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【連載版】八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます  作者: 海夏世もみじ
第2-4章 居場所探しの職場体験〜魔王専属秘書〜
34/62

第34話

 食事もとい、調査も終えたのでこれからは少しの自由時間だ。魔王様が買いたいものがあるらしいので、場所を移動して市場までやってきた。

 相変わらず変装は続けているが、お忍びということなのだろうか。


「魔王様、何を買うんですか?」

「新作のコーヒー豆や書籍などだな」

「メイドとか、それこそ僕に頼めばいいのでは?」

「そ、それはよいのだ! 我のことはよいから、アッシュも楽しといい。自由時間だから好きなところへ行け。では1時間後にまた集合しよう」

「あ。……行っちゃったな」


 これは、何か見られたくないものを買うのがど定番だな! どうせ魔力を探知すれば見つけられるし、別れて数分で買いに行くとは思えない。少し時間を置いてから行こうか。

 ニマニマとほくそ笑みながら市場を練り歩いていた。


『雷の伝導率がえぐい金属いかぁっすかー』

「お嬢様に買っとくか」

『最高の包丁売ってるぜ〜!』

「イアのために買おう」

『拷問器具売ってるよ』

「……シアン、楽しみにしとけよ……」


 自分もそれなりに楽しんで買い物をした。

 そろそろいい頃合いだと思い、魔力を探知して魔王様を探す。……しかしどこにも見つからない。代わりに、ぽっかりと穴が空いたように魔力が感じられない空間が見つかった。


「……逆にバレバレですよ魔王様……」


 謎の空間に向かってみると、そこは本屋のようだった。中を少し探してみると、案の定魔王様を見つけられた。

 どうやら手に取っているのは少女漫画らしく、手に入って嬉しそうな様子だ。


「嬉しそうですね魔王様」

「うむ! これの発売をどれほど待ち望んでいたか……。…………ぁ、え……? ナンデ、ココニ……っ?」

「本当にびっくりすると叫ばないんですねぇ」


 サーッと顔がみるみる青くなり、僕の顔と恋愛漫画を交互に見合っている。しかし次第に青い顔は赤くなり、目がぐるぐると回り始めた。


「なぜここにいるっ!!!!」

「いやぁ……買い物は済んだし、いつまでも魔王様と離れているわけにもいかないかなぁと思って」

「だからと言って……! ゔ〜〜っ! 我はもう生きていけん……」

「ってか、もし僕が本格的に就職することになったら早かれ遅かれ絶対バレるでしょ。あとそれに、そういうのが好きでも別にいいじゃないですか」


 魔界のトップがこういうのが好きだと世間が知れば、顔が立たなくなってしまうとか思って今まで内緒にしてきていたんだろう。

 好きなものは隠さず好きでいたらいいのに。


「魔王様、恥ずかしいとか顔が立たんとか思ってるのかも知れませんが、僕は好きなものを好きでいる魔王様が好きですよ」

「え……? えっっ!?!?」


 ボンッと何かが爆発する音が聞こえたが、気にしないでおこう。

 事あるごとにいい反応をする魔王様は愛おしいが、もうそろそろ休憩時間も終わりなので連れて行くとにしよう。


「ほら魔王様、さっさと行きますよ」

「あ、ちょ、待てアッシュ! さ、さっきの言葉の意味は……」

「レッツゴー!」

「あ、おい待て!! も、もう、仕方ないやつだなっ」


 後ろを追いかける魔王様を確認した後、調査が必要な絶景スポットとやらに向かった。



###



「ここがそのスポットの〝斜陽の崖〟ですか。確かに綺麗ですね」

「うむ、夕暮れ時にのみこの魔界の曇天から光が差す唯一の場所だ。柵の老朽化や崖崩れが起きそうで問題視されているのだ」


 標高が高い崖の上で、曇天から斜陽が差し込んで僕らを照らしている。絶景スポットと言われる理由がわかったが、事故が起きたらたまったものではないな。

 確かに柵はボロボロだし、今にも崩れそうな地面だ。


 そう、崖先にいる魔王様が今にも……


 ――ピシッ、ピシッ……ガシャンッ!!!!


「むっ!?」

「魔王様! 【重力操作グラビティコントロール】!」

「わぷっ」


 崩れて落ちかける魔王様をこちらに引き寄せ、なんとかキャッチした。彼女なら落ちてもたいした傷はつかないだろうが、目の前で傷つかれたら僕の気が障る。


「い、いやはや、助かったぞアッシュ。まぁ我には羽があるぞっ! 抱きつかんくても良いだろうがっ!!!」

「だからと言って油断してると、いつか寝首かかれること起きますよ。怒ってますからね」

「わ、わかったからぁ! 恥ずかしいから降ろすのだ!」

「……さて、無事に安全性を確保する必要がわかったので帰りましょうか」

「このままじゃ嫌だぞ! い、色々当たっておるから!!」

「魔界を観光したいので歩いて帰りましょうか」

「アッシュっ!!!」


 あらゆるデバフを魔王様にかけ、抱っこされている状態から抜け出せないようにしている。

 バクバクと直で心臓の音が聞こえてポカポカとした体。中々抱き心地も良いのだが、降ろせという意思表示でうなじをガジガジとされて痛い。


 ――しかし、このうなじの傷が、()()()()に見つかるのは時間の問題だったらしい……。

※忙しくて急いで書いた話なので、後から書き直すかも知れません。書き直したらいつかの話のあとがきでご報告させていただきます。



今回はあまりイチャイチャしてないしこのままじゃ進展がなさそうなので、次回から“刺客”がやってきますよ。

ヤッタネ!

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