Stage11-11 お兄ちゃん
「…お兄ちゃん…見つかったことよりも上裸のおじさんが指を差しているこの光景が何よりも苦痛なんだけど。」
「…あぁ、俺もだ。さっさと汚い腹をしまえ。」
裸の王様は恥ずかしそうにしながら、再び奥の部屋へと入って行った。
「…よし、出るぞ。」
私とお兄ちゃんは、その部屋から逃げるように退散した。
「貴様らッ!この私を侮辱しおって…あれぇ!?」
当然のように待っているだろうと思っていた王様は、すぐ様屋敷内に伝令を流した。
「侵入者だぁ!若い男と女が侵入しておる!男は青髪で目付きが悪く、黒と緑の防具を付けておる!女はボロボロの布切れのみ、地下から脱出した奴隷じゃあ!見つけ次第すぐに知らせろっ!血祭りじゃあぁぁい!」
「ハハッ、こんなに歓迎されちゃあ照れちゃうよ。」
「お兄ちゃん、歓迎はされてないよ。血祭りって言ってたもん。」
「よしっ!あのクローゼットに隠れるぞ!」
「お兄ちゃんっ!?潜伏スキルは!?」
狭いクローゼットの中へ俺とリズは二人で隠れた。そして、潜伏スキルを失った経緯を小声で伝えた。
「…じゃあスキルは二つしか無いんだ。」
俺は小さく頷いて答えた。
「って言っても、私もレベル1だから何も出来ないんだけどね。」
『侵入者!出てこい!どこ行ったぁ!』
クローゼットの前で王様の部下らしき男の声が響き渡る。
いや、そもそも廊下にクローゼットって何?
ギィィィィィィッ
俺とリズは、あっさりとクローゼットの扉を開けた兵士と目が合っている。
「…グッ、グッドモーニーング♪」
『侵入者が居たぞおぉぉぉぉおぉぉおぉぉッ!!!』
兵士は槍をこちらに向けたまま、周囲へ大声で位置を知らせた。
「…まあ簡単に捕まったらつまらない。」
俺はサイコキネシスで槍を奪い、兵士の動きを止めた。
兵士の声を聞いた他の兵士やメイドが各々武器を持って集まってきた。
「どんだけ血祭りにしたいんだよ!」
「お兄ちゃん!私に掴まって!」
リズは、呪文を唱えバイアップとスピクタルを使用した。
「あ、やっぱり使えた!」
「なんで!?レベル1だよな!?」
「呪文覚えてたから唱えてみたら使えたよ?」
そう言うと、リズは俺をお姫様抱っこで抱えた。
「俊足ッ!」
リズは物凄い速さで兵士やメイドの方向へ向かって行った。
「サイコキネシスッ!」
そして俺は兵士やメイドの動きを止め、リズはその隙間をすり抜けて行った。そのままのスピードで城の外へと向かった。
大きな扉から出ると、そこは裏出口のような所だった。地面や噴水には苔が生え始めており、水も貯まっていないようだ。内装とは比べ物にならない程に、裏側は手入れされていないようだ。
「…外面だけ良いタイプなんだろうな。」
俺とリズはそのまま無事に城から抜け出した。
「おのれっ!覚えておれっ!顔は覚えたぞぉ!」
城からかなり離れた所で、俺達は大きな岩陰を発見した。そこで一旦身体を休めていると、リズがプロフィールを開いた。プロフィールを確認すると、リズは既にレベル12になっていた。
「この短時間でそんなに上がったのか。」
「前作よりレベル上げは楽になったみたいだね。」
「俺はレベルマックスだからな、感覚が分からないんだ。」
リズはプロフィールを閉じると、真剣な表情をこちらへ向けた。
「ど、どうした?」
「あのさ、お兄ちゃん。親しげにお兄ちゃんなんて呼んでるけど、お兄ちゃんって本当はどんな人なのかな?」
「ど、どんな人って言われてもなぁ。基本的に情報の漏洩は厳禁だけど、一つだけ教えれるとすればアルミって名前は本名から取ってる。」
「へぇ!そうなんだ!アルミ…アリミ…アリウミ…?」
それを聞きブツブツと何かを言っているとリズの目は次第に見開き、赤面状態へ変わった。
何か変なことを言っただろうか。
「…もしかして…有海先輩…?」
俺は声を失った。
次回もお楽しみに!