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Stage11-10 兄妹の絆


気が付くとそこは、何処かの洞窟。そこには古びた牢屋がいくつもあった。

プロフィールを開くと、【奴隷賊 レベル1】と表示された。

そう、私は【奴隷賊】としてゲーム開始する事となった。


私がこの世界に来てから一週間が経過した。本来日付の経過は分からないが、看守が毎日報告に来るのだ。私の他にも牢屋に入っている人はいるが、誰一人として言葉を発する人はいなかった。見張りの看守が来た時も目を合わせず、水とパンだけを受け取る。お腹こそ減らないが、味気ないのは事実だ。見張りの看守の装備品は槍のみ。服装からして、ここは何処かの城の地下と推測した。

この一週間、私がしている事とすれば食事と穴掘りだ。タイルや岩は壁のみで床はなく土、正直穴を掘れば脱獄できる状態なのだ。地道に掘り続け、気が付けばあと一週間もあれば出られる程にまで進めていた。

更に五日が経過した時、私の目の前に現れたのはお兄ちゃんだった。まさか、お兄ちゃんまでこの世界に巻き込まれているとは思わなかった私は、思わず涙が溢れた。

「リズが何でここに居る!まさか、NPC!?」

「違うよ、私も今回のイベントに招待されたの。皆より遅れちゃったけどね。えへへっ。」

私はこれまでの状況を説明し、お兄ちゃんのサイコキネシスで牢屋の鍵を開けてもらった。

私が牢屋から出た瞬間、プロフィールが更新された。


【脱獄賊】


どうやらこの世界では、【賊】というのが役職にあたるらしい。聞けばお兄ちゃんは、【海賊】なんだそうだ。恐らく私がお兄ちゃんの正式な仲間になれば、私も【脱獄賊】から【海賊】に変わるのだろう。


「他の人達は出さなくて良いのか?」

「…いや、開けてあげよ?」

私はお兄ちゃんに牢屋の全ての鍵を開けてもらった。

「…鍵は開けました。あとは皆さんの行きたい道を進んでください。ご武運を。」

私は全囚人に告げ、その場から去った。


ボロボロの橋を渡るも、暫く洞窟は続いた。途中急坂もあれば下りもあり、中々大元には辿り着けないでいた。

「お兄ちゃんは何でここにいるの?」

「仲間を助ける旅に出たんだが…」

私はお兄ちゃんがこの世界に来た理由とこれまでの経緯を聞いた。お兄ちゃんらしい急展開だと私は笑った。

「じゃあとりあえずそのレイラさんって人となんくるに会わないとね。それにしてもなんくるまで前作を!クリアするなんて凄いなぁ。」

「まあ最終ステージにいて、尚且つ生きていればクリアっていう状況だったからな。正直、全員が危なかったよ。」

「それにしても、ユウヤさんが生きていた事は衝撃だなぁ。」

「確かに。」

思い出話が咲く中、私達は最後の扉に辿り着いた。ゆっくりと扉を開けると、そこは豪華な通路が続いていた。

「やっぱりここはお城だよ!」

「でも、この島に城なんてあったかな。」

浮かない顔のお兄ちゃんを無視して、私は通路を歩み進めた。壁に掛けられている絵は見るからに高級品で、途中に置いてある壺も近寄り難い程にキラキラと輝いていた。

奥に進むと、更に扉が現れる。その扉をゆっくり開けると、豪華な家具や照明の並ぶ部屋がそこにはあった。

「うわぁ、凄いお金持ち。でもなんで、地下なんか繋げているのかな。貴族が奴隷を買う設定はよくあるよね?」

「ただの奴隷購入なら合法的に認められている場合もある。だが、流通ルートは様々だ。さっきの奴隷達がどこから買われたのか。わざわざ隠す理由、それはバレれば都合の悪い事があるからだろう。」


コトッコトッコトッコト…とやや早歩き気味の二つの音が少しずつ近付いて来ていた。

「まずい、隠れるぞ。」

私はお兄ちゃんに手を引かれ、扉横にある大きなカーテンの裏に隠れた。

扉が開き、中に入って来たのは、見ただけでわかる王様ファッションの叔父様とスーツを身に纏った執事らしきご高齢であった。

私達は身を潜めながら、二人の会話に耳をすました。


「オアシスの破壊はまだなのか?」

「申し訳ございません。何やら手こずっている模様で…。あのオアシスの近くに住む、マキシムという男がオアシスを守っているようなのです。」

「フンッ!この島にオアシスなんぞいらんわい。そんなに水が欲しければ、働いて高級水でも買うと良いわい。なんなら、働いてかいた汗を貯めるって事も出来るがのう。」

王様の叔父様は高らかに笑い、執事さんは愛想笑いをしていた。

「それで?倒せるのか?」

「…やむを得なけらば…私自ら…。」

「ほぉ、見ものだわい。ゼバス、そのマキシムとかいう輩はお前が殺すのだ。」

執事さんは、言葉を失っていたが、やむを得ず承諾した。執事さんが部屋を出ると、王様はもう一つの奥の部屋へと入っていった。それを確認してから、私とお兄ちゃんはカーテンから身を乗り出した。

「オアシスの近くに住むマキシムさんって人が今はピンチみたいだね。」

お兄ちゃんは何も言わずに部屋を出て行こうとした。

「お兄ちゃん、もしかして知り合い?」

「まあな、こんな話を聞いて放置は出来ない。」

私は「了解!」と笑顔で返事をした。すると…


「貴様らッ何者じゃあァッ!!!」


私とお兄ちゃんは、部屋から出てきた上裸の王様に見つかってしまった。


次回もお楽しみに!

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