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Stage3-1【青の魔導書】前編

【青の魔法陣】を選択した貴方。

貴方が選んだ道は正しいとは限らない。

どんな結末を迎えても、それが現実なのです。


俺は【青の魔法陣】に入る事を決めた。

アイネさんとメグミちゃんの了承を得て、魔法陣へと入った。

「全員何が起こっても、無茶だけはしないで。」

アイネさんの忠告に俺とメグミちゃんは真剣な眼差しを向けて頷いた。

青の魔法陣は三人を包み込むように消えた。


気が付くと俺は、薄暗い空間にいた。

明確な場所は分からないが、恐らく廃ビルの中だろうか。

窓は全て割れており、雷の音が響き渡る。

頬には冷たい風が当たっていた。

会議室らしき空間の中心に倒れていたが、近くから波の音が聴こえた。

俺は割れた窓にゆっくりと近付いた。

するとそこには、海によって沈んでしまった街が見えた。

よく見ると海の底には、かつての東京らしき街並みが見える。

高層ビルや東京タワーが、上半分のみ海から出ている状態だ。

「…それにしても何が起こったんだ。ここは西暦何年なんだ。」

訳も分からないまま、俺は辺りを見渡した。

しかし、アイネさんやメグミちゃんの姿はなかった。

どうやら転移後に離れ離れになってしまったらしい。

一先ず俺は、この広い部屋に何か無いかを探し回った。

が、乱雑に積み重ねている机やパイプ椅子以外は何も無かった。

しかし、奥には扉があり、中に入るとそこには階段があった。

正面にはまた別の部屋があるようだ。

広い部屋から出て、別の部屋を覗き込むも、同じような空間が広がっているだけだった。

やむを得ず俺は、慎重に階段を降りてみる事にした。

階段を降りて行くと壁には、29という数字が書かれていた。

現在此処は29階、恐らくエレベーターは使えない。

溜息を吐きながらも階段を下り続けた。

俺は一度降りられる所まで降りようと決心した。

最終的に10階まで降りてきたが、そこから下は浸水してしまっていた。

ここまで降りて来たが、誰かに会う事はなかった。

そして各階の扉は一つずつ開いていくしかなかったのだ。

「…街が沈むとほんと不便だな。」

先程よりも大きな溜息を吐いて、改めて一段一段階段を上がって行った。


現在25階、これまで各階の扉という扉を開け、部屋に入って来た。

しかし、何処も最初に見た似たような広い部屋があるだけだった。

だが、この25階の扉だけは違った。

何故、降りた時に気付かなかったのだろうか。

中からは異様な空気が漂っており、扉の中にはヤバい奴がいるという事だけは分かった。

これもある意味、超能力の影響なのだろうか。

まあ、ソードハンターのままだったら、何も分からず「失礼しまーす!」入っていたであろう。

さて、話を戻そう。

俺は入るべきか、入らないべきか悩んでいる。

あの扉から出ている紫色のオーラ、とてもじゃないが無視はできない。

昔見た心霊映像特集の番組を思い出す。

偽物だと分かっていても、急にお化けが出てきたら怖いよね?

