Stage11-12 山の主
「…ねぇ…有海先輩でしょ…?」
「…な、なんの事だい?」
「誤魔化さないで!私、有海先輩の事ずっと探してたんです!」
俺は追い詰められ、やむを得ず頷いてしまった。
「やっぱり…私です、前原和葉です!」
前原和葉を思い出すまでにやや時間を要したが、以前朝に遭遇した後輩だと思い出した。
「あぁ!あの時の!」
彼女が以前言っていた事も同時に思い出し、前原和葉とリズは同一人物だという合点がいった。
「嬉しいです。偶然でも先輩と一緒にゲーム出来るなんて。」
リズは頬を赤らめ、目線を逸らした。
「そうだな。これからよろしくな。」
リズは笑顔で「はい!」と返事をした。これまで妹だった事もあり、僅かながらの違和感は感じる。
「それでこれからどうするんです?」
「一先ずオアシスに向かう。ここからそんなに遠くないはずだからな。」
「わかりました!じゃあまた私に掴まってください!」
俺はリズに言われた通り、背後から腕を回した。その瞬間、リズの顔面は真っ赤になり、這い蹲る体勢になった。
「大丈夫か!?」
「…大丈夫です…ちょっと蒸発しただけです…。」
「大丈夫じゃないよな!?」
リズは再び立ち上がり、スピタクルとバイアップを発動。そして俊足を使い、俺達はオアシスへと急いだ。
村唯一のお店の前、左を見るとオアシスがある。この光景も何だか懐かしく感じてしまう。
「あれだ。だが、前と雰囲気はまるで違うな。」
俺とリズはゆっくりとオアシスの方向へ歩みを進めた。
近付くとマキシムさんの家が半壊しており、オアシスも僅かに汚染し始めていた。
「…何があったんだ。」
「先輩!家に誰かいます!」
リズに言われ家の方向を見ると、そこには傷だらけのマキシムさんがいた。俺とリズは急いで駆け寄り、何度も声をかけた。
「……お前…生きてたのか…。」
「…何があったんです?」
マキシムさんは、辛うじて話が出来ている状態だ。
「…奴が…来た…。」
「奴?奴って誰ですか!?」
マキシムさんは口を上手く動かせていなかった。最終的に聞き取れた言葉は、物語の始まりを告げていた。
『奴が来た。山の主だ。なんくると連れの女が攫われた。』
その事を告げると、マキシムさんは息を引き取った。しかし、家は半壊で済み、オアシスも完全に汚染はしていない。命を懸けてこの場所を守ったのだ。
俺とリズは迷うこと無く、砂漠地帯を抜け出す事とした。そして、火山に辿り着く為、次の島へと向かう選択をした。
マキシムさんをベッドへと寝かせ、俺達は出発した。
次回もお楽しみに!