかる。現状移動手段としては徒歩のみ、そう考えただけで俺達は絶望した。ゲームの世界と言えど、現実と変わらない距離と疲労感は感じられるからだ。
「…リズ、飛べないの?」
「…飛べたらこんな絶望してません。」
「…歩くか。」
俺は諦めて歩き始めた。
「私、俊足あるので先に行ってますね?」
「いや、一緒に連れて行って?」
俺はリズに掴まり、俊足で長崎県を目指した。
…そして、出発してから約百日が経過した。
俺達は今、長崎から五島列島を眺めている。
「…漸く来たな。」
リズは地面に手と膝を付いて荒い息をたてている。
「どうした?」
「…どうしたじゃ…ないです…殆ど…私が……担いでた…じゃないですか。」
そう、約百日間、俺は何もしていない。良く考えればサイコキネシスで飛んで行く事も出来たのだ。それを思い付かずに、俺はリズに掴まっていただけだ。
俺はリズに軽く謝罪を済ませ、サイコキネシスで海を渡った。
「…これ…私、走らなくても良かったんじゃ…。」
「シャラッッップッ!それ以上何も言うなッ!いや、ごめんて!本当にごめんて!」
再び軽蔑の目を向けられながら、俺達は五島列島を目指した。
次回もお楽しみに!