テレビの前で薄目で見ていたあれですよ。

今、リアルを体験中なんですよね。

多分怖いからと言って薄目で行ったら死ぬんだよなぁ。

まあ、結局宛が無いので入る事とした。

そういえば、クリアしなければこのゲームから出られないらしいが、死んだらどうなるのだろう。

そんな事を思いながらゆっくりと扉を開けた。

広い部屋は同じだが、部屋の中心には全身白い服装をした何者かが立っている。

身長が低く、子供のようにも見える。

俺はゆっくりと部屋に入り、白い服の人物に声をかけた。

「…あのぉ、すみません。道に迷いまして。」

白い服の人物は振り返り、無言でこちらに近付いてきた。

顔立ちは子供っぽいが、将来有力株間違い無しのイケメンであった。

「…貴方がアルミさんですね?」

「…はい、そうですけど。」

「良かったぁ、やっと会えました。随分と探したんですよ。」

さっきまで扉から溢れ出ていた殺気オーラはなんだったのだろうか。

あれが嘘のようなハンサムスマイルを向けてくるのだが。

「何処かで会いましたっけ?」

「いいえ?初めましてですよ。」

白い服の彼は一切表情を変えずにこちらを見てくる。

「申し遅れました。僕はユウヤと申します。この世界を観察して回っている天使とでも言っておきましょうか。」

そう言うと彼は、背中から大きな翼を繰り出した。

落ちた羽が肌に触れると、俺の体力ゲージが全回復した。

「何だこの羽!すげぇ!」

「それは僕の持つ天使の羽さ。体力回復だけでなく、状態異常まで治してしまう。多少の魔力は使いますが、僕にとっては造作もない。」

天使の羽には興味津々だが、本題に戻すとしよう。

「それで、俺に何か用ですか?」

「僕の悩みを解決してくれないだろうか。お礼は、僕の歯車。悪くない話だろ?」

その言葉でジュンヤのオッサンが言っていた【ユウヤ】という人物を思い出した。

「え、君があの歯車を保持するユウヤ?」

「そうですとも。私は悩みさえ解決してくれればそれでいいんです。あとは感謝の意として、アルミさんを手伝いましょう。」

どちらにしても、一番未知であった【ユウヤ】攻略が最短で叶えられそうだ。

ここは、受ける他ない。

「こちらとしても願ったり叶ったりだ。さあ、悩みはなんだ?」

「場所を変えよう。」

ユウヤは天井を指さしながら、羽ばたくように天井をすり抜けて行った。

俺は階段を上がって行き、50階まで到達した。

そこから上は屋上へと出るようだ。

屋上へ出ると、強い潮風が吹いている。

遠くでは雷も落ちている。

屋上の中心にはユウヤが立っていた。

近付いて行くと、ユウヤは東京の街並みを見下ろした。

「…酷いでしょ。水没都市さ。」

出会ってから初めて、ユウヤは悲しそうな表情を見せた。

「…大雨警報、そして大型竜巻。日本列島を飲み込む程の津波。異常気象がこの街を襲った。そこで僕は巻き込まれて死んだ。」

「…君は幽霊なのかい?」

「…見ての通り天使なんだ。幽霊として成仏したいんだけど、僕の悩みを解決しないといけないんだよ。」

そうか、ユウヤは成仏したいがために俺に相談したんだ。

それにこの世界を観察する天使なら、俺が何の為にこの世界に来ているのかもお見通しって言う訳だ。

【悩・ミッション発生 ユウヤの願い】受諾しますか?

まあ、今更やらない訳にもいかない。

ユウヤの悩みとミッションを解決しないと先には進めないのだから。

【受諾する】

「ありがとう、アルミ。」

俺は、無言で【人魂化】を取り出す。

「あーダメダメ!僕は天使だから【人魂化】は使えないんだよ。」

なんという事でしょう。

「わざわざ僕にならなくても大丈夫だよ。少しだけ泳いで、水の都へ行ってきて欲しいんだ。どちらにしても、僕の属性では相性が悪いからアルミの姿のまま行った方がいいよ。」

「…今なんて?」

聞き捨てならなかった。

泳ぐ?俺が?

「え、もしかして泳げない?」

何その顔、馬鹿にしてんの?

泳げるわ、泳げるけど!んんんんんん!

