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Stage11-4 失くしたもの


俺達は広いこの空間で物陰に隠れつつも、狭い道をひたすら進んでいる。広い道に出た時、またあの怪物が襲って来るのではないかと恐る恐る進んでいる。俺はレイラと共に行動しているが、カルトやサカイが無事でいるかは全く分からない状況だ。

「…レイラ…こうなった以上二人で先に進むぞ。」

「…皆を見捨てるの?」

「違う。生きていると信じているからこそだ。」

レイラはしばらく納得のいかない様子だったが、あの怪物がいる以上、此処での滞在は難しい。それにあの砂時計が落ち切った時もどうなるのか分からない。今は何が起ころうとも引き返してはいけない。

「…納得がいかないのも分かるが、今は辛抱してくれ。」

俺は再びレイラの手を引き、狭い通路を進み始めた。


再び広い広場に出ると、突き当たりに大きな階段が繋がっていた。目で追うと崖の上には次のフロアへ続く階段があった。

「…あった。レイラ、あったぞ!」

俺とレイラは周囲に警戒しつつ、階段へと急いだ。階段に一歩足を乗せた瞬間、後方から奇声と人の叫び声が聴こえた。振り返ると土煙があがっている。

「…マジかよ。」

「…もう目の前なのに。」

騒音と土煙と共に姿を現したのは、カルトと怪物だった。

「「カルトッ!」」

「船長!レイラ!急いでくださいッ!」

俺とレイラは、カルトの言葉通りに階段を上り進めた。躓けば終わりという恐怖に襲われながらもがむしゃらに上り続けた。

しかし、怪物の動きはかなり速く、今にも追い付かれそうになっていた。

「バイスピクタルッ!」

カルトの呪文により、俺達は素早さが上がった。間一髪、俺達三人は次のフロアの階段内へと飛び込んだ。怪物からすれば狭い洞窟、無理にでも進もうとする獰猛な姿を俺達は目の当たりにした。

「…こんなの勝てる訳ないだろ。」

「…い、生きてただけマシね。」

恐らく、今までの俺ならカルトやレイラの言葉にはぐうの音も出なかっただろう。

「…俺の仲間を傷付けたこと。倒せなくとも…傷だけでも残してやる。一生忘れられない深い傷にッ!」

俺はその場で青色と紫色の気を放った。宙を舞う二色の気体は混ざり合い、一つの球体を生み出した。

「…新!ラストリゾートッ!」

蹴りつけた球体は、怪物の顔面を貫通した。怪物はそのままその場に倒れ込んだ。

「…最初からこうしていれば。」

膝から崩れ落ちた俺は、涙を流す事しかできなかった。この時、改めて己の未熟さを知った。


「…落ち着いた?」

俺の落胆した姿を初めて見たレイラは、妙に優しく寄り添ってくれた。

「…あぁ、ありがとう。」

少し照れ臭そうにする仕草も、女の子らしく可愛らしい。こんな一面があったのかと肝を抜かれるほどに驚いた。

「…船長。多分これだけ待っても来ないって事は、サカイはもう…。」

「…彼女の分も必ずここを抜け出そう。」

「はい…って船長!砂時計が!」

カルトが指をさした方向を見ると、砂時計の砂が全て落ち切っていた。

サイコキネシスで怪物を遠くまで飛ばし、ゆっくり大迷宮の方を覗き込むように見た。すると、石のビルだけが取り残され、他の物や砂は下へと落下していたのだ。

「…もし間に合っていなかったら。」

予報通り、砂時計はタイムリミットだったようだ。間に合わなければ、何処か分からない所へ落下していた。

「…皆。」

そう、当然死体も落下してしまう。これまでどれだけの人達がここで犠牲になったのだろうか。もしかすると落下先は死体の山になっているのかもしれない。仲間達をしっかりとしたお墓で供養出来ないのは残念だが、旅をしている以上仕方のない事でもある。

「…行こう。」

「「…了解。」」

今回失ったものは大きい。しかし、俺達は屍を超えて、更に先へと進んだ。


次回もお楽しみに!

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