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短編シリーズ

理不尽な世界の終わり

作者: だるは

 その日、地球は滅亡した。星が跡形もなくなった訳じゃないが、少なくとも生物は全滅している。


 何故滅亡したのかはもう分からない。地球は何の前触れもなく、社員が帰宅したオフィスが消灯時間になったみたいに、ふっと滅亡した。


 だが、俺はまだ生きている。肥えた金持ち達が作った核シェルターなんかは役に立たなかったが、俺は無事だ。


 何故だかは分からないが日本政府が全技術力を結集し、人類ではなく俺を守ったのだ。


 曰く『君にしか救えない』そうだが俺はただの社畜で、アメコミのヒーローみたいな力は持っちゃいないはずだ。


 試しに手のひらを前に突き出したりブチギレてみたりしたけど、特に何も起こらなかった。でもそれだけを唯一の希望にして頑張っている。


 俺はあの日からずっと歩き続けた。何日も何日も何日も。脚の筋肉が悲鳴を上げ、全身が軋む音が日に日に大きくなっていく。


 孤独が辛いというのは高校のときボッチだったから分かっていると思っていた。でもこれは比じゃなかった。どんなに悲鳴を上げても全裸になっても、誰もいない、動物もいない、音もしない。本当の意味での孤独だった。


 もう疲れてしまった。一月以上歩き続け、三日間這い続けたが限界だ。体中を覆い尽くす痣や裂傷。内部もズタボロだった。


 地面に倒れこんでふと手を伸ばすと、指先がなにかに触れた。それはビデオテープだった。朦朧とした意識のなかで都合良く傍にあった再生機にセットすると、予想に反してノイズと人の声が流れ始めた。


 『―――これから会議を始める』


 何の話かは分からないが、人の声がこんなにも美しく聞こえたのは初めてだった。


 『実験の話かね?』

 『ええ、まあ実験というよりシミュレーションですが』

 『国民の中から一人ランダムに選んで世界滅亡シミュレーションをさせる……』

 『出来るだけ平均的な人間にしましょう』


 はあ? 意味が分からない。何のためにそんなことをするんだ。あまりに理不尽すぎるだろ。理由を知るために必死に意識を保つが、もう限界だ。


 俺は死んだ。

文字通り理不尽で意味の分からない世界の終わりです


お読みくださりありがとうございました。

不定期に短編を投稿しております、だるはです。

良ければ評価や感想頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一体何が起きてしまったんだろう、と読ませて頂きました。 これがシミュレーションなのか、それとも本当に世界が終わってしまったのか、彼は死んでしまったのか……色々と謎もあり、なんとも言えない余韻…
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