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【連載版】八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます  作者: 海夏世もみじ
第2-4章 居場所探しの職場体験〜魔王専属秘書〜
35/62

第35話

 城に帰宅したら、流石に魔王様から叱られた。まぁこれでおあいこというわけでいいだろう。

 今は何をしているかというと、仮の自室にてレポートを書いている。魔王は四天王らとミーティングをしており、僕が出る幕はないらしい。


「……よし、こんなもんでいいか」


 レポートも書き終えたので、今日の仕事は終えた。初日ということもあって仕事はもうないらしい。

 バカみたいにでかい部屋なので、魔術研究用の道具をどれだけ広げても構わないだろう。そう思って早速準備をしようとすると、コンコンとドアがノックされる音が聞こえた。


「ん? はい、どーぞー」

『失礼します」


 ドアを開けた人物の正体は、黒髪黒目で片目隠しをしているメイドさんであった。


「何か用ですか?」

「はい。早速本題に入るのですが、魔王様との関係についてです」


 やはりいきなり魔王の専属秘書とかいう勝ち組の役職を一瞬で手にしたら、納得のいかないものも出るののも仕方ない。

 文句を言われる覚悟をして、メイドさんの言葉を聞く。


「素晴らしい仕事でした。もっとイチャラブしてください」

「……んん? え??」


 思っていたものとは大きく違かった。ふんすと鼻息を鳴らして満足げなメイドさんだが、なんなんだこの人……。


「魔王様は言わずもがな乙女です。己を抑圧して耐え凌ぎ、ストレスしかない日々です。そんな中で貴方様がイチャイチャしていただけるおかげで、ストレスが発散できていると見込んだのです」

「あー……なるほど。そうなんですね、じゃあこれにて……」

「待ってください。本来ならば私も感謝だけで終わろうとしたのですが、その首のキスマークを見たら引き下がれません……!」


 ハァハァと息を荒くして僕を見つめるメイドさん。


 この人は魔王様が好きなのだろうか? それとも俗に言うカプ厨とかいう人なのだろうか?

 まぁどちらにせよ、面倒臭そうで厄介そうなのは確かだ。


「お願いがありますアッシュさん。職場体験期間内で構わないので、魔王様とイチャイチャしてください!」

「えぇ……」

「それほどまで心を許しているあなたならばもっとできるはずです」

「嫌だけど……」

「断れば私は幼児退行をした挙句泣きじゃくって駄々をこねます。いいのですか?」

「大の大人が……。めんどくさいなぁ」


 やりたくないが、断ればもっとめんどくさくなりそうだったので、不満げな顔で引き受けた。


「有難うございます。では翌日から私がさ色々と()()()するので。呪いの腕は世界一ですので任せてください、ピースピース」

「わかりましたよ。はぁ……でもまぁ、やるんなら楽しまなきゃななぁ……!」


 魔王様をあたふたさせて遊ぼうと意気込み、今日は魔術研究をした後に眠りについた。



###



 ――翌日。

 今日は外に出る予定がない事務仕事がメインらしい。なので僕の仕事は書類の整理やコーヒーの差し入れなどをすることだ。


 朝からノンストップで仕事をする魔王様を見かねて、メイドさんが目配りをして僕を呼んだ。


「なんとかしてイチャイチャ……じゃなくて、休憩させてあげたいですね」

「そうだなぁ……。あ、じゃあお菓子を作ってくれませんかね、細い棒状で……こんな感じの……。あとついでにこういう呪いを」

「ふむ……わかりました。これで私が満足するものが見れるのならば。お任せを」


 とあるお菓子を作ってくれと要求を出して数十分後、目的のお菓子を運んできてくれた。

 細い棒状でチョコレートを纏うこのお菓子……。これで()()()()()()をしてからかってみようと思ったのだ!


「魔王様ー」

「……む、なんだ」


 コーヒーと件のお菓子を運び、魔王様の前に差し出した。


「休憩がてら、僕とゲームしませんか?」

「ゲームだと? しかし我にはまだやるべき仕事が……」

「休憩も仕事のうち、ですよ。僕も手伝うんですし、少しくらい休憩しても問題ありませんよ」

「むぅ……ならまぁ、良いのか。それで、どんなゲームをするのだ?」


 うまく食いついてくれたようだ。これでもうこっちのもんだな。

 笑いが堪えなくなりそうだが、なんとか耐えて平静を装って話を続ける。


「まずはこのお菓子を口に咥えてください」

「ん……ふぉーふぁ(こうか)?」

「はい。そして、これを片側から僕も咥えて、先にお菓子を折った方が負けというゲームです」

にゃふほほ(成る程)。…………んっっ!?!?」


 やっと気づいたらしく、大きく目を開けて紫色の瞳がよく見えた。すぐさまお菓子を離そうとしていたのだが、離れない。

 どうやらあのメイドの呪系統の魔術は本物らしい。お菓子を咥えたら離れず、手で破壊できず、食べ終えるまで離れられないという呪いらしい。


「じゃあスタートしますか〜」

「むぅ〜っ! むぅ〜〜っっ!!!!」


 手をパタパタと鳥みたいに動かし、必死に抵抗しようとするが何もできていない。

 僕もお菓子の片側を加えてみると、音のなるおもちゃが潰されるような鳴き声を漏らす。魔王様の目は泳いでいる……というか、溺れている。


「んじゃ、一口め」


 ――カリッ。


「んん〜〜っ!!!」


 魔王様が本気を出せばこの呪いは解けるのか。それともあのメイドは思っていたよりかやりヤバイ呪魔術使いなのか。

 今のところ、後者に寄りかかってきている。


(ま、まずい……っ! このままではアッシュとの子を身籠ってしまうではないか!! 我でも解呪し難いこの呪い、アイツだな!? 後でお仕置きしてやる!!!)


 魔王様が顔を真っ赤にしながら横に目をやっていており、そちらを見ると鼻血を垂らして悶えているメイドの姿があった。


「ハァハァ♡ なんと美しい……! と、尊死こそが私の本望!! アッシュさん、なんとも極上のイチャラブを見せつけてくれ――……ブハァッ!」

(メイドォーーッ!?)


 自分の血だまりに顔面をダイブさせるメイド。出血多量で死んだようだな。


(ど、どんどんアッシュの顔が近くなって……っ! アッシュ……アッシュとの子供……。で、でも……アッシュとなら――)



 今まで微動だにしていなかった魔王様の口が動き、唇をアッシュに近づけた途端、


 ――パキッ。


「……ありゃ、負けちゃいましたね」

「――あ、あっしゅ……? ほぇ……?」


 どうやらメイドが気絶したことによって呪いが解けてしまったらしいな。

 心ここに在らずと言った具合でポケーッとしている魔王様は、全く現実に戻ってきてくれない。流石にやり過ぎてしまった。


「……あったかい紅茶を淹れてきますね」


 紅茶を淹れに部屋を出るが、どうも魔王様に当てられて自分も耳が熱くなっている。乙女すぎて逆に困る。


 数分後に意識を取り戻した魔王様によって、僕とメイドはこっ酷く叱られたのであった。

メイドォ!あとちょっとだったのに気絶すんなよなァ!!


あと今回長くてすみません。

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