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「ッ!!」
そうして自分を守るように小さく縮こまる。
ソレだけで、彼女が人型になったときの扱いを理解した。
「ナナ・・「ナナシ・・・」」
名前を読んで手を伸ばそうとする魔王様のセリフに被せるように彼女の名を呼び、伸ばされようとする手を止めると、俺は彼女に向き直った。
「ナナシ・・・怯えなくて良い。今日からお前の飼い主は俺だ」
今の彼女でも理解出来るように、敢えて『飼い主』だと名乗る。
「お前の飼い主は俺。だから、ソレは俺が望んでその姿にさせている。俺は狼姿のお前も好きだが、普段はその姿で居て欲しい・・・だから、覚えろ。コレから今までお前が禁止されてきた事を俺はお前に望む事がある。今のこの姿がその一つだ」
ペタンと耳を伏せ、縮こまって震える彼女に、俺は静にそう言った。
下からそっと手を伸ばし、砦からに連れてくるときと同じ様に大丈夫だと宥め乍ら優しく頭を撫でる。