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コテンと首を傾げて言う魔王様は俺にそう釘を刺してから「下がっていいよぉ?」とヒラヒラ手を振った。
全く、そういう気遣いが出来るなら、何故ベルゼビュート様とアスタロト様に書類仕事を押し付けるのか・・・。
バティを気遣う余裕があるのなら、魔王補佐のお二人の方を気遣って欲しいものだ。
気遣う場面が間違っている。
小さく息を吐き、周囲を見回した。
今、この部屋には魔王様と俺の二人だけ・・・で、あれば、少しくらい昔に戻っても良いだろう。
そうして俺は部屋を去る前に『アベル』の顔を見上げると、溜息と共に告げた。
「はぁ~・・・分かった。バティを怒らないかわりに、ちゃんと自分で書類仕事をしろ。『アベル』」
「 !! 」
ぱぁあ!!っと、分かりやすく魔王様の表情が嬉しそうなモノにへと変わった。
「うん!やるぅ!!ちょーやるぅ!!」
「本当だな?後でベルゼビュート様の所に確認に行くからな?」
「任せてぇ~。ベルとアスタがビックリするくらいぃ、完璧に終わらせる~!」
「はいはい。宜しく頼みますよ」
そう苦笑しながら云って、後ろに手を振りながら俺は玉座の間を退室する。
勢い良く玉座から立つ音が聞こえたから、多分魔王様はキチンと俺との約束を守りに行ったのだろう。
今度から、魔王補佐のお二人をお助けする時はこの手を使おうとひっそりと心に誓った。