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【連載版】八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます  作者: 海夏世もみじ
第3-2章 独立戦線〜亡霊の姫君と殺戮のパレード〜
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第49話

 ―リ・ダーク・プリズン南の拠点―


「ど、どういうことだ……? 東西の拠点から連絡が急に途絶えた……ッ!?」


 無駄に広い空間に、一人の男が疑問符を頭の上に浮かべていた。焦燥に駆られた顔をしている男は、手を顎に当てて悩み混んでいる。

 こいつこそが、パルペブラ=クリムゾンだ。


「……僕が殺したからな」

「なッ!? な、なぜお前が……アッシュ=フィーニス!?!」


 ビクッと肩を一瞬震わせると、さらにガタガタと体を震わせて僕の顔を見つめる。

 こいつこそが、地下でネズミのようにひっそりと暮らし、妹を殺したクソ野郎のパルペブラ=クリムゾンだ。


「それはこっちのセリフだろ。なんでお前が生きてる」

「え、ぁ……わ、私は……()()()()によって転生させられた……」

「それは誰だ」

「わ、わからないんだ……!」

「言え!」

「本当にしら゛ないんだ!!!」


 首に刀を押し当て、血がたらりと垂れる。

 隠蔽魔術を使っている気配もないし、どうやら嘘も付いていないようだ。


「二つ目の質問だ、なぜニンファに手を出す」

「わ、私の隠蔽魔術はふ、不完全……。だから、()()()()のあいつの体を、奪おうと……」

「透過体質ってのはなんだ」

「あ、ありとあらゆる物を透過でき、この世界とは違う空間から現世に干渉できる体質……。も、もう離してくれ! 私は、悪いことをしてない!」

「嘘をつくな」


 ――ズバッ。


「ぐぁあああああああああ!!!!」


 右足を切り落とした。

 正直言って、情報を引き出すために生かしているだけだ。今すぐにでも斬り刻んでやりたいくらいだと言うのに。


「ニンファの兄はどうした。なぁ? 悪いことしてないんじゃねぇのかよ。真実がちゃんと出るように口を刀でかっ開いてやろうか?」

「あ゛ぁ、ああぁあ!!!」


 切断面に回復薬をかけて生やし、斬り、また生やしを何度も何度も繰り返した。


「わ、わるく、ない……。私は悪くない! わ、私に突っかかってきた、間抜けで愚図でカスで力のない王族風情が挑んできたんだ! あっちが悪だ! そうだろうが!!!」


 そう言えばそうだった。こいつは自分が一番正しいと思い、気に入らないことは悪だと決めつける最低最悪の野郎だった。

 堪忍袋の緒はとうに切れている。話も十分聞けたし、終わりにしよう。


「もういい。お前は生まれてくるべき人間じゃない。死んでくれ」


 刀を構えて首を刎ねようとしたが、パルペブラは手を銃の形にして僕に向ける。


「も、もうお前に殺されない……殺、してやる……! 隠蔽魔術……【遍く露顕オール・ディスクロージャー】!!!!」

「っ!!」


 ゴヴンッと、謎の重低音が響き渡ったと思えば、僕の脇腹に巨大な風穴が開いていた。

 【遍く露顕オール・ディスクロージャー】。かつて僕をそれで殺そうとしたが、不発に終わった魔術だ。現在隠している物を全て解除する代わり、超高威力の一撃を放つ魔術……。


「は、ははっ。ははははははは!!! ざまぁ見やがれクソアッシュ! 調子に乗ってベラベラ喋って時間割いてくれてありがとな! こんな雑魚な私に負けて悔しくないのか? ははは! 足は無くなったがいい気分だ! お前が死ぬのをじっくりここで見届けとやるよ!!!!」


 ……そういえば、こいつには僕が不老不死であることが知られていないんだった。

 体に穴が空いたくらいじゃ死なないんだよなぁ。


「これは想定外だったが……手間を省いてくれてありがとう」


 ボタボタと溢れ出る血は全て刀に収束し始める。元より自分の血を使った魔術を使用するつもりだったから丁度いい。


「な、な、なんで、死なないんだよぉ!!?」

「答える義理はない。……さて、こんなことが起きるんじゃないかと思って、二度とどの世界にも転生できないよう、因果を断ち切る魔術を開発してたんだ」


 赤黒い刀を手にしながら、ジリジリとパルペブラに近づく。

 パルペブラは尻餅をつきながら、必死に後ろに下がっている。だが、とうとう壁が阻んだ。


「お前は二度と生まれ落ちることはない」

「す、すみませんでしたぁ!」

「謝って済む問題じゃない」

「なんでもしますから!」

「じゃあ死ね。【閻魔一刀えんまいっとう】」


 ……もう、二度と会いたくないもんだ。



###



「はー……とりあえず終わったか」


 地上に戻り、思いため息を吐いた。

 腹に空いた風穴は治しておらず、一旦シアンの力でジェルを詰めて止血している。

 理由は、これからやる蘇生で魔力がとんでもない量必要になるからだ。


 使う魔術は万能の【奇跡に寵愛されし一撃ロイヤルストレートフラッシュ】。

 殺した者全員(パルペブラ以外)の蘇生するに当たり、全員無力化された状態、魔力ゼロ、他者に攻撃できない体、口に一生口内炎ができる呪い、生殖機能の完全停止、組織の秘密の暴露……などなどを全て顕現させる。


「犯罪者どもを蘇生したくないが、そいつらには死より苦しい思いをしてもらわなきゃだしな。――【奇跡に寵愛されし一撃ロイヤルストレートフラッシュ】!」


 天に向かって指を向け、魔術を使用する。

 無事に魔術は成功したようだが……流石に限界だ。死なないとはいえ疲れる。出血多量だし、魔力欠乏だし、今にもぶっ倒れそうだ。


「流石に条件つけすぎたな……。こんなに魔力が取られるとは……」


 このまま眠りたい。だが、僕は足を止めなかった。朧げな意識の中で城を目指す。数百歩進めば届く距離なのに、数時間と体感的には感じた。

 城がもう目の前になった時、目の前から声が聞こえてきた。


『お、お兄さん! 大丈夫!? お腹に傷が……早く治さなきゃ!!!』

「ニンファ……。いや、僕死なないから大丈夫だ」

『そ、そうなの……? なら良かったけど……。あ、あたし、凄く心配してたんだからぁ……!!』


 喜びや焦り、安心・不安、色んな感情が顔に出ていて面白いことになっているニンファ。

 まぁ、今言うことはこれしかないかな。


「ただいま、ニンファ」

『うぅ……っ! お帰り、お兄さん!!」

次回で3-2章は終わるかもです。

今回の章はシリアス多かったりしたから、次はシリアス皆無で行くぞ〜!


……それより、大怪我して帰ってきたアッシュに対して、ヒロインたちがただで許すなんてことはないと思うんですがねぇ……?

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