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ふわふわピコピコと柔らかい何かが頬を掠め、くすぐったさに思わず目が覚めた。
視線を下に向ければ何時も通り、ナナシがくっ付いて眠っている。
どうやらピコピコと動く彼女の狼の耳が当たっていたようだ。
ナナシを保護して二週間、こうやって大人しくベッドで寝てくれるようになるまでかなり苦労した。
初日はリオに任せて居たのだが、ナナシは少しでも目を離すと部屋の隅っこで丸まって眠って居るので、最終的に俺が命令と称して抱きしめたまま寝ることにしたのだ。
はじめは緊張していたナナシも、子供を寝かしつけるように頭を撫でたりしていると何時の間にか大人しく寝てくれるようになった・・・
けど、彼女がちゃんと寝るのが俺かアベルの傍だけという別の問題が発生する事となったが、まぁ一先ず今は支障ないのでその問題は置いておくことにする。
「・・・今日の、予定・・・」
まだ半覚醒な頭で、今日の予定を思い出す。
今日は午後から6柱会議があるが、午前に急ぎの用事は無い・・・。
「・・・寝直すか・・・」
気持ち良さそうに眠るナナシを抱きしめ直し、もう少し寝ることにした。