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「はい。彼女の指にハメてから司令官殿の魔力を流して貰えれば完了です。外す場合も魔力を登録した者が同じ様に指輪に魔力を流して貰えれば魔力封じの解除ができます」
能力を切ったらしい何時もの目の色に戻ったマルバスが、俺に指輪を渡しながらそう言った。
彼から指輪を受け取り、ナナシの右手の薬指にはめると指輪に魔力を流し込む。
淡く光を帯び乍ら何の装飾も無かった銀色の指輪に向かい合って遠吠えをする二頭の狼の模様が現れた。
「封印されている時はその狼は向かい合っています。逆に解除すると、狼はお互いに背を向けた状態になりますね」
「成程。分かりやすくていいな」
「あとは、どのくらいの魔力を封印出来ているかですね・・・」
「お前の能力、どのくらい続く?」
「そんなに長くは使っていなかったので、あと10分程度で解けるかと」
「分かった。すまないが、また何かあれば呼び出すかもしれない」
「畏まりました。今日はこの後外に出る用も無いですし、第1柱の間にて待機してますね。何かあればお呼び下さい」
「助かる」
そうマルバスに返せば、彼は小さく笑って見せる。
そうして俺に先程の魔力登録の方法を教えてくれ、魔王様に一礼すると退室して行った。