「…成仏したいだけだよね?その水の都とやらに何しに行けと?」

「地球の海には、伝説の水の都が隠されているんだ。その水の都に置いてある、青の魔導書という物を持ってきて欲しいんだ。」

こういう類いのミッションは苦手だが、もはや俺に逃げ場は無いのだ。

俺は渋々了承した。

「…ちなみにこの世界は西暦何年なんだ?」

「二○二五年だけど?」

「え、嘘だろ?あれから四十年しか経ってないの?」

驚いた事に、先程いた世界から四十年年しか経っていないことが判明した。

四十年でこの沈没様は異常だ。

時空間では何かとんでもない事が起こっているのだろうか。

どちらにせよ、今は何を考えても分からない。

俺は水の都へ行く事を渋々了承した。

「では近くまでは僕が連れて行きますから!」

ユウヤは再び天使の羽を広げ、俺を抱き抱えて飛んで行った。


天候が荒れる中、ユウヤは微動だにせず飛び続けていた。

それにしても、アイネさんやメグミちゃんはどこに行ったのだろうか。

「なぁ、どこに向かってるんだ?」

「与那国島の海底遺跡ですよ。もうすぐそこです。」

夜が明け、沖縄の海がいつも以上に半透明に輝いている。

「…こんな絶景をゲームで見られるなんてな。ちょっとは良い要素あるじゃん。」

関心しながら海を眺めていると徐々に降下している事に気付いた。

「見えますか?あれが与那国島です。」

雲をぬけて行くとそこには美しい海、鮮やかな森林や草原が広がっていた。

早朝のためか、あちこちに何隻もの船が見える。

「すっげぇ綺麗じゃん!早く降ろしてくれよ、観光してぇよ!」

テンションが上がったまま島を見下ろしていると、何故か急に降下のスピードが上がったように感じた。

「ユウヤ?ちょっと早くない?」

ユウヤからの返事はなく、気付けば俺を手放して急降下しているでは無いか。

「ユウヤッ!てめっ…早く降ろせってそういうことじゃねぇよおおおおおおおおおおおおおおお!」

俺の声は徐々に遠のいていくだけだった。

そして、それなりに高い位置から海へと落下した。

音はそれ程でも無かったが、海の中にいてもわかる程に顔面や身体が痛い。

そう思いながらも泳ぎを続けると、海底遺跡が見えてきた。

それは想像以上に大きく、まるで海底のピラミッドのようだった。

まさかこの中に【青の魔導書】があるっていうのか。

他にも遺跡は見えるが、この都の中心はどう見てもこのピラミッドであった。

一先ず、何処かに入口が無いかと周辺を見て回ることにした。

多少の息苦しさは感じるが、ゲームのお陰か現実程の息苦しさはない。

しかし、体力ゲージが減っていく為、長くは潜っていられなさそうだ。

こういう時、前みたいに回復魔法とか使えれば良いのだが。

全ての魔法と特技が消えた俺には無縁の話だ。

俺自身のステータスで褒める所を探すとすれば、最大体力値が高いという事と身の軽さ位だ。

あとは訳の分からん超能力のみ。

そんな事を考えていると、海底遺跡の底に入口らしき石の扉を発見した。

扉を開けようとしてみるも、当然のように微動だにしない。

ここで俺は、ある事を閃いた。

そう、今こそ超能力を発揮する時なのではないかと思ったのだ。

ステータスを開いて、超能力を選択。

『超能力が選択されました。超能力を使用してしまうと、他の力は使用出来なくなります。それでも使用しますか?』

久しぶりに聞いた音声アナウンスは、改めてゲームの世界にいる事を思い出させた。

しかし、超能力を使用するともう他の能力は使えないとは。

もしかするととんでもない力を秘めているのではないだろうか。

どちらにせよ、既に魔法や特技を失った俺に選択肢などない。

俺は【使用する】を選択した。

すると、全身は金色に輝き出し、すぐに弾けて消えた。

俺は手を扉に翳してみると、重い扉が少しずつ開き始めた。

これはもしかするとテレキネシス、念力というやつだろうか。

石の扉が開き切ると大量の海水が流れ始めた。

恐らく中は深く、空洞状態なのだろう。

そして俺は、力に耐え切れず海水と共に引きずり込まれたのだった。

次回【青の魔導書】中編

最後の扉で落ち合いましょう。

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