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【連載版】八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます  作者: 海夏世もみじ
第3-2章 独立戦線〜亡霊の姫君と殺戮のパレード〜
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第45話

 フィアンマ王国の入国許可証を貰い、色々と支度を済ませて早速出かけることとなった。許可証が出たとはいえ色々と問題があるらしいので、貰ってから数日経っている。

 泊まっていた宿屋の二階から階段で降りると、椅子に座っていお茶を飲んでいるイアアイ姉妹が目に入った。


「お〜、今日が国に行く日じゃったか」

「ん、出かけるの?」

「ああ、フィアンマ王国にな」


 因みにだが、アイは『お前がいると話が進まなそうだから妹のところで留守番しとけ』と国から伝えられたそうだ。

 なのでこの二人はここにとどまるとなった。


「んじゃ二人とも、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

「早く終わらせるんじゃぞ」


 馬車乗り場で魔王ノクテムは変装して待っていると言っていたので、今回は彼女と二人での依頼だ。

 そう思っていたのだが……。


「師匠、隣の人は誰ですか?なんだか嫌な気配を感じるのですが」

《アッシュ、なぜ勇者がここにいるのだ……!》

「えーーっと……」


 現在、リーヴェ王国から立ち去り馬車で輪郭で移動中なのだが、右に魔王、左に勇者と挟まれている状況だ。

 ノクテムは特殊な魔道具でツノや羽、尻尾を隠している。幸いにもシアンはノクテムが魔王だと確証が持てていない様子だが、いつかバレる気がする……。


「隣のはノク……じゃなくて、ウォーマって人だぞ。あの時の試合で決勝戦で戦った人だ。嫌な気配とか言ったらダメだぞ」

「そうだったんですね! どうりで強いオーラを感じました! ボクは勇者のシアン兼、師匠のペットのシアンです!!」

「ペット……? アッシュ、どういうことか説明して欲しいのだが」

「えっとぉ……!!!」


 なんだこれ……ッ! 一瞬でも気を抜いたらどうとでも終わる予感がする!


「ま、間違えてテイムをしてだな……」

「テイム??」

「お尻を叩かれた時が引き金だったですかね!」

「お尻???」


 やばい。ノクテムから魔王様の覇気が漏れ始めている。

 なんとかして地雷を踏まないように余計なことを言わないようにしていたのだが、逆効果でどんどん鬼の形相になるだけだ。


 その後、王国に着くまで物理的なも精神的にも肩身がせまい思いをする僕であった。



###



 フィアンマ王国。

 リーヴェ王国とは違い、火山が近い影響からなのか熱を愛する荒くれ者が多い国。その人らと対をなすよう、王国騎士の代わりとなる団は厳格で冷酷である。


「王都から遠ければ遠いほど荒れてるなぁ……」

「この国の人間はこの遠さでさえ手が回らぬらしいな。進んでおらん」

『動いてないのに熱いです〜!!!!』


 入国して数十分経っても王都に到着しなかったので、広大な土地を持っているということがわかる。

 しかしとても熱く、汗が止まらない。シアンに至っては溶け始めているし。


「あと少しかはわかんないが、頑張れシアン」

『うー……』


 結局、30分くらいかけて王都に到着した。


 城はリーヴェ王国のよりでかく、門番としてアイと同じ軍服を着た者たちが立ち並ぶ。これが騎士団の代わりなんだろう。

 許可証を見せて中に入らせてもらい、王の間へと誘導された。


 この場所で数分待っていると、ようやく国王がやってきた。王冠に赤マントというザ・王様なリーヴェ王国国王とは違い、スーツでぴしっと決めている人だった。


「来ていただき感謝する。私こそがフィアンマ王国現国王のフレグニス・フィアンマだ。君が推薦されたアッシュだね?」

「はい。依頼をこなし、許可をもらうために馳せ参じました」

「よかろう。……ところで、勇者はわかるのだが、そちらの黒髪の女性は?」

「ウォーマという、呪いに詳しい僕の恋人です」

「恋っ!!? う、うむ! 我は、こっ、恋人、であるぞ……」


 煙を立てて恥ずかしがるノクテム。こんだけ威厳の無さを見せつけたら、魔王だとバレることはもうないだろう。

 まず魔王を見た人間は極少数だろうしな。


「了解した。では、早速我が娘の元へ案内しよう。付いてきたまえ」


 二人に目配りをし、僕らは国王の後ろを歩く。長い廊下を歩き続け、一つの扉の前で立ち止まる。


「ここが、呪いをかけられて未だに眠りつずけている娘の部屋だ」


 ギギィと思い音を立てて扉を開ける。するとそこには、ベッドの上で眠る一人の少女の姿があった。

 長い黒髪を持ち、ピクリとも表情を動かさない整った顔。そして何より、尖った耳が特徴的だ。


「我が娘のニンファ・フィアンマだ。約二ヶ月前に呪いをかけられたらしく、今の今まで目覚めないのだ。総力を挙げて解呪しようとしたが、このザマだ……」

「……失礼ですが、エルフですよね? 国王は普通の人間に見えますが……」

「あぁ、それには訳がある。遥か昔、少し離れた場所にあるエルフが住まう国であるエルフ公国と盟約を締結した際、エルフが嫁いできてその血があるのだ。

 私はほぼ人間だが、娘の場合は強い先祖返りをしたようでな」


 成る程な。たしかにこの見た目ならば目立つし、欲しがる輩が増えそうだ。自分なら取れなくても、誰かに取られるくらいならば……という考えか、隙を伺っているのか……。

 なんにせよ、呪いをかけたやつはまともな思考回路をしていないだろう。


『ふむはむ、今日あたしの解呪をしようとするのはこの三人ねぇ。どれどれぇ〜、お姉さんが見守っててあげましょうかぁ〜。ニヒヒ!』

「…………」


 それにしても、なぜみんな()()に無反応なんだ? 宙にふよふよと浮き、半透明な体をしている()()()()()()()()()()に対して……。

新ヒロイン(ラストヒロインかな?)は、ショタの性癖をぶっ壊す系の年上お姉さんエルフ……みたいな感じです。

次回で彼女の謎が明かされるからお楽しみに〜。

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