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Stage11-9 前原和葉


七月十三日(金)

放課後、前原和葉は有海浩太を尾行していた。

電信柱に隠れては追ってを繰り返す。

「…あ、有海先輩…一体何処に…まさかっ!」

前原和葉は独り言を呟きながら、ありもしない妄想を繰り返す。

そう、言わずもがな前原和葉は有海浩太に好意を寄せている。


有海先輩が入って行った建物は、【株式会社 パワフルV】という会社。

「…株式会社パワフルVって…どこかで聞いたような。」

私は恐る恐るガラス越しに様子を伺う。

何やら案内人らしき人と親しげに話している様子だ。

「…良いなぁ。」

すると、有海先輩はエレベーターに乗ってしまった。

私は中に入り、何階に行ったのか確認した。

数字が増え続け、49階で降りた事が判明した。

私は別のエレベーターに乗り込み、49階を連打した。

いけない事と分かりつつも、脳の制御が利かない。

これこそ恋の暴走機関車ッ!

急上昇するエレベーターに慣れていないせいか、耳がキーンと鳴り、あっという間に49階へ到着した。


エレベーターから降りるとそこはカジノ場のような雰囲気の空間だった。中央にはエアー抽選機があり、中にはカラーボールのような物が何個も回っていた。辺りをピンクやブルーのスポットライトが行き来しており、会場は盛大に盛り上がっていた。賑わっている中、今度は仮面をつけたディーラーに有海先輩は奥の扉へと連れて行かれた。それを見た私は、一目散に追い掛けるも間に合わなかった。

「…先輩。」

私はどうすれば良いのか分からず、その場にしゃがみ顔を伏せた。


「やぁ可愛い迷い猫さん。どうしましたか?」


顔を上げると仮面を付けた長い髪の男性が話し掛けてきた。赤い貴族のような服装で向けるその笑顔は何故か不気味に感じた。

「す、すみません!私、先輩を探してて!」

「有海浩太君の事ですね?」

「…え?」

私は戸惑いを隠せなかった。まだ何も話していないのに、何故この人は有海先輩の事まで分かったのだろうか。

「そして君は、前原和葉さん。ようこそおいでくださいました。こちらへ。」

男が背を向けた時、私は男へ質問を投げた。

「…あの…ここは何の会社なんですか?」

男は振り返ると一瞬驚いた表情を見せた。しかし、すぐに笑みへと変わった。

「…なるほど。私の招待メールを見た訳ではなく、たまたま有海浩太君を尾行したら辿り着いたと。」

「…尾行って…間違ってませんけどやめてください…って招待メールって。」

私はスマホを取り出し、メールボックスを確認した。未確認メールが何百件もあり、一番上に【株式会社 パワフルV】と記載されたメールがあった。開いてみると、そこにはパーティに関する内容と招待コードが記載されていた。今回のパーティ招待元となったのは、なんとゲームだったのだ。

「このゲーム…私死んじゃいましたよ?」

「構いませんよ。ゲームは大勢でやった方が楽しいですから。前原和葉さんの参戦は予定には無かったのですが、これも何かの縁です。」

「じゃ、じゃあ私はなんで招待されたんですか!?」

「今回のイベントは、【今世は幸せでありますように】のクリア者四名と惜しくもクリアは出来なかった上位ランカー四名を新たなゲームに招待したのです。当然、今回のイベントを終えれば、前回の続きからプレイ出来るシステムとなっております。ですが、そう簡単にいかないのも【今あり】の特徴です。」


…早口過ぎて何を言っているのか分からなかった。

困惑はしていたが、怪しい会社などではなかった為、私は案内に従った。

後をついて行くとそこにはバーチャルシュミレーションシステムという超大型カプセルが置かれていた。

このバーチャルシュミレーションシステムは、通称立体型ゲーミングカプセルとも呼ばれる体感式ゲームらしい。現在十個ある内、九個が埋まっていた。

「…あれ?八人って言ってませんでした?」

「あぁ、彼はうちの社員。君が好きな有海先輩とは前作闘っていてね。仕返しに行ったみたいだけど、さっき返り討ちにされたところだよ。」

「流石先輩ですッ!」

超大型カプセルに向かって話しかけるも、当然有海先輩の反応はなかった。

「…では、前原和葉さん。データは全て初期化されてしまいますが、このカプセルに入って新たな世界へと行くのです。」

私は今回のミッションについて内容を聞いた後、ゲーム参加を了承した。

「あなたがどのようなキャラクターで、どのようにゲームが始まるかは分かりません。全てはあなたの辿る道次第です。さぁ、行きたまえ!」

心電図モニターなどテープを貼り終え、超大型カプセルは閉じた。

脳内に響くアナウンスを聴き、私はそっと目を閉じた。


有海先輩、待っててください。

私はそんなに上手くないけど、陰で貴方を守りたい。

そのために素早さ重視のキャラクターにしたんだよ?

本当はゲームの世界だとしても、貴方の恋人でいたかった。

でも、良いの。

今は妹として支えに行くから!


『プレイキャラクター名 リズ レベル1からスタートします。』


次回もお楽しみに!